オリックスの会長職にある傍ら、総合規制改革会議(内閣総理大臣の諮問機関)の議長を務める宮内氏が書き下ろした経営論である。
日本の企業経営に今求められているのは、一言で言えば「アメリカに向かって走れ」ということである。グローバルな市場経済化の頂点に立つアメリカ企業の背後にあるのはすぐ崖だが、平等性の高い日本企業も効率の低い海に沈みかねない波打ち際にいるようなものと説く。「これからの日本は、山頂にいるアメリカの中腹あたりに向かって登っていく必要がある」この比喩的表現からは、アメリカ的経営の長所を認めた上で、アメリカから学ぶべきところと日本企業が培ってきた長所を生かし、新しい経営の創造を目指すべきだというメッセージが読み取れる。
まず、本書では日本経済体制の特異性を明確にした上で、日本の進むべき方向、企業人としてのあり方について触れられている。
日本経済は官営経済・統制経済・市場経済が入り交じって効率を上げてきた。アメリカは経済全体の効率を上げるために規制のある統制経済の部分をできるだけ市場経済化すべきとの考え方に基づき、1980年代に大幅な規制改革が断行された。アメリカの規制比率(規制産業の生産額がGDPに占める比率)6.6%に対し、日本は39.4%であると指摘する。官営経済とは国が運営する経済体制で、その本質は社会主義経済と変わらない。一方、市場経済ではライバル企業というより顧客ニーズの変化に対応できる体制を絶えず再構築していくことが求められ、これからの経営の大きなテーマになる。経験と知識が集積されたコアビジネスこそ収益の源である。市場経済が形成する知識社会はモノやサービスに情報や知恵を加工して付け加えることで新たな価値を生み出す社会である。
オリックスの経営理念、経営方針、行動指針などを例に出し、企業行動に参画する社員に高い社会性を求めるとともに、それに加わることにより大きな意義があると述べている。これからは企業が置かれた環境を十分認識した上で、従来の殻を破り、21世紀型経営を指向していかなければならない。
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