ノースウエスタン大学大学院ケロッグ・スクールが誇る23人の豪華執筆陣により書かれ、執筆者の一人でもあるドーン・イアコブッチが編集したものである。
経営をめぐるパラダイムは情報通信革命の到来とともに大きく変革し始めている。その変化にはいくつかあるが、とりわけ大きい変化は、企業と消費者、あるいは市場の関係である。従来は、企業側が主体的に市場に商品やサービスを供給し、消費者はその中から受け入れてきた。しかし、今やこの関係が「市場や消費者が企業を選択する」というまったく逆になりつつある。
本書は、4部17章に分かれている。第1部「戦略」は顧客と市場をどう捉えるか、というマーケティングの基本を問うものである。第2部の「理解」は定性的、定量的に顧客と市場を理解するものである。第3部「実行」はマーケテイング・ミックスの実行に関わるさまざまな設題をカバーする。最後の第4部「進化」は情報化の意味を改めて問うものである。このように全体の構成がマーケティング分野を体系的に網羅していることに加えて、新たなコンセプトが提唱されている。
また、マーケティングの新しいパラダイムについて、マーケットの変化の速度がマーケティングの変化よりも速いので、ほとんどの企業のマーケティング戦略が時代遅れになっている、と指摘している。
利益を確保するために企業は主にコスト削減を行ってきた。従業員の削減もしている。しかし、コスト削減ができても売上を増やすことはできない。そこで、製品カテゴリーの成長が鈍化している時、競合他社のユーザーをターゲットにするのは有効な戦略である、など例を用いて分りやすく解説している。
また、成功する販売組織のあり方、プライシングの戦略、戦略的競争優位のための新製品開発などについて具体的に説明している。さらに、今日の社会と企業がもつ発想との食い違いも指摘している。我々の社会は急速に情報化社会を迎えつつある。その一方で我々の思考プロセスは、依然として工業化時間のままでとどまっている。情報化時代のビジネスやマーケティングは非常に異なる原則に則って行われるようになったため、工業化時代の発想を続ける企業は、市場におけるリーダーシツプ競争に敗れるであろう、と述べている。非常に参考になるアドバイスが多くあり、価値のある本である。
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