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2005/12/01

新『人は石垣、人は城』論 人のやる気を奮い立たせる企業とは・・・

今から133年前(1872年)の12月3日、明治政府は「太陰暦」から「太陽暦」に改暦し、この日を明治6年1月1日としました。この改暦で、1年354日が11日長い365日に改められたわけですが、それだけ日本の変化スピードが速くなっているということでしょうか。1年が太陰暦よりも短く感じられます。

今年も残すところ、あと1ヵ月、時間に換算すると744時間しかありません。「年年 花は変わらず 歳歳 人は同じからず」(毎年毎年、花は同じように咲くが、人の世は年とともに変わる)、とはよく言ったもので、振り返ってみると今年は製薬業界の業界地図が大きく塗り変わりました。

4月に発足したアステラス製薬、9月に経営統合した第一三共、10月に合併した大日本住友など、本格的な再編成の幕開けの年でもありました。結果として、各社ともまずまずの滑り出しを遂げたようですが、その根底に流れる経営思想は、国家財政および医療保険財政の悪化から、既に始まっている薬剤費抑制サバイバルゲームで、画期的新薬の創製を軸に「勝ち組」を目指すことです。

薬剤パスの普及やジェネリック医薬品の使用促進、薬価算定ルールの見直し、そして薬剤給付範囲の縮小など、市場を形成する変数が次々と書き換えられる状況にあるわけですから、製薬企業は待ったなしで新しい環境に適応する術を身に着けなければなりません。ただ、「人は石垣、人は城、人は堀」と言われるように企業の優勝劣敗を決する決め手は、やはり人の力です。個人の才能を十分に発揮できるような環境・組織を作ることが、最も問われているのではないでしょうか。

今一度原点に立ち返って、本来企業とはどうあるべきかについて書き綴ってみたいと思います。

良い企業とは、人が働きやすい環境を常に整えられる企業だと考えています。そんな企業には、おのずと結果もついてくるものです。なぜなら、企業を支えるものは人のやる気だからです。

日経ビジネスの11月7日号に「こんな会社で働きたい」というタイトルで特集が組まれていました。その中でモチベーションを感じる項目の重要度に

「経営理念、企業風土への共感」項目では、社会的意義と会社全体の一体感
「会社のビジネスモデルへの誇り」項目では、会社の将来と顧客志向の徹底
「仕事の役割と環境」項目では、個人の目標が正しく評価されている
「多様な働き方への対応」項目では、休日や就業時間の実態に納得できる
「実力本位の人事・賃金」項目では、個人の成果により役職が上下する
「人とのつながり」項目では、尊敬できる優れたトップがいる

これから見ると、「尊敬できるトップがいて、企業の将来像を明確に打ち出すとともに、組織の一体感を醸成し、常に顧客志向であり、社員の目標と結果が正しく評価される企業」ということでしょうか。このような視点で、一度ご自身の会社を点検されてみてはいかがでしょう。

要するに、企業は支え手であるで成り立っており、その人達にいかにモチベーションを与え、上手に使いこなすかということでありましょう。

人はそれぞれ価値観も違えば思想も生い立ちも様々です。組織とはこの人の集合体であり、異なる、いわゆるばらばらの価値観を束ね、一つの方向に可能な限り向けさせることが正しいあり方でしょう。人が一人で処理できる仕事の量は限られています。組織内で適切に情報と価値を共有できれば、仕事の質と量は飛躍的に増大するものです。

結局、人が事業を大きく発展させようと思えば、組織を組み立てるか、他の組織の中に入るか、いずれにしろ人は“組織”から離れられないのであります。従って組織の中で融合し、組織をいかに活用できるかがカギとなりましょう。

そのために、人の価値、ならびに人の考えを十分掌握し、それぞれに対応することが必要です。そうすれば、組織の中で大きな判断ミスはなくなるし、組織のモチベーション、組織のベクトルもプラスに向くはずです。

上手くいっている組織では、違う価値観の人間が一つの目標に向かって機能しており、上で束ねている人の度量と理解が人のやる気を奮い立たせているのです。

ハーバード大学のフレデリック・ハーズバーグ博士が1968年に提唱した「動機付け理論」によれば、主たる不満足要因は、「会社の方針と管理」「監督のあり方」だそうです。企業の方針が度々変わるとか、管理・監督が厳しい企業では、働く人の気持ちもついていきません。企業が大きな統合・融合の環境におかれている状況で、このモチベーションのあり方を真剣に考え、手を打つことがこれからの会社に求められる重要な課題でありましょう。

同様に、日本企業のマネージメントに大きな影響を与え、過日亡くなったピーター・ドラッカー氏も、その著書の中で「労働力はコストではなく資源である」とし、人の意欲(モチベーション)を高めることが経営マネージメントにとって重要であると説いております。

また、「イノベーションの欠如こそ既存組織が凋落する原因であり、マネージメントの欠如こそ新規事業に失敗する原因である」とも述べております。

これからの厳しい競争状況の中で成長を維持・持続するためには、そこに働く人の心を高めるモチベーションの高揚がマネージメントにとって大事になってくるのではないでしょうか。「働きやすい、モチベーションが高揚できる」企業に転換していく努力が今こそ求められているのです。


堀井 輝夫

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