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2004/12/01

師走にあたって“より新しき発想を”

光陰矢の如し”と言いますが、早いもので2004年度も残り一月となってしまいました。毎年12月は、時の経過の速さを実感させる月でもあります。

12月を「師走」とも言いますが、その語源は昔は家々で僧を迎えてお経を上げてもらう習慣があり、そのため、(僧)師が走るという意味から来たそうです。

また、一年の締めであり、すべての行動の帰結の月でもあります。振り返って見れば、12月と言わず、年中師走の多忙な一年であったとは思いますが、来年度に新たな期待と決意をかける月でもありましょう。

本年は、医薬品業界にとって診療報酬体系の改定が実施され、その動向如何が業界の関心事でありましたが、全体で見る限り嵐の前の静けさと言いましょうか。比較的大過なく終わりそうな歳であったかもしれません。師走を迎え、来年度の展望を見ながら書き綴ってみました。

今年は、経済界には大きな地殻変動が起きた年でもあります。5月31日、カネボウが3350億円の債務超過に陥り、産業再生機構の傘下で経営再建を目指すと発表しました。そして、あのカネボウがと思った矢先、次に迷走していたダイエーまでがその中に組み入れられ、解体することに決まりました。年の瀬も押し迫った11月には、西武鉄道の上場廃止が決まり、かつては日本の経済の中で花形であった、いわゆる「勝ち組企業」が転落したわけです。

業態は異なっていますが、共通しているのは、過去に成功したビジネスモデルはこの早い時代のテンポに通用しなくなったということです。また、巨大企業のみであること自体が安泰という発想が意味を成さなくなった、ということでもありましょう。医薬品産業も安寧に甘えることなく、新たな視点で変化に対応していかないと時代のニーズに合わなくなるという象徴的な出来事です。

翻って今年の医薬品産業の3大ニュースを挙げてみます。

まず、2月に山之内製薬と藤沢薬品の合併発表があり、業界に衝撃が走りました。いよいよ日本の製薬業界も統合・再編の時代に突入したとも言われております。武田薬品についで国内2番手のメーカーが誕生するわけであり、発足当初は売上高8000億円、MR数2400名、研究開発費1400億円で、世界17位の企業が生まれるわけです。また、その後の経営方針では、2007年には売上高1兆円、MR数2700名まで持っていく計画を発表しております。

そして、11月26日、師走を控えて大日本製薬と住友製薬との合併が発表されました。新会社は、売上高2800億円、MR数1500名で、国内売上順位6番目になります。国内市場が主流であった日本の医薬品企業も、世界市場の中での生き残りをかけた新たな統合と再編成の現実的な始まりでありましょう。

当社のセミナーで、いみじくも山之内製薬の森岡元会長が「統合によって“メガファーマ”になるか、あるいは外資の傘下に入るのか、あるいは研究、または特定分野で相互提携し、領域特化で存続するかの「3つの選択肢」しかない」、と強調されていたのを思い出します。今後、生き残りをかけた熾烈な競争と、さらなる再編成が予見される状況でありましょう。

2番目には、4月に発表された診療報酬の改定です。かなり今回は政治的なやり取りの中での改定で、“泰山鳴動して鼠一匹”の感ある改定に終始しました。診療報酬本体はさほど変わらず、薬価は薬価ベースで4.21%ダウンで始まった今年の改定ですが、折り返しの上半期の結果は、主要メーカーが改定にもかかわらず、それなりの収益を確保しました。しかし、この状況に安閑としていられないのがこれからでありましょう。

2004年9月中間期の決算では、上位10社のうち8社が営業増益となりました。売上は武田・藤沢・エーザイの3社が増収で、後は減収でした。基本的に海外で売上を伸ばしたメーカーが増収基調で、増益の要因はリストラ、経費削減、並びに研究開発費の繰り延べ等の効果によるものです。

一方、医療システムの川中に位置する卸業の中間決算はメーカーに比し、厳しいものがありました。株式上場医薬品卸上位4社の中間期決算は、売上については15%の成長でしたが、営業利益は実にマイナス31%、営業利益率0.7%とダウンし、メーカーの決算とは逆な対比を示しています。これは卸間のシェア争いによる納入価格ダウンによるものと見られております。

これは何を意味するものでしょうか?総需要抑制の中で、経費削減、売上シェア競争の結果が今回の中間決算数値を象徴しています。従来通りのやり方では売上、利益共確保するのは困難になってきたわけです。

3番目は、独立行政法人国立病院機構の発足に伴い、従来聖域であった国立病院も医療経営のあり方に経済合理主義が求められ、医療機関の淘汰が始まったことです。これを期に、自治体病院の統廃合、医療施設の見直し等、医療費抑制に伴う病院の選択と淘汰が始まった年でもあります。いわゆる、赤字の病院は要らないという発想でありましょう。

今後の医療制度改革に伴って、病院・診療所のあり方も様変わりに変化することでしょう。混合診療も本年末には何らかの方針が打ち出されてくるものと思われます。

この3つの事象は、いずれも医薬品産業界にも先ほどの勝ち組企業が直面した、「時代の変化への対応、新しいビジネスモデルの模索とそのあり方」を求めている一つの証明でもあります。

12月、師走の慌ただしい中であれこれ見直してみますと、共通して言えることは、過去に捉われない待ったなしの改革が医療制度・システムの中で既に実施されつつあるということです。効率を求めた新しい医療システムが構築されて行く過程であることを十分認識する必要があるのではないでしょうか。

変革は何でもありで、待ったなし。明日はわが身に振りかかるかな」、という発想で取り組む事が必要でありましょう。

これからは、国も企業も人も皆、押しなべて「斬新(先見性)・利益・効率」を求められることになると思います。「前例通り・過去の慣例・売上至上主義・非合理・不効率」では、これからの熾烈な競争には勝ち残れないでしょう。

2005年の年の瀬には、ただ一年「慌しく走り回った」だけではなく、新機軸の発想で利益思考の上に立った合理的、かつ効率ある仕事に徹したんだという思いに浸れたら幸いであります。


堀井 輝夫

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キーワード
•  製薬企業の合併・統合
•  中間決算
•  独法化
•  先見性


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