ハーバード・ビジネススクールの機関紙「Harvard Business Review」の論文集である。
本書は同誌のエディターのジョーン・マグレッタがこの5年間に編集した論文やインタビューからニューエコノミーの経営を考えるのに役立つ12本を選んでまとめたものである。
本書は大きくわけて3つの部分から構成されている。第1〜4章は『競争と戦略』がテーマで、ニューエコノミーの戦略的問題について論じている。第5〜9章は「リーダーシツプと組織」の問題について論じている。第10〜12章のテーマは「実践とアイデア」でニューエコノミー時代の経営にどのように取り組んできたかを3人のCEOであるデル・コンピュータのマイケル・デル、香港最大の商社リー&ファンのビクター・ファン、モンサントのロバートB.シャピロに語らせている。
特に筆者が関心をもつたのは、第2章の「クラスターが生むグローバルな競争優位」の表題で論じたマイケル・ポーターの論文である。
今日の世界経済情勢を見れば多くの分野においてイノベーシヨンと競争による成功が「クラスター」によりもたらされているとしている。CLUSTERは集団である。ポーターによるとクラスターとは、「特定の分野において相互に関連のある企業や組織が地理的に集中している状態である」と述べている。最もよく知られている例にシリコンバレーとハリウッドがある。製薬企業ではペンシルベニア/ニュージャージー州がそうである。マイケル・ポーターはそれらクラスターのはたらきを論証し、現代における競争のダイナミズムを分析している。競争優位は生産性いかんであり、生産性は絶え間ないイノベーションを要求する。クラスターという概念から明らかになるのは、企業の「周り」にある環境が同じく大切な役割を果たしているという点である。現代の競争を左右するのは生産性であり、勝敗を決めるのは経営資源へのアクセスや個々の企業の規模ではない。生産性は企業の競争方針により決まる。具体的にどの分野で競争するかは関係ない。どのような業界に属していても高い生産性を実現することは可能である。ただし、そのためには高度な方法論を採用し、最新のテクノロジーを活用して独自性のある製品やサービスを提供しなければならない、と論じている。そして、クラスターが競争に与える影響は3つあるが、その1つがその地域の企業の生産性を増大させることである。また、3人のCEOの意見も非常に参考になる。
一読の価値あり。お勧めします。
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