著者は予測不能な時代における戦略を「適応力のある構造をデザインすること」と位置付けている。例えば、銀行業の場合でも、70年代は金融サービス業、80年代は金融仲介業、90年代は情報仲介業に変化してきた。現代は製品ではなく顧客が市場と産業を定義する時代であり、市場支配力が供給者から消費者に移っている。
顧客のニーズを予測するのではなく、その変化を感知し、それに応えることによって不確実な環境に適応できる能力を養うこと、言い換えれば、今日の企業は顧客を深く理解した上でビジネスを営まなくてはならないということだ。
著者はSIDAサイクルを重視している。すなわち、外部環境や内部状態の変化を感知(sense)し、これまでの経験や目的、能力などに基づいてこれらの変化を解決(interpret)し、脅威と機会を振り分け、無用な情報を切り捨てる。次にどう対応するかを決定(decide)し、最後にその決定に従って行動(act)する。
そのための新たな組織とは、センス&レスポンス組織である。顧客のニーズなどの環境変化を感知して、それに応える組織だ。20世紀の工業化時代に成功を収めた大企業は、たいてい企業主導のメイク&セル組織だが、センス&レスポンス組織は顧客主導で動く。そして組織の目的を共有し、理解し、その範囲内で意思決定を行うという分散されたダイナミックなチームから成り立っている。
以上のように、新たな時代とは不連続な変化が連続して起こる「予測不能な時代」である。センス&レスポンス組織という新たな組織の必要性を痛感させられる一冊だ。
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