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2004/05/06

合従連衡、乱世の世に習う 最後の“聖域”だった国内医薬品業界の乱世

今から107年前の1897年(明治30年)6月1日に、日本最大の製鉄所として八幡製鉄所が誕生しました。明治、大正、昭和前半まで、その鉄鋼生産力は日本の国運をも左右する影響力を持っていたそうです。また、1970年(昭和45年)に富士製鉄との合併で新日本製鉄となってからも、1980年代までアジア市場では独断場だったそうです。

ただ、日本の3分の2のコストで鉄鋼が生産できる韓国勢との競り合いで1998年(平成10年)に敗れた新日鉄は韓国の製鉄最大手・ポスコに100年守り続けてきた王座を明け渡すことになりました。この衝撃的な環境変化を含め、新日鉄の誕生以来、特に大きな再編もないまま21世紀を迎えた日本の鉄鋼業界では、2002年のNKK(業界2位)と川崎製鉄(業界3位)の経営統合による「JFEホールディングス」の誕生で、新日鉄グループとJFEグループの2大グループに集約され、供給サイドで非常に大きな変化が起こりました。

世界と国内では合従連衡のスピードがウサギとカメほどの違いがある医薬品業界も、その格差が縮まりつつあります。今回は、当時、国運を担って誕生した八幡製鉄の誕生月でもあるので、長い間、鎖国状態が続いた医薬品業界の合従連衡について書き綴ってみます。

政界や流通業界などで大きな再編劇が起こるたびに、決まって「合従連衡」という活字が新聞紙上を賑やかせます。これは中国の戦国時代(BC403〜BC221)に、「戦国の七雄」が覇を競っていた時代にできた言葉です。中でも、強大な秦に対する対抗政策の一つとして、著名な遊説家の蘇秦が説いた6国連合の攻守同盟政策を「合従」と呼び、その弟子の張儀が秦と組んで国の保全を図るべきと説いた単独同盟を「連衡」と呼びます。

結局、6ケ国を個別に撃破した秦(BC221年)の始皇帝による中国統一につながるわけですが、ユート・ブレーンがまとめた「2003年の世界医薬品企業ランキング」をみても、既に医薬品業界は少数の勝者のみが多大な利益を上げる「勝者がすべてを取る経済」へ転化させる、合従連衡・戦国時代に突入したものと判断できます。

10年前の業界地図と比較しても、その変転・変遷ぶりは目を見張るほどです。何となく認識はしていても、本当に現実化するとは、ほんの一昔前に誰が予測できたでしょうか。

順位
1996年
順位
2003年
ノバルティス ファイザー
グラクソ・ウエルカム グラクソ・スミスクライン
メルク メルク
スミスクライン アベンティス(HMR)
ブリストル J&J
ファイザー ノバルティス
HMR アストラゼネカ
ロシュ ロシュ
アメリカンホームプロダクツ ブリストル
10 バイエル 10 ワイス
       
18 武田 15 武田
20 三共 22 三共
24 山之内 25 山之内
30 藤沢 27 藤沢

かつての花形産業だった鉄鋼や商社、造船等に代表される、いわゆる重厚長大産業が立ち行かなくなって合併・買収の軌跡を辿ってきたことはご承知のとおりです。その時に、あくまでも巷の噂として流れていたのが、「規制産業の代表業種と言われた金融業と医薬品産業が最後に再編の洗礼を受けるだろう」という予測でした。

事実、数年前に起こった金融ビッグバンに伴う銀行の大再編劇を経て、いよいよ医薬品業界も合従連衡の時代に突入したわけであります。海外では既に多くのメーカーの合従連衡が始まっており、最近もサノフィがアベンテイスを買収するという報道が流されたばかりです。国内でも山之内・藤沢の合併(アステラス製薬株式会社)を機に、研究開発面や販売力等の国際競争力を高める大規模な合併と買収劇を経て「ウィナー・テイクス・オール・エコノミー時代(勝者が全てを取る経済)」に移っていくことでしょう。

生き残りをかけた合従連衡時代は、情報・知識・スキル・判断力・指導力・人間性すべての面で自身の持つ点数を試される時代でもあります。言い換えれば、自身を徹底的に磨く時代であり、従来のぬるま湯につかった体質を変える時代なのです。こういう時代に個々人が持つべき対抗策は、誰にも負けないユニークな強みを持つことだと思います。

そういう状況判断ができ、今何をなすべきかを自覚して行動している人は、必ずこの戦国乱世を生き抜くことができるはずです。自分を磨くことこそ、最良の処方せんでありましょう。


堀井 輝夫

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•  新日本製鉄
•  ポスコ
•  JFEホールディングス
•  合従連衡
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