著者の土志田征一氏が冒頭に「日本経済が抱えてきた問題を整理し、全体像を把握して日本経済の将来を切り開く方策を追求していきたい」と述べている通り、過去の10年を振り返って問題を整理し、最後に日本経済改造私案としてアメリカと比較しながら日本の問題を“日本経済3つの宿題”にまとめている。
まず著者は「失われた10年」ではなく「失った10年」が正しいと説く。
それで、1990年と2000年を比較した成績表をつくり、コメントをつけている。そのコメントは
- 経済成長が低迷していることである。
- 家計部門は失業増大という負担は生じているが、消費水準は着実に向上している。
- 企業部門は収益力が低下し、まだ整理すべきものが残っていることを示している。また、投資水準は大きく落ち込んだ後、最近IT投資で回復してきたが、まだ低い。
- 政府、日銀は異常な政策採用を余儀なくされており、財政金融とも限界にきている。
すなわち、消費水準が着実な上昇を示したことを除くと目に付く成果を上げられていないということになる。
しかも、日本経済が得たものは隠されている。それは「構造改革」の進展である。高コスト構造を是正し、内外価格差を縮小させるという経済構造改革は着実に進んでいる。ドラッカーの名言に「強みの上におのれを築けるか」があるが、土志田氏は日本企業経営は3点を基礎として展開されなければならないとしている。
- 第一「オープン(Open)」で「柔軟(Flexible)」でなければならない
- 第二「スピード(Speed)」と「責任(Responsibility)」がなければならない
- 第三「核(Core)」をしっかり持つことである
これを踏まえると、これからの企業は三層構造でなければならないことが分かる。すなわち、中心に核となる部分、その外側に支援する部分、もっとも外に、外部と常に接触しながら柔軟に形を変える部分である。言うまでもなく、企業の評価は中核から出てくる戦略によって決まってくるであろう。いかにして他の企業と差別化を図り、独自の戦略を構築するか、これこそ経営者の責任である。
企業も個人も誰かが代わって努力してくれるわけではない。自分の城は自分で守る以外にない。自助努力によってのみ将来があることを理解して、環境に適応できる企業、個人をつくるしかない。
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