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歴史の哲学表紙写真

〜ドラッカー名言集〜
歴史の哲学 そこから未来を見る

著  者:ピーターF・ドラッカー
訳  者:上田 惇生
出 版 社:ダイヤモンド社
定  価:1,400円(税別)
ISBNコード:4−478−33105−7

私が目指してきたことは、現在を理解し、そこから未来を見ることである。そのために過去を知ることである。なぜなら、国にせよ、企業や大学などの組織にせよ、自らの過去を未来に向けて活かしてこそ、成功への道を進むことができるからである。――ドラッカー。

本書は、2つの大戦とその間の社会の崩壊を知るドラッカーが、よりよき社会のために、歴史に学び、今日の大転換の様相を描写し、その本質を洞察した言葉の数々を精選したものである。第1章:大転換期、第2章:知識革命、第3章:知識社会、第4章:組織社会、第5章:マネジメント、第6章:NPOの役割、第7章:経済至上主義の破綻、第8章:政治の変容、第9章:国家の巨大化、第10章:政府の再建、第11章:経済政策、第12章:経済開発、第13章:少子高齢化、付章:社会生態学、で構成されている。

自明の理とされてきたことのほとんどが現実と合わなくなり、現実の生活と仕事の方が超現実的な感じを与えている。境界を越えた後の世代にとって、祖父母の生きた世界や父母の生まれた世界は、想像できないものになる。我々はいま、そのような転換期を経験している。これまでの歴史どおりに動くならば、この転換は2010年ないし2020年まで続く。

いまだに昨日のスローガン、約束、問題意識が論議を支配し、視野を狭くしている。それらが、今日の問題解決に対する最大の障害となっている。産業革命は、知識の適用によってもたらされた。知識とは、常に存在にかかわるものだった。ところが、一夜にして行為にかかわるものとなった。知識は資源となり、実用となった。私的な財だった知識が、一夜にして公的な財になった。今や知識は、土地と資本と労働を差し置いて、最大の生産要素となった。

知識社会では、最大の投資は機械や道具ではない。知識労働者自身が所有する知識である。知識労働という新しい仕事は、肉体労働者が習得していない能力、しかも習得することの難しい能力を必要とする。理論的、分析的な知識を習得し、適用する能力を必要とする。仕事に対する新しいアプローチと思考方法を必要とする。何よりも、継続学習の能力を必要とする。知識社会としてのネクスト・ソサエティには3つの特徴がある。

  1. 知識は資金よりも容易に移動するがゆえに、いかなる境界もない社会となる。
  2. 万人に教育の機会が与えられるがゆえに、上方への移動が自由な社会となる。
  3. 万人が生産手段としての知識を手に入れ、しかも万人が勝てるわけではないがゆえに、成功と失敗の併存する社会となる。

個々の専門知識はそれだけでは何も生まない。他の専門知識と結合して、初めて生産的な存在となる。知識社会が組織社会となるのは、そのためである。

いずれの組織も、自らの目的を明確に規定するほど強くなる。自らの成果を評価する尺度と測定法を具体化できるほど、より大きな成果をあげる。

明日のトップマネジメントは、現場のマネジメントとは異質の独立した機関となる。それは事業全体のための機関となる。そのとき、最も重要な仕事となるのが、短期と長期のバランスである。同時に、顧客、株主、知識労働者、地域社会など利害関係者間の利害のバランスである。

人は、未来を知りえない。人が知り理解することができるのは、年月をかけた今日ここにある現実の社会である。したがって、人は、理想の社会ではなく現実の社会と政治を、自らの社会行動、政治的行動の基盤としなければならない。

政府の再建に必要なものは、常に3つである。機能していないもの、機能しなかったもの、有益性や貢献能力を失ったものを廃棄することである。機能するもの、成果を生み出すもの、組織の能力を高めるものに集中することである。半ば成功し、半ば失敗したものを分析することである。

経済を1つの生態系、環境、形態としてとらえるモデルが必要とされている。それは、個人と企業のミクロ経済、政府のマクロ経済、グローバル経済という3つの相互に影響しあう領域から成るものでなければならない。今日では、援助が経済開発をもたらさないことは、十分すぎるほど明らかである。一国の経済を外部から発展させることはできない。なかんずく援助では無理である。

人口が減少する豊かな先進国のすぐ隣に、人口が増加する貧しい途上国がある。人の流れの圧力に抗することは、引力の法則に抗することに似ている。それでいながら大量移民、特に文化や宗教の異なる国からの大量移民ほど、危険な問題はない。最も深刻なのが日本である。定年が早く、労働市場が硬直的であり、しかも大量移民を経験したことがない。

以上が本書の概要である。読者の皆さん方もドラッカーの本は多く読んでいることだろう。ドラッカーの関心は人間にある。ドラッカー自身が「私は自分を社会生態学者(ドラッカーの造語)だと思っている。自然生態学者が生物の環境を研究するように、私は、人間によってつくられた人間の環境に関心をもつ」と述べている。そのドラッカーの一言一言が、われわれにとっての考えるヒント、行動の起爆剤になっている。読者の皆さん方はドラッカーの著書を読み、これはと思う箇所に線を引いたり、赤丸をつけたりしてきたと思うが、再度認識していただきたい本である。ドラッカーは「私は社会を理解するために歴史を学んできた。本書は、私が社会について歴史から学んだことを集大成したものである」と述べている。読者一人ひとりの心のバイブルにして欲しい本である。


北原 秀猛

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キーワード
•  知識社会
•  ネクスト・ソサエティ


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