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2005/06/01

JR西日本鉄道の教訓 秘密主義+非顧客主義+管理主義=重大事故

6月10日は「時の記念日」です。「時間をきちんと守り、欧米並みの改善・合理化を図ろう」と1920年(大正9年)に生活改善同盟会が制定したのが始まりとされていますが、なぜこの日が「時の記念日」なのか、を説明するには日本書紀を紐解かなければなりません。日本書紀によると、天智天皇10年(671年)4月25日、「漏刻(水時計)を新しき台(高く建てた御殿)に置く、初めて候時を打つ、鐘鼓を動かす」とあり、“4月25日”が陽暦の6月10日に当たるためです。4月25日と言えば、「時間の遅れ」を取り戻そうとして悲惨な結果を招いたJR西日本の脱線転覆事故が思い出されます。

今回は、日本の鉄道史上、最悪の結果と最悪の事後処理を露呈したJR西日本鉄道という組織から得られる教訓について書き綴ってみます。

4月25日に起こったJR西日本鉄道の列車脱線転覆事故は、まれに見る悲惨な事故でありました。死者100名強、重軽傷者が400名強にも上り、連日報道されない日はないほどの重大事故でした。ただ、この悲惨な事故を他山の石とせず、その教える所を真摯に教訓として我々の仕事の中に生かすべきではないでしょうか。

【教訓一】

事故が起きた時、またその後の会社の広報体制を素早く組織化することでありましょう。

本来なら、まずしかるべき広報主管部門が中心となり、事故の状況を詳細に正しく世間に知らしめるべきですが、何等それらしき活動がなされませんでした。これが会社への不信感を増幅させるとともに、会社に対する隠蔽体質をも感じさせ、更なる批判に繋がったことは言うまでもありません。

そもそも、事件・事故が起きた時は、「素早く、適切に、ありのままの事実を、包み隠さず、発表する」のが鉄則です。医薬品の場合は、できる限り素早い副作用情報の開示であり、その回収に関する迅速な初動活動でありましょう。この第一歩が遅ければ遅いほど、世間はその後の発表にはますます懐疑的となり、後でいくら正しい事実を公表しても信頼してくれなくなります。

さらに、裏に隠された疑惑感が増幅するので、会社は大きな有形・無形の損失を被ることになります。

【教訓二】

事故後の社員のまずい対応であります。

乗客、即ち顧客が多く死傷している時に、ゴルフ、懇親会等を平然とするその意識の希薄化が問題でしょう。これは安全=顧客第一主義の重大な欠如であり、組織ぐるみの体質そのものと批判されても致し方のないことであります。

医薬品の場合でも、大きな副作用事故が発生した時、社員が自粛せず、そのまま従来どおりの対応をしていたとすれば、やはり問題になるはずです。組織としてのモラルの欠如、組織としての自粛判断の不徹底――その根底には顧客第一主義の重大なる欠落があるのではないでしょうか。日頃の意識の徹底と研修の強化を通じてこの発想を植えつけるべきでありましょう。

【教訓三】

官僚的独善発想と自己保身・利益指向主義でありましょう。

最初の発表でも、事故の原因が組織内に起因するものでないとする考え、そしてオーバーランを少なく見せかける社員同士の発想、これらは自己保身・利益指向・官僚主義的発想のしからしめるものであって、事実を捻じ曲げようとするその体質であります。

組織は、上は間違いがない、悪いのは外にある、下にあるという官僚主義的、教条的発想が本来、安全が第一義であるべき現場に無理な労働と利益確保を押し付け、それが事故の引き金になったことは後からわかった事実であります。

わからなければ自分達は正しい、ルール通りに運用しない者が悪いという硬直した組織の論理がまかり通ってしまい、結果として効率ある適正な仕事の推進の仕方に心が通っていないという自堕落な組織になってしまったのでしょう。

現場と乖離した“無理・利益指向・管理のためのルール”が一人歩きした組織の欠陥がいみじくも露呈したわけであります。


我々の身近にもこうしたことが起きていないかを、仔細に「現場主義」と言う視点から見直す必要があるのではないかと考えます。


堀井 輝夫

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キーワード
•  広報体制
•  副作用情報
•  顧客第一主義
•  自己保身・官僚主義的発想
•  現場主義


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