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「変わる!」思考術表紙写真

「変わる!」思考術 成功する人と失敗する人、その差はここだ

著  者:畑村 洋太郎
出 版 社:PHP研究所
価  格:1,260円(税込)
ISBNコード:4−569−63748−5

日本がいま、大きな転換期を迎えていることは間違えありません。それは産業が成熟していく過程で起こる必然なのですが、そのことで従来のやり方が通じなくなっているのもまた事実です。だいたい自分自身は変わることを拒否していても、周りの状況はおかまいなしに変化していきます。その結果、変われない人の周りでは「自分の居場所がなくなる」ということが起こっています。これはこれで見過ごすわけにはいきません。状況が変わっているのに、それに合わないやり方をいくら続けたところで、これから先も成果が上がらないことは目に見えています。いまやるべきなのは、次に動いていく方向を検討し、それを実現するために何が必要かを考え、それを確実に実行することです。そのためには、自分を取り巻く環境が大きく変わっているのに合わせて、自分自身もまた変わっていくことが求められているのだと言えます。

本書の構成は、序章:現象の見方、考え方を変えなければなにもかわらない、第1章:転換思考のすすめ、第2章:変わる必要性を理解する、第3章:社会の仕組みがわかると変わることは怖くない、第4章:変われない人は損をする、第5章:なにをどうすれば変わることができるのか、第6章:失敗に対する見方を変える、第7章:まわりを変えるにはどうすればいいのか、終章:幸せの基準はひとつではない、以上のようになっています。

人間が本当の意味で変わるには、見方や考え方、価値の置き方もすべて変えなければなりません。ところが、多くの人は一気に変えるのではなく、少しずつ変えていこうとします。こんな中途半端なことを試みても意味がありません。外的環境というのは、絶えず変化しているので、その人が少しの変化で済ませているうちに乖離は30、50、100という風に、どんどん大きくなっていきます。そして、臨界点を迎えたときに爆発し、変わることのできなかったツケとして一気に返ってくるのです。

変化についていけない人は、会社の中で居場所をなくすことは先に述べました。そのような状態に至ったとき、多くの人は以前に比べて待遇が悪くなったことに不満を感じ、手のひらを返したように、自分を軽く扱うようになった会社に怒りの矛先を同じように向けます。また、自分が苦しい思いをしているのは景気の低迷が原因であると考え、この問題を一向に解決できないでいる政府の無能ぶりを批判したりします。

2001年1月に、中央省庁が新体制となって1府12省庁に再編されました。従来23あった省庁を、ほぼ半数の13省庁にスリム化できたことに胸を張っていましたが、できあがった新体制が旧来の省庁が持っていた利権をそのまま受け継ぐ形となったのは周知の通りです。結果的に、機能的にも構造的にも何も変わらなかったということです。

日本経済の長期的低迷の原因を一言で言えば、周りを取り巻く環境が変わったのに、それに適切に対応していないことにあると見ています。統計を見ると、繊維、造船、鉄鋼、自動車など日本の経済を支えてきた産業は、どれもある時期にピークに達しています。そして。右肩上がりの成長を続けていた時代を終えると、徐々にではあるものの必ず衰退しているのです。すべての産業が時代の変化の中で役目を終えて衰退していくように、企業もまた新しい手を何も打たなければ、萌芽期、発展期、成熟期を経て必ず衰退期へと向かいます。その周期もおよそ30年です。

アルゼンチンという国は、いまでこそ最貧国の一歩手前の状態にありますが、20世紀の初頭は国民1人当りGNPで経済発展が著しかったアメリカと肩を並べていました。当時は間違いなく世界で5本の指に入るほどの経済大国だったのです。そのことは、主人公のイタリア人少年が出稼ぎでアルゼンチンに渡っている母を追って、ヨーロッパから単身旅をする『母を訪ねて3千里』という物語からもうかがい知ることができます。アルゼンチン経済は、19世紀末には年平均6%の割合で成長を遂げていたのです。ところが、1929年に転機が訪れました。世界恐慌によってイギリス経済が大打撃を受けてから、頼みの綱であるイギリスがつまずいたことで、その影響をもろに受け経済が立ち行かなくなってしまったのです。

変化の時代に私達が求められているのは、自らが変わることを恐れずに、新たなものに挑戦することです。そもそも人間には、一度自分達のやり方でうまくいくと「そのやり方でずっとうまくいく」、「そのやり方さえ守ればうまくいく」と考えてしまう傾向があります。それは、わかっていてもついはまってしまう落とし穴のようなものです。

変わることを恐れる人の一つの特徴として、社会の仕組みに対する無理解が挙げられます。社会が大きく変わるときには、予測していなかった事態が周りで次々と起こります。その際、状況に応じて対処ができずに思わぬ失敗を起こしてしまったり、適切な対処ができないまま失敗の被害を拡大させてしまうことは珍しくありません。そして、時代の移り変わりの中で新しいものが生まれる一方で、古いものが廃れていくということが必ず起こります。長く続いた不況の中で、倒産の危機に瀕した企業はたくさんありました。その中には役割を終えて本来なら潰れてしかるべき企業もありましたが、行政が介入して無理に守ったことで、日本経済全体に悪影響を与えたケースが少なからずありました。その最たる例が銀行やゼネコンなどで、積極的に世界に出て行くこともせずに、競争力を身につけることを怠ってきた代表格です。

結局、人間の営みというのは、失敗から新しい定式をつくって成功が得られる状態に導き、その定式が通じなくなったら再び失敗から新しい定式をつくり出して成功に導いていく、という繰り返しのように思います。今、大きな転換期を迎えて、日本中が新しい時代にあった新しい定式を必要としています。それは企業もまたしかりです。新たな定式がつくれる人が好待遇で迎えられ、その反対に定式を使いこなすだけの従来型の人達が冷遇されているのも、すべてはそこに原因があります。いまは年収ベースで1500万円程度ある人でも、会社という枠から出て裸になったときに、おそらく600万円の値段がつけば御の字ではないでしょうか。厳しい言い方をすれば、600万円の値段がつくのはまだ良い方だと言えるでしょう。

理想を言えば、日頃から努力することで、自分でものを考え、行動しながら新しい価値を作り、動かせる能力を身につけるのが一番です。

「変わる」というのは、新しい時代に合った新しい定式をつくり、それを行動の規範にすることです。ただし、このようにして新たにつくった問題解決のためのシナリオを、本当の意味で使えるものにするには、「知識化」という作業が必要になります。知識化というのは、ある場面でしか使えない状態の知識を一般化することで普遍的知識とすることだと考えて下さい。

ある事象を見たときに、それのどこに問題があるかを発見するのはちょっと頭の良い人なら誰でも簡単にできます。しかし、これは単に問題を発見したに過ぎず、その発見を進歩につなげるには、もう一歩踏み込んで目の前の問題の中から自分がやるべきことを課題として選定することが必要になります。これを私は「課題設定能力」と呼んでいます。課題設定能力というのは、まさに自分の生き方を決める大事なものです。日本人の多くはこれまで、定められた成功の定式、ないしシナリオ通りにもの考えて解を出すのを常としてきました。そのような人達はいわば、「順演算による思考」を行っているようなものです。変化の時代を迎えては、「逆演算による思考」を身につける必要性が高まっています。逆演算の思考とは、見えている結果からある現象を考え、見えていない原因を探っていく能力だという風に考えられます。

私達が変わるための第一歩は、まずは結果を恐れずに自ら行動することから始まります。「失敗は成功の母」という類の言葉は、世界どこに行っても聞くことができます。そう考えると、人間が進歩する上で失敗が欠かせないというのは人類の共通認識なのかもしれません。失敗を大きく分類すると、「良い失敗」と「悪い失敗」に分けることができます。私達が経験すべきは、このうちの良い失敗の方なのです。ここでいう良い失敗というのは、個人が成長する過程で必ず通らなければならない、あるいは体験しておいた方が後々のためになるという失敗です。

失敗を避ける生活を長年していた人が突然これを改めるのは、現実にはなかなか難しいことです。新たなことに挑戦するのが自分の利益になるのは、人から言われなくても誰もが理屈では理解しています。それなのに結果を恐れて、つい避けるように行動してしまうのが失敗なのです。そもそも価値観というのは常に一定ではなく、時代によって変わるものです。状況が大きく変わっているのであれば、従来とは違った新しい価値観でものを考えなければ、幸福に生きることなどできないのは当り前のことではないでしょうか。あなたが現状に不満を感じているとすれば、それは自分自身のものの考え方に原因がないかどうかをまず考えてみる必要があります。そして、少なくともどんな時代、どんな状況でも同じように考えようとする金太郎飴のような画一的な考え方を捨てなければ、変化に富んだ時代に幸福を感じることなどできないことを理解すべきです。

このように、世の中が大きく変化している時代に古くなった定式を使うことでさまざまな問題が生じます。もともと国の文化というものは、誰かが決めるものではなく、社会を構成する一人ひとりの考え方を反映して築かれていくものです。それが弊害の多い流れになっているなら、やはり一人ひとりが自分で考え、主体的に行動できるようになることで変えていくしかありません。一人ひとりが行動することでしか、いまの弊害の多い状態を変えていく道がないのなら、無意味だと考えたり、怯んだりすることなく、些細な失敗を気にせずに、まず行動してみることを心掛けるべきです。

以上が本書の概要です。人生の法則は「因果応報」です。すべては自分の考え方、そして、行動に起因しています。そして、その因により結果が出てきます。また、その結果が良くても悪くても、結果に応じた報酬が付いてくるということです。そのためにも、常に自分の心を鍛え続けていくことが求められます。本書の中にも述べられていますが、常に「現状を正しく認識する」ことです。変化を過去形で捉えず、現状から先を読み、自分を変えて行く努力をすることではないでしょうか。


北原 秀猛

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キーワード
•  変化
•  知識化
•  課題設定能力
•  逆演算


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