この本は大前研一氏と田原総一朗氏との対談集である。しかし進め方としては田原氏が質問者となり、その質問に対して大前氏が答えるといった形式をとっている。内容は経済、企業経営を中心にグローバルな視点で捉え、今後の日本のあり方について考察した本である。田原氏は冒頭で「日本は不況という言葉の呪縛によって“發想力”が凍りついてしまった。不況などといっていたのでは新産業を創出する発想力は生じ得ない」と述べている。
大前氏は、「先進国のあり方は“知識の付加価値”でメシを食う時代である。民主主義は国民が国家を運営するものであり、個人個人が知的付加価値をつけることが出来なければメシが食えなくなる」と喝破する。
日本の大きな問題は、アメリカが知的付加価値でリードし始め、後から中国がコスト競争力でもって追いついてきた。その中で日本がこの10年やって来たことは最も将来性のない産業に投資を続け、最も将来性のない地域にお金をつぎ込んできたことである。ボーダーレス経済下では基本的にケインズ経済学は成り立たない。今、有効な経済学はサプライサイトの経済であり、売る人と買う人が出会ってマーケットが成り立つ、市場原理に任せることが大切である。
「ネットワーク社会の勝負と言うのは知的付加価値であり、頭の勝負である。要するにネットワーク上でいかに情報を受信してそこに付加価値をつけて発信するのかである。知的戦争に負けたら21世紀に敗戦国になると言う認識がなければ、今の日本の生活レベルは維持出来ない」と言う。すなわち、グローバルな視点で現在の日本を見て、どうあるべきかを問うた本である。大前氏が述べているように、今の日本をもう一度見直し、捨てるべきものと創るべきものをじっくり考えて手を打たなければならない。なかにはわれわれの考えの及ばない箇所もいくつかあるが、自分の考えていることと比べながら読んで戴きたい。
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