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2004/04/01

「企業不動尊の安全お守りを捨てよ!」 転ばぬ先の杖

1912年の4月14日/23時40分――。見張り台にいたフレデリック・フリートが400m先前方に氷山を発見した場面から始まる“誰しもが予期しない悲劇”の幕開け時刻です。ニューヨークまでの処女航海を終えないまま、ニューファンドランド島沖合で海の藻屑と化したイギリスの超豪華客船「タイタニック号」が遭遇した大惨事は、安全神話を信奉し過ぎた結果でした。また、昨今では、牛肉のBSE問題から始まり、鳥インフルエンザや豚コレラまで食をめぐる安全神話さもえ崩壊してきました。過去は企業の安全神話を選択基準に就職を決められた方が多いそうです。

今回は、誰しもが予期しない結末を避けるための教訓について書き綴ってみます。

アメリカ産の牛肉が禁輸になった今、巷では「吉野家」から牛丼が消え去り、「牛角」や「フォルクス」など他の外食チェーンも、トレーサビリティーの比較的厳しいオーストラリア産に切り替え、禁輸措置が解除される日を心待ちに営業を続けています。

ちなみに、トレーサビリティー(traceability)とは、「追跡可能性」の意で、特に食品の場合は、安全性や安心性を確保するために栽培・飼育から加工・製造・流通などの過程を明確にすることを指しています。

牛肉に関するアメリカの対応と日本の対応では、食文化の違いとは言え、大きな差異があります。日本の場合は、牛肉全ての安全性を担保するために全頭検査を実施しているのに対し、アメリカの場合はサンプリング検査のみで対応しようとしています。もちろん、アメリカ人のメインフードである牛肉を流通させないとなると日本の牛丼や鯨肉どころの騒ぎではないでしょうし、5000万頭もの牛を全頭検査する手間と費用をかけられないという事情もあるでしょう。

また、それより大きく異なる点は、国民性の違いです。アメリカの国民には自己責任という意識が強い反面、日本の国民には国の責任という意識の方が強い点です。牛肉と同様に、医薬品の場合も 幾ら薬効が高くても副作用が強い場合は、なかなか販売につながりません。つまり、日本人は、エアバック・システムやABSが標準装備された車に、成田山不動尊の交通安全お守りを付けることでも明らかなように、他力本願で「安全性」の上に「安心」を積み重ねないと気がすまない国民なのです。

少々前置きが長くなりましたが、ある銀行系のシンクタンクが、新入社員を対象に意識調査を行った結果、就職先の選択基準では「企業ブランド重視」(企業の安定性や将来性)、が上位を占めたそうです。

確かに、自身が就職先に選ぶ企業の安全性を判断するのは目先は容易でしょうが、将来の安定性をどのように追跡するのでしょうか?“こんなはずではなかった退社”或いはリストラにより仕事をなくす等、先行きはなかなか読めない世の中になってまいりました。仕事は選ぶものではなく、与えられるものでもなく、自ら進んでつかむものですし、将来性は依存するものではなく、自ら築くものでしょう。

ベテラン社員になって、「ひょっとしたら私はまずいことをしていたかも・・・」「今時こんなことを知らないのでは・・・」と思わないよう、今のうちにあらゆるものを吸収する姿勢が必要です。要するに仕事のプロになることでありましょう。付け加えておきますが、「先輩或いは周りの社員に恵まれなかった」などという暇はありませんしそういう言い草はこれからは通用しません。

そして、くれぐれもリストラという名の企業側の全頭検査に引っかからないようにするのがこれからの崩壊した安全神話に対する明確な処方箋でもありましょう。


堀井 輝夫

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キーワード
•  BSE
•  安全神話
•  トレーサビリティー


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