仕事ができる人間には、性格にせよ、能力にせよ、考え方にせよ、なにか共通点があるのではないか──以前、テレビの経営トーク番組で「ホスト役」を務めた堀場氏の結論は、「両極端」、つまり「プラスにしろマイナスにしろ、自分の持ち味を極端なまで活かしている」ことにあるそうだ。
一人の人間の性格、能力、考え方というものは、なにも一つに特定できるものではない。そうであれば、そのときの状況に応じて自分の一番いい側面を出すという柔軟性こそが「仕事ができる人」の絶対条件になるはずだ。
本書は8章に分かれ、それぞれの章ごとに「こんな性格の人」「この能力がある人」「この努力をする人」「こんな習慣がある人」「こんな発言をする人」「こんな態度の人」「こんな見方をする人」「こんな価値観の人」といった特徴付けを行い、ものの見方、考え方が整理されていて、読みやすくわかりやすい。しかも、自分の会社である堀場製作所の例を引き解説が加えられている。
「社員は俳優、経営者は監督、そして会社は舞台。同じ芝居を演じるなら、一流の舞台を選ぶのは当然だ。掘っ建て小屋よりは音響効果など舞台設備の完備した劇場でやった方がいいに決まっている。会社で言えば、一流企業はそれに当たるが、私が言う一流企業とは、規模の大小ではない。理念を高く掲げ、全社一丸となってその実現に邁進する会社だ」と力説している。
大切なのは「劇場」ではなく「仕事」であり、仕事を通じて自己実現を図ることこそ幸せな生き方である。「何のために働くのか」「なぜ出世を願うのか」「自分にとって幸せとはなにか」──この問いに答えられない人は、それだけ取り残されていくことになろう。堀場氏は、来るべき時代に、仕事に対する哲学を持たない人は、目標もなく砂漠をさまようようなものだと述べている。堀場雅夫氏の哲学書とも言える本書は一読の価値がある。
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