国民皆保険制度の日本では、国民がいつでもどこでも軽い負担で医療を受けることができる。これは素晴らしい制度だと世界中に評価されている。一方、途上国である中国では、このような国民皆保険制度が実現される日は程遠いだろう。
中国政府は、2003年から農村合作医療を中心とする新しい医療制度を創設することを明らかにした。まず、各省・自治区・直轄市においては、少なくとも2〜3県をもとに、合作医療制度のモデル事業を実施していき、それを突破口にして成功した事例を広く全国に普及していく方針。
新たな案では、大病統籌(拠出)を中心とする合作医療制度は、(1)個人納付、(2)地域(公的組織)扶持、(3)政府補助――の原則に基づいて資金調達を行う仕組みとなる。これによって合作医療に加入する農民は、いったん病気に罹って入院した場合、一部の医療費は調達基金から還付され、個人的な経済負担が軽減される。全国的な実施は2010年を予定している。
中国財政部(日本の財務省に相当)は、今年度から一部農村地域における農民の加入意欲を促進するため、合作医療制度に加入する農民1人当たり年間10元(約150円)の補助金を交付することを明示した。
中国の現行医療保険制度(都市部の労働者を中心とする労働医療保険)は、2000年から実施されたものであり、昨年までに約8000万人の都市職員がその医療保険制度の枠組みに入っている。しかし、この制度は、総人口の7割を占める農民は対象外となっている。
実は、合作医療制度は1960年代に中国の多くの地域で実施されたことがある。ところが、社会環境や経済状況、改革開放政策の導入などの大きな変化により、同制度が瀕死の状態となり、ほとんどの農民が“無保険医療”となってしまった。農村医療の“無銭看病、因病致貧”(病気になっても医者に行く金がない、病気によって仕事ができず貧しくなる)という状態がしばらく続くだろう。
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