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2004/07/01

平成の世の組織内処世術

ヨーロッパでは、7月23日から8月23日までの期間を“ドッグデー(犬の日)”と呼ばれています。これは猛暑で人も家畜も体力が弱り病気になったりするのは、この頃に現れる「おおいぬ座(シリウス星)」のせいだという俗信からきているそうです。

おそらく夏目漱石(1867年〜1916年)も、うだるような暑さの中で俗世間を逃れ非人情の世界に身をおきたくなったのでしょう、1906年(明治39年)9月に「山路を登りながら、こう考えた。知に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。・・・」という名文句で知られる「草枕」を著しています。今の平成の世でも十分通じるこのフレーズは、特に組織社会に属している方々なら少なからず体感していることでしょう。

今月は組織の中でどう対応するか、あるいはその接し方について書き綴ってみます。

漱石の「草枕」は、熊本第五高等学校(現在の熊本大学)の教授として、1896年(明治29年)4月から同33年(1900年)7月まで教鞭をとっていた頃に訪れた有明海に近い小天温泉が舞台とされています。

名文句の続きは、「とかくこの世は住みにくい。住みにくさが高じると安い所へ引きこしたくなる。しかしどこへこしても住みにくいと悟ったとき、詩が生まれて画ができる」と・・・。このフレーズは「職場の環境や処遇が良くないとやる気を出せないのは非人情の世界に逃避しているに過ぎない。どこへ行っても理想の職場や上司(あるいは部下)にめぐり合えるはずは無いのだから、現状の中で最大の努力をしよい企画や良い成果が生まれる」と解釈出来ましょう。

例えば、「うちの上司には能力がない」「会社は私に適切なポジションを与えてくれない」「私の部下は物覚えが悪い」などという愚痴をよく耳にします。これをゲシュタルトの心理学では、「未完の円」で説明しています。完全な円と一部が欠けた円を見比べると、人は心理的に欠けた円(足りないこと)の方が気になるものです。

上司に能力がないとか、適切なポジションが与えられないとか、部下の物覚えが悪いとか感じるのは、欠けた円の方をクローズアップさせた結果であり、職場の環境が良くないとやる気を出せないというのも、いわば逃避か言い逃れに過ぎないのではないでしょうか。

(バラの花はバラの花らしくあるときが、一番「バラ」なのだ)という言葉があるように、「今ここ」にポイントを絞って「何をしたいか」「何をなすべきか」を考え、行動に移さなければ、人々を感動させ共感させる事は不可能です。いくら高い能力を持っていても上司、同僚、部下の賛同と共感を得ない限りビジネスの大輪は開花することがないのです。

とかく組織社会は様々な人が多く、住みにくいものです。理想的な上司や部下など追い求めず「無能な上司や部下が多い」ことを前提にすればどうでしょう。きっと欠けた円も小さく見えるはずです。重要なことは相手を良い悪いと決め付けるのではなく、相手が何を考えているかを十分把握した上で、相手の問題行動に対して、「自分がどう困ったか」「自分が期待していたこと」などを上手にメッセージすることです。

例えば、部下に無頓着な上司に対しては、「○○の件に関するアドバイスありがとうございました。大変参考になりました」と帰り際にでも声をかければ、アドバイスを出すことは大事なことと気づきをもたらすはずです。また、気が利かない部下に対しては、「○△の企画書よくまとまっていたよ。でも参考資料を添付すれば、もっとよくなるよ」と付け加えれば、あの参考資料を添付すれば企画書の重みを増すことができるのかというような気づきにつながるはずです。

最後に、平成の世の組織社会の中で、自分らしく生き抜くために、部下の方には「トリプルA」を、そして上司の方には「トリプルB」という言葉を贈ります。

  • トリプルA
    Agility(敏捷性)、Adaptability(適応性)、Alignment(整合性)
  • トリプルB
    Back up(後方支援)、Backbone(信条)、Binding(結合)

堀井 輝夫

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•  夏目漱石
•  草枕
•  未完の円
•  トリプルA
•  トリプルB


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