1867年3月30日は、アメリカがロシアからアラスカを買い取る条約に調印した日です。日本の4倍以上の土地をわずか1ha当たり5セント(総額720万ドル)で買収したのですが、アメリカ国内では、「白熊だらけの動物園」「無駄な冷蔵庫」などと非難されたそうです。ところが、どうして、その後に判明した天然資源の豊富さから見て「世界一冷たい宝石箱」と称されるようになったとか・・・。最近、日本でも花王がカネボウの化粧品部門を買収するというニュースが流れましたが、結局、企業DNAを残せない買収劇だったためか、この話はご破算になってしまいました。今回はユート・ブレーンとセジデムデンドライトがそうであったように、企業DNAの伝達・融合を前提とした“進化する企業統合・買収”について書き綴ってみます。
2月24日 山之内製薬と藤沢薬品が来年4月1日を持って企業統合するとの発表がありました。前々からその情報は憶測として流れていたが今回の両社の正式発表でその方向が決定されたという事であります。生き残りをかけた本格的な企業統合・合併の幕開けでもありましょう。
海外でもフランス製薬企業2位のサノフィ・サンテラボが1月末、同業のアベンティスに対して株式と現金による 485億ユーロ(約6兆4700億円)の敵対的買収案を提示して話題を呼びました。医薬品業界では、世界1位の米国ファイザーが2002年にファルマシアを買収した他、英国ではグラクソ・ウェルカムとスミスクライン・ビーチャムが2000年に合併するなど、国際的な再編機運が高まっています。
サノフィとアベンティスが合併すると、2002年実績ベースで売上高249億ユーロ、世界3位の製薬企業が誕生することになり、収益性が高い割に規模が小さいサノフィはグラクソやメルクの買収ターゲットから逃れることができるわけです。まさに“弱肉強食”の世界ですが、企業が生き残るための戦略として、さらに企業が大きく成長するための戦略として、最もダイナミックで実効性のある戦略が企業買収であることは言うまでもありません。
ただ、ダーウィンの「種の起源」が「日々誕生し続ける無数の種が、環境や競争の中で自然淘汰され、残ったものを進化という」のであれば、企業買収も双方の持つ強い企業DNAの伝達・融合が前提でなければ全く意味をなさないのではないでしょうか。
この双方の持つ強力な企業DNAがシナジー効果を誘発し、従来、両社が持っていた強み・弱みを巧みに補完しあうことができれば、そして互いの企業DNAを尊重し共感し合う事が出来れば、クライアントや社会からも「非常に価値の高い買収劇だった」という評価を受けることになるでしょう。
医薬品で言えば買収・統合によって有用な製品をより効率的に開発できるとか、高度な製品情報が従来以上のスピードで医療機関に提供できるようになるとか、企業体質が更に強くなるとか、基本的にはマーケットイン発想が根底に流れていて、初めてその買収・統合の成果が表れるものと考えています。
これからの企業買収・統合がより豊かで強固な企業DNAの伝達・融合を前提としたものであり、それにより企業がより迅速に進化し、市場や社会に従来以上に多くの価値を与えるものであってほしいと願っています。
|