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2005/05/02

真の顧客とは?

1935年5月14日――。この日にオハイオ洲シンシナティのクロスリー球場で行われたレッド・レッグス対フィリーズ戦は、大リーグで初めてのナイトゲームでした。ナイトゲームは恐慌による観客の減少を打開する苦肉の策だったためか、ライトの点灯はルーズベルト大統領の手で行われたそうです。ルーズベルト大統領が「景気にも灯りを…」と願ったかどうかは定かでありませんが、この結果、大リーグに観客が戻ってきたそうです。

大リーグのリピーターを増やす経営努力、つまり観客動員策はナイトゲームに止まりません。アメリカの球団経営者たちは、球場自体をベースボールとアミューズメント・パークが融合した“ベースボールパーク”へと進化させました。そのため、球場は老若男女を問わず楽しめる「憩いの場」という受け止め方が定着し、市民が何度も足を運ぶようになったのです。

一方、日本のプロ野球はどうでしょう。改革の成果が問われる今シーズンに関らずセ・リーグ公式戦が開幕した4月1日の巨人戦ナイトゲームのテレビ中継は、史上最低の視聴率を記録したそうです。顧客は「顧みる客」と書きますが、日米の球団経営者には、自らが球場に楽しみを求める“リピーター”と、野球観戦に来る“単なる客”という考え方の違いがあるのではないでしょうか。

今回は「顧客とは何か?」に絞って書き綴ってみます。

「お客様本位」「顧客主義」etc…これらは古くから多くの企業で掲げられているモットーですが、徹しようと思っても徹しきれないのが実情です。とくに顧客のニーズ、ウォンツは、さながらモーリス・メーテルリンクが著した「青い鳥」のようで、「どこにあるというものではなく、それはあなた方の中にある」ようにも思います。

そのため、顧客よりも先に自社を無視する様なことをすれば後で手痛いしっぺ返しが必ずきますし、逆に顧客より先に自社を満足させれば期待以上の成果となって帰ってきます。

即ち“社員の顧客意識化”が「最大の顧客戦略」と考えますが、製薬産業の場合はどうでしょう。製薬産業にとって、顧客とは医師、薬剤師、看護士というのが一般的な認識で、この方達が最優良顧客と思って対応してきましたし、今でもその発想が根付いております。しかし、この対応モデルは本当なのでしょうか?

真の顧客とは最終消費者である患者さんですし、会社で言えば、身近な社員ではないでしょうか?親方日の丸的な「国民皆保険制度」の隠れ蓑にすがって、真の消費者とは誰かを認識しようともせず、目先の錯覚の上に立っていたのではないでしょうか?

医療費の過半数を占める保険料も国庫負担も、そして患者負担も、とどのつまり国民一人一人の個人負担と税金で日本の医療保険制度が支えられていることは、業界人なら誰でも知っています。そして現物給付の形で医療サービスが提供され、その一環として医療用医薬品が支給されていることも知っているはずです。それなのに、最終消費者(顧客)が患者さんでないのはなぜでしょう。

医療保険制度の違いと言ってしまえばそれまでですが、民間保険が主流のアメリカではDTC(Direct to Consumer:医療用医薬品の消費者に対する直接広告)が盛んで、消費者に製品内容等を直接宣伝したり、正確で幅広い医薬品情報を直接開示しております。患者負担や税金のウエイトを高めなければ医療保険制度が支えきれなくなる日が遅かれ早かれやってくる日本でも、個人が医療サービスを受ける権利、購入する権利を取り戻し、個人の選択が医療の中身の是非を問う時代になることでしょう。

厚生労働省の「医薬品販売制度検討部会」の調査によりますと、消費者が薬局・薬店で説明を受けたい内容は(1)効能効果、(2)副作用、(3)他の薬剤との併用についての注意、(4)飲み方の順です。また、価格については、(5)番目と順位は未だ低いものの、いずれこの価格についての透明性も求められてくるでしょう。

製薬企業は、この隠れた(これから顕在化するであろう)真の顧客ニーズ、(社員を含む)肉声を十分把握した上で、直接、働きかけられるよう早急に準備しなければなりません。

少子高齢化の進展で、健康で長生きというキーワードがこれから求められてきます。即ちクオリテイライフの思想が進展してまいります。これに対して製薬企業も疾病の開発並びにこれら疾病の治療に関して今まで以上に患者に対して直接働きかける重要性が益々出てくることと思います。

顧客や社員の意見、ニーズに価値を置かない企業は、すべからく市場から淘汰されていく運命を辿るような気がします。


堀井 輝夫

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•  リピーター
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