ジョン・ネズビッツ氏は、世界各国でベストセラーとなった「メガトレンド」をはじめ「グローバルパラドックス」など世界的な社会現象分析に関する書を数多く著している未来学者である。また、ジョンソン大統領時代に大統領特別補佐官を務めた経験を持つ。著者は、テクノロジーに支配された現代社会の実情を踏まえ「人間であるとはどういうことか?」という根源的な問いを発している。
テクノロジーには“人間らしさ”という重大な要素を見失わせ、ストレスを増大させる副作用がある。この環境において現代人に求められるのは、テクノロジーに踊らされることなく、テクノロジーを自分の掌に乗せて、その真価を見極めることだ。そのためには、精神的なゆとりと人間性に裏打ちされた価値観が不可欠であるという。
high tech high touch とは、物事を眺めるときに必要な人間らしさというレンズである。
テクノロジー中毒社会に見られる症状は
- 宗教から栄養摂取まで、あらゆる分野で速効の解決法に飛びつく
- テクノロジーを恐れると同時に崇拝する
- ホンモノとニセモノの区別があいまいになる
- 暴力を当たり前のものとして容認している
- テクノロジーを一種のおもちゃとして愛好する
- 人々が孤独な集中できない生活を送っている
「現世の命を引き延ばすのと引き替えに、テクノロジーへ魂を売っているのだ。肝臓移植であと3年、酸素マスクであと3週間の命を手に入れる。遺伝子テクノロジーによってあと30年分の健康な人生が保証されるようになったら、人々はどうするだろうか?」など、テクノロジー中毒を煩うわれわれに、人間としてどうあるべきかを問い掛けてくれる。
また、神学者のシュリバーの言をとって、知能という徳のみを過大評価する傾向は改める必要があるとも述べている。日の出、日の入りとともに寝起きした「ハイタッチ」から「ハイテク」へと変化してきた世の中に対し、自分としてその真価を見極めなければならないという警告書である。
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