セジデム・ストラテジックデータ株式会社 ユート・ブレーン事業部

世界の大型医薬品売上高ランキング2010

セジデム・ストラテジックデータニュースリリース

セジデム・ストラテジックデータ株式会社ユート・ブレーン事業部(CSD_UtoBrainDiv.)では、毎年恒例の「世界の大型医薬品売上高ランキング2010」をまとめた。これはメーカー各社の大型医薬品売上げを単純に並び替えてランキングしたものではなく、同じオリジナル成分を販売している各社のブランド品売上げや創製メーカーのロイヤリティを含めた合計による世界の大型医薬品売上高ランキングであり、創製された1つの成分が世界でどれだけの売上げを上げたかを見たもの。為替レートは2010年、2009年とも年末の米ドル換算値を使用しており、2010年は1ユーロ=1.3252ドル、100円=1.2262ドル(1ドル=81.55円)で換算している。

1.40億ドル以上の製品は1つ増えて21に

世界で40億ドル以上のブランド品は2009年に20製品だったが、2010年には抗がん剤であるノバルティスの「グリベック」と、武田薬品の降圧剤でARB製剤である「ブロプレス(欧米名アタカンド)」が40億ドルを超えた。一方で、サノフィ・アベンティス(本社は社名をサノフィに変更)の低分子ヘパリン製剤である「ロベノックス(日本名クレキサン)」のジェネリックが米国で登場して2009年の43.6億ドルから2010年は37.2億ドルに減少し、40億ドルを割り込んだ。その結果、2製品が40億ドルを超え、1製品が40億ドル割れとなり、40億ドルを超える製品は世界で1つ増えて21となった。それ以外の40億ドル以上の製品は2009年と同じであり、世界の超大型品はあまり変わっていない。

慢性疾患の大型薬効である高脂血症薬のスタチン製剤は「リピトール」と「クレストール」の2製品、降圧剤のARB製剤も「ディオバン」と「ブロプレス」の2製品がランキングに入っているが、欧米では既に3~4製品にジェネリックがある抗潰瘍剤のPPI製剤においてランクインしているのは「ネキシウム」だけとなった。このほかでは、抗がん剤が「リツキサン」「アバスチン」「ハーセプチン」「グリベック」の4製品、バイオの関節リウマチ薬が「レミケード」「エンブレル」「ヒュミラ」の3製品、統合失調症薬は「セロクエル」「ジプレキサ」「エビリファイ」の3製品が世界で40億ドル以上の製品となっている。

世界の大型医薬品売上高ランキング2010

製品名一般名薬効等メーカー2010年前期比2009年
1リピトールアトルバスタチン高脂血症/スタチンファイザー/アステラス他12023-5%12679
2プラビックスクロピドグレル抗血小板薬サノフィ/BMS9426-5%9905
3レミケードインフリキシマブリウマチ/クローン病他J&/メルク/田辺三菱806500%13%7143
4アドエア/セレタイドサルメテロール+フルチカゾン抗喘息薬GSK/アルミラル80290%8012
5リツキサンリツキシマブ非ホジキンリンパ腫ロシュ/バイオジェン・アイデック783313%6959
6エンブレルエタネルセプト関節リウマチ他アムジェン/ファイザー/武田727917%6216
7ディオバン/ニシスバルサルタン降圧剤/ARBノバルティス/イプセン70744%6801
8アバスチンベバシズマブ転移性結腸がんロシュ/中外製薬68679%5994
9クレストールロスバスタチン高脂血症/スタチン塩野義/アストラゼネカ683429%5306
10ヒュミラアダリムマブリウマチ/クローン病他アボット/エーザイ675221%5584
11ハーセプチントラスツズマブ乳がんロシュ/中外製薬57707%5073
12セロクエルフマル酸クエチアピン統合失調症アストラゼネカ/アステラス562610%5122
13シングレア/キプレスモンテルカスト抗喘息薬メルク/キョーリン54109%4977
14ジプレキサオランザピン統合失調症イーライリリー50262%4916
15ネキシウムエソメプラゾール抗潰瘍剤/PPIアストラゼネカ49690%4959
16アクトスピオグリタゾン2型糖尿病武田薬品/イーライリリー494614%4342
17ランタスインスリングラルギン糖尿病/インスリンサノフィ・アベンティス46519%4414
18エポジェン/エスポー/プロクリットエポエチンα腎性貧血アムジェン/J&/協和キリン4590-7%4961
19エビリファイアリピプラゾール統合失調症大塚製薬/BMS448510%4060
20グリベックイマチニブ抗がん剤ノバルティス42657%3944
21ブロプレス/アタカンドカンデサルタン降圧剤/ARB武田薬品/AZ/アルミラル42208%3906
40億ドル超小計1341407%125273

CSDユート・ブレーン調べ/為替レートは年末のレートで、www.oanda.comによる ©K.Nagae/CSDUtoBrainDiv.
製品名のアミ掛けはバイオ医薬品、一般名のアミ掛けは日本の創製品を示す
売上数字はドル換算での合計であり、前期比の数字は実際の伸びとは必ずしも合致しない

2.バイオ医薬品の増加がもたらす影響

バイオ医薬品と低分子医薬品の売上高

2010年 前期比 2009年
低分子医薬品 82333 4% 78929
バイオ医薬品 51807 12% 46344
21製品全体 134140 7% 125273

40億ドル以上の21製品の売上げ合計額は、2009年の1252.7億ドルから7.1%増え、金額では88.7億ドル増えて1341.4億ドルとなった。21製品のうち、バイオ医薬品は8製品であるが、バイオの売上げは463.4億ドルから11.8%増、金額で54.6億ドル増の518.1億ドルとなる一方、化学合成が可能な低分子薬の13製品は、789.3億ドルから4.3%増、金額で34.0億ドル増の823.3億ドルにとどまった。バイオ医薬品の売上げが大きく伸びる一方で、低分子薬はジェネリックが登場すると、多くがジェネリックに切り替えられてブランド品が大幅に減少するだけでなく、ライバル品の同クラスにジェネリックがあれば、ジェネリックを優先的に処方・調剤する国が増えていることから、同薬効の新製品は売上げを伸ばすのが難しくなっている。

大型のバイオ医薬品では、関節リウマチやクローン病、乾癬などで使われるバイオの3大抗リウマチ薬「レミケード」「エンブレル」「ヒュミラ」の増加が顕著で、これらの3製品だけで、2009年の189.4億ドルから2010年には16.6%増、金額で31.5億ドル増の221.0億ドルとなった。この3製品でバイオの8製品の増加額の58%を占めている。中でも、完全ヒト抗体で2週間に1度の自己注射ですむアボットのヒュミラは、ヨーロッパ全体で売上げ2位の医薬品となっている(1位はリピトール)。このような高価なバイオ医薬品による薬剤費増を抑えるため、財政赤字の問題を抱える国が多い欧米諸国では、ジェネリックのある低分子医薬品を可能な限りジェネリックに切り替える施策が強まっている。

例えば、社会保障の先進国と言われるスウェーデンでは、降圧剤のARBや抗潰瘍剤のPPI等においては、メーカーがジェネリックの価格に合わせて自主的に引き下げたブランド品以外は原則として公的保険で支払われない。ARB製剤では世界で最も多く使われ、表のランキングで7位の「ディオバン」も、ロサルタン(日本のブランド名ニューロタン)のジェネリックが昨年春に登場した後、保険対象外となり、医師が処方できなくなった。イギリスでは一般医に対し、スタチンを処方する場合は78%以上をジェネリックにするよう求めている。日本のように、医師が処方しようとすれば、適応症があれば基本的に何でも処方できる国は、先進国では少数派となっている。

3.低分子薬のブランド品市場は縮小へ

欧米では「2011年問題」と言われるように、今年は10月に表で14位の統合失調症薬「ジプレキサ」の米特許が切れ、11月には1位の「リピトール」のジェネリックが米国で登場する。15位のPPI製剤「ネキシウム」は日本で登場したばかりであるが、ヨーロッパでは国によっては今年1月からジェネリックが登場している。表で2位の抗血栓薬「プラビックス」はサノフィの本国であるフランスを含めてヨーロッパの多くでジェネリックが登場しており、米国では2012年5月に登場する。7位の「ディオバン」も2012年9月に米国でジェネリックが登場する予定である。米国では、ジェネリックが登場した次の四半期(3カ月)のブランド品売上げはほぼ90%減少するのが一般的になっており、四半期売上げが10億ドルの製品にジェネリックが登場すれば、多くがジェネリックに切り替わり、その次の四半期は1億ドルに激減する。

したがって、2010年に世界で40億ドル以上を販売した低分子薬の大型医薬品といえども、2011年、2012年には売上げを減らすものが多く、その一方で売上げが急増している慢性疾患の低分子薬は2型糖尿病薬の「ジャヌビア」など一部に限られているため、2011年、2012年の低分子薬市場は減少していくと予想される。

医薬品業界が世界的な大転換期を迎えている今、メーカーにとっては急速な環境の変化に合わせて、開発品目を見直したり、販売も各国ごとに最適と考えられる態勢に変化させていくことがより重要になっている。

参考

この大型医薬品売上高ランキングの詳細(世界で3.5億ドル以上の290製品のランキングと分析等)は、「ファルマ・フューチャー」2011年6月号に掲載しています。月刊誌「ファルマ・フューチャー」は、
(1) 世界の医薬品業界の変化のトレンド解説
(2) メーカーランキングや大型医薬品ランキング、薬効別ランキング等のランキング特集
(3) どこよりも詳しいメーカーの決算分析
という3つの特徴を持ち、1995年の創刊以来17年目を迎えた情報誌です。詳細、お申込みはファルマ・フューチャーをご覧ください。

世界の大型医薬品売上高ランキング2010(pdfデータ)

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