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2003/12/01

知の収穫逓増をもたらす今日的人材活用術

師走のクラッシックの定番と言えば、ベートーヴェンの交響曲第九番合唱終曲「歓喜の歌」を思い浮かべる方がきっと多いはずです。彼の正確な誕生日は不明で、分かっているのは1770年12月17日に洗礼を受けたことだけだそうです。当時の慣習から判断して、「おそらく16日頃ではないか」と見られているため、自身の誕生月を自身が作った歓喜の曲で祝ってもらえるのですから、作曲家の中でも最も幸せな作曲家かも知れません。

さて、オーケストラには指揮者が付き物ですが、世界的な称賛を浴びる室内管弦楽団の中に、指揮者のいないことでも知られる「オルフェウス」という名の室内管弦楽団があることをご存知でしょうか。今月は、フラットな組織モデルとして、経営学者のピーター・ドラッカー氏らが注目するオルフェウス室内管弦楽団等の事例から、知恵が価値を生み出す人材活用術について書き綴ってみます。

十人十色とはよく言ったもので、人はそれぞれ価値観も違えば、思想も生い立ちも様々です。この人の集合体である組織は、一つの方向(目標、ビジョン)に可能な限り力を集中させることが求められるのは当然ですが、従来の指揮統制型ヒエラルキー(ピラミッド型の階層組織)では、知の収穫逓減が働き、期待値と現実値がかけ離れていく面が多々あります。例えば、トップダウンで新規事業を立ち上げる際などに、農夫が痩せた土地を耕したがらないのと同様な現象が起こるのです。

では、どうすれば痩せた土地を進んで耕すようになるのでしょうか。マサチューセッツ工科大学のトーマス・マローン教授は、21世紀型組織については、「20世紀のピラミッド型組織のような単純な階層構造とは全く異なり、一人一人が相互に結びつきながら、絶えず形を変えていく不定形なものになるだろう。理由は、自分たちの意志決定をするために必要な情報にいつでもアクセスが可能となるので、上司の命令に従うことより、必要な情報が何であるかを自分で考え、何をすべきか、自主的に判断して行うことが重要となり、人々は効率的に、かつ創造的な仕事をすることが可能になる」と述べています。

このオルフェウス室内管弦楽団が「指揮者不在のオーケストラ」という異例な形態を選択した理由も、指揮統制型では活かしきれなかった、メンバーそれぞれの技術、能力、参加をより活かせるような環境を望んだからに他なりません。彼らの創造的な手法は、「オルフェウス・プロセス」として、トップダウン型からの脱出を目指す組織や、多彩なメンバーで構成されるチームの参考にされています。

<オルフェウス・プロセス8つの原則>
  1. その仕事をしている人に権限を持たせる
  2. 製品と品質に自己責任を持たせる
  3. 役割を明確にする
  4. リーダーシップを固定させない
  5. 平等なチームワークを育てる
  6. 話の聞き方を学び、話し方を学ぶ
  7. コンセンサスを形成する
  8. 職務へのひたむきな献身

同様に、欧米で「インプロ・シアター」が人気を博しています。インプロとは「インプロビゼーション(即興)」からきた言葉で、要するに“演出家のいない芝居”です。この即興劇のスキルがマイクロソフトやヒューレット・パッカードなどでいち早く研修に取り入れられたそうです。なぜなら、我々の日常を含めビジネスにも、台本がないからです。

その典型的な事例を挙げてみましょう。

あなたがX製薬の営業本部長で、AとBという2タイプの営業マンが売り込みに訪問したとします。

本部長「本日の要件は何ですか」
A「◎◎の案内にうかがいました」
B「貴社の成長をもたらす◎◎を売るために訪問させていただきました」

本部長「商品の内容は理解しました。契約額は幾らですか」
A・B「一括で◎◎百万円です。」

本部長「2回か、4回の分割払いならどうなりますか」
A「・・・。それは上司と相談させてもらって後日、回答いたします」
B「4回払いであれば百万円割高になりますが、2回であれば一括払いの契約額で結構です」

さて、あなたならどちらの営業マンと契約を結ばれますか。

相手の言葉を瞬間的に受け入れ、そこに自分の提案を瞬間的にプラスできるインプロ・シンキングが可能になれば、職場でのチーム作りにも大きな効果を発揮します。

オルフェウス・モデルも、インプロ・モデルも、その前提条件になるのが、大幅な権限委譲がその前提です。そこには、盲目的な服従と強制感を払拭し、自ら考え・行動する積極的、効率的組織が残ることでしょう。

そして、上司の役割は、「売れないものを売ってくるのが営業だ」と叱咤激励することではなく、(1)合議に基づく適切な目標設定と目標管理、(2)支援的リーダーシップの発揮、(3)「最終的な成果」に加え、そのプロセスを適正に評価することになるのです。


堀井 輝夫

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キーワード
•  指揮統制型ヒエラルキー
•  収穫逓減
•  インプロ・シンキング


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