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2004/02/02

新武士道と近代武具

昨年暮れからロードショー公開されている「ラストサムライ」をご覧になられた方も少なくないでしょう。主演のトム・クルーズは、名誉、義、忠、勇、礼、仁、誠を凝縮した“武士道”こそ国境さえ超えて人類普遍に持つべき精神と語っています。確かに次の時代を切り拓くためには武士道に匹敵する強い精神力も必要ですが、今風に考えれば、明治維新という時代の変革の中で過去を引きずって新しい変革に取り残されて滅んだという解釈も出来ます。この変化のスピードが速い今日ではもはやこのような刀や弓矢が通用するはずがありません。今月は、時代の変化に抵抗し取り残されて滅びるわけにはいかない私たちが、次の時代を切り拓くために必要な心構えと身に付けるべき武具について書き綴ってみたいと思います。

1984年の創業からわずか17年間で世界最大のパソコンメーカーに伸し上がったデルコンピュータが2003年7月に社名を「デル」に変更しました。その理由は、コンピュータだけでなく、PDA(携帯情報端末)や液晶テレビなども手がける総合IT機器メーカーへと進化していく企業姿勢を内外にアピールするとともに時代に先駆けて会社を変革しようという発想であったからです。

デルの武器は、パソコン在庫日数4日(業界最短)という高度な在庫管理と、中間流通を完全に省いた直販方式、そして業界標準技術の採用による圧倒的なコストの優位性です。例えば、パソコンの基本ソフト(OS)はマイクロソフトの「ウインドウズ」、MPU(超小型演算処理装置)はインテルの「ペンティアム」、サーバー用OSは「ウインドウズ」と「リナックス」といった具合です。そしてITを駆使して客の望むコンピュータを早く作り上げ客のニーズに迅速に対応したことが大きな成果に繋がったわけです。そのため、同社の売上高に占める研究開発費は1%台と極端に低く、ヒューレッド・パッカード社などライバル企業からは“ローテクのデル”と揶揄された程です。

ハイテク企業と同様、研究開発に巨額の資金(製薬協加盟上場企業の研究開発費は03年度中間決算ベースで15.7%)を投じて新薬を開発し、新市場を切り拓いたり、競合他社と差別化を図らなければならない製薬企業がデルのビジネスモデルをそのまま手本にすることは難しそうですが、医療保険財政が火の車状態の今日ですから、国民や医療関係者に対して、義、忠、礼、誠を尽くさなければならない事はやむを得ないでしょう。

しかし、販売データのみに依存したローテクのマーケティング手法は改めるべきでしょう。これからは入院医療から外来(在宅)医療へ、そしてデルのような低コストのジェネリック医薬品へマーケットがシフトしてくるので、「従来どおり」という言葉が必ず通用しなくなります。

製薬業界でもIT化は進んでいますが、ことマーケティングの分野では医療圏別患者データや処方データなどマーケット分析に耐え得るデータが不足しているように思えてなりません。例えば、広島市では牡蠣やソースの支出金額が全国平均より高いことは、「当たり前」と誰しも判断できますが、レンコンが高いという事実認識と「なぜ?」という認識も無いでしょう。医薬品の処方内容にも高血圧性疾患治療薬としてはかなり古いαブロッカーやβブロッカーがUターン現象を起こしているなど「なぜ?」というものが少なくありません。

その気づきをもたらすデータの掌握と分析こそが、環境変化を読み、新らしい変革に柔軟に対応する相応しい武具ではないでしょうか。時代の変革に乗り遅れることは「ラストサムライ」の主人公のように致命的であると言う事を肝に銘じるべきでしょう。


堀井 輝夫

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キーワード
•  武士道
•  デル
•  ジェネリック医薬品


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