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知識の源泉表紙写真

知識の源泉(wellsprings of knowledge)

〜イノベーションの構築と持続〜
著  者:ドロシー・レオナルド
訳  者:阿部 孝太郎、田畑 暁生
出 版 社:ダイヤモンド社
定  価:2,800円(税別)
ISBN:4−478−37356−6

この本はアメリカで1995年に出版された「wellsprings of knowledge」の翻訳本である。本書は全7章で構成され、前半2章は、理論的な部分でコア・ケイパビリティやコア・リジディティの基本概念の説明である。後半5章は、知識構築に必要な4つの活動である問題解決の共有、ツールの導入と運用、実験、外部知識の導入、が具体的に論じられている。

一つの例として、チャパラル・スチーム企業を取り上げ、チャパラルのマネジャー達はチャパラルの従業員が、(1)操業上の問題点を解決するために職能横断的な専門知識を身につけ、(2)新しいツールや方法論を統合し、(3)実験を行い、(4)企業の外部から知識を導入する――この4点に対し解説をしている。

まず。コア・ケイパビリティ(capability=能力、特性)であるが、そのコア・ケイパビリティをマネジメントする上で問題になるのは、それが逆説的にコア・リジディティ(rigidity=硬直性)でもあると言うことである。つまり、企業の強みは同時にその弱みでもある。他を犠牲にして一つの知識に焦点を当てるさまざまな活動や意思決定が行われることで、企業は競争力をつけていく。しかし、人間と同じように企業はすべての領域で高度なスキルを身につけることはできない。したがって、コア・ケイパビリティは優位性であり、またその逆でもありうる。コア・リジディティは企業が技術的不連続の瀬戸際でどっちつかずの状態にある時、最も危険なものになる。不連続性とは、つまりベースにしている技術がまったく新しいパラダイムに移行するような状態を指す。

個人と組織の創造性は問題解決に対するアプローチにおけるそれぞれのバックグランドやトレーニングや個人的な選好によって制限されている。創造的摩擦はコア・リジディティの解毒剤である。適切な知識をプロセスツールやシステムに統合することは、潜在的に競争優位を提供する。しかし、そうしたツールはイノベーションのプロジェクトとしてマネジメントする必要がある。また必要とする知識は一定の場所や一握りの人々の頭の中だけに蓄えられていてはならない。

実験的活動はコア技術ケイパビリティを引き出すが、より重要なことは、実験が新しいものを創造することである。企業を刷新する最も重要なエンジンの一つは新製品開発である。

以上のような内容で各企業の事例を交えて論じられている。ますます不確実性が増す時代にあって企業には思いきったイノベーションが求められている。

本書は、組織の知識とその活動の源泉を問い知識優位をもたらす組織の本質に迫るものである。


北原 秀猛

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キーワード
•  コア・ケイパビリティ
•  コア・リジディティ
•  イノベーション


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