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2003/10/01

コンピューター型組織から脳型組織への転換を

今から46年前の1957年10月5日、旧ソ連が史上初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功しています。さらに、人類初の有人衛星船「ヴォストーク1号」の打ち上げに成功後、アメリカの「アポロ11号」が69年7月20日に人類の長年の夢であった月への到達を果たすことになります。初めて月面に降り立ったアームストロング船長の第一声はあまりにも有名ですが、フジテレビ系のムダ知識番組「トリビアの泉」によると、アポロ11号に搭載されていたコンピューターは、83年7月に発売されたファミコンよりお粗末なものだったとか・・・。

それからのコンピュータ・テクノロジーの進化には目を見張るものがあり、「脳」という人間の持つすばらしい器官の情報処理原理を数学的にモデル化する取り組みまで始まっています。同様に、組織作りでもコンピューター型組織管理論が台頭していますが、その副作用も少なくないようです。今回は、コンピューター型組織と今の時代に相応しい脳型組織の比較優位について書き綴ってみます。

脳型情報処理理論の第一人者である脳科学総合研究センターの甘利俊一センター長は、脳とコンピューターの違いを次のように説明されています。

<脳>

10の11乗という途方もない数の神経細胞からなり、この神経細胞同士のダイナミックスが情報処理(思考)であり、記憶は神経細胞間の結合の強さとして蓄えられる。コンピューターのような定められたプログラムがないので、いろいろな飛躍発展や連想ができるし、新しいものを創り出すこともできる。

<コンピューター>

情報を全て1と0からなる記号の配列で表現し、プログラムであらかじめ定められた手順に従って正確で高速に情報処理を行う。記憶は記憶装置に番地を決めて格納され、記憶容量も大きい。


企業組織である限り それを円滑に運営し正しい方向に導く、いわゆるコンプライアンス(法令順守)は必要ですが、コンピューターのような単純な組織管理では社内に“硬直病”を蔓延させる恐れがあります。単純な組織管理とは、「職場で大声を上げない」「社風を損なうようなことをしてはいけない」など“いけないづくし”で、とにかくコンプライアンスを信奉させることであり、社員の口も手足も硬直させることです。

こうなってしまうと、コンピューターのようにプログラムであらかじめ定められた手順に従って正確で高速に仕事を処理することはできても、突発的な事故に対する柔軟性が乏しく、飛躍発展や連想ができないので、新しいものを創り出すこともできません。

最も不幸なことは、経営者自身がそのことに気づかず、組織内から何の疑問も起こらないことです。結果として、大きなリスクを抱え込む羽目に陥ることは、名だたる企業の不祥事や経営不振を見ても明らかです。

このような硬直病を癒す手立てとして、「ディセンタリング」があります。ディセンタリングとは、フランスの児童心理学者であるジャン・ピアジェの造語で、視点を変えてみることを指しています。もともと幼児が自己中心的な固定観念を脱する現象を一言で表現したものですが、実は組織人である我々も子供と似たようなところがあるのではないでしょうか。つまり、「我々は正しい」です。その固定観念をディセンタリングした場合、必ずしも正しいとは言えないと認識することから、新しいものを創り出す素地が生まれるのではないでしょうか。

製造が価値を生み出すタンジンブル経済に代わって、21世紀はサービスや知識が価値を生み出すインタンジブル経済の時代です。にもかかわらず、たとえ失敗しても見えているようで見えないビジネスに挑戦する個人を抱える企業が極端に少ないように思えてなりません。そういう個人を育てることこそが経営者の使命ではないでしょうか。


堀井 輝夫

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キーワード
•  コンピュータ型組織
•  脳型組織
•  ディセンタリング
•  インタンジブル経済


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