ハーバード・ビジネススクールの機関誌である「ハーバードビジネスレビユー」の名著論文を編集したものである。1章から7章に区分され、世界的に活躍している企業例をふんだんに取り入れて分りやすく解説している。
例えば、スウェーデンのイケアを取り上げ、通信販売の家具屋から世界最大の総合住宅設備小売業者に躍進した理由を明かしている。同社が顧客に対して提供しているのは低価格だけではなく、まったく新しいタイプの分業思想の提案である。部品の組み立てや顧客までの配送は、従来のメーカーや販売業者がやってきた主要な作業の一部である。これを顧客自身に引き受けてもらうことにより、イケアは良質のデザインの製品を思い切った低価格で提供し、躍進することができた。
我々が普段よく利用するATM機を考えてみると良い。銀行に足を運ばなくてもよく、銀行の窓口とは違い自分で機械を操作しなければならないが、場所と時間の制約が取り払われて大変に便利になり、顧客には喜ばれている。同じことをイケヤは実行したのである。
- 顧客が提供された価値の密度の濃さを生かして「彼ら自身で」価値を創造するようにしむけること。
- もはや単一企業がすべてを提供できる時代ではなく、最も魅力的な提供作品は顧客とサプライヤー・パートナー企業などが新しい組み合わせでかかるもの。
- 競争上の優位を築く唯一の源泉は価値創造システム全体を構築し、それを上手く機能させる能力である。
この本の根底に流れるものは、価値付加型から価値創造型企業への変革を促すものである。経営戦略とは、価値を創造するための術策である。経営戦略とは、第一に企業をバリューチェーンの正しい場所、すなわち正しいビジネス領域、正しい製品と市場のセグメント、正しい付加価値活動に位置つけるための術策である。
会社の最も基本的ニーズは適正利潤を上げて生き残ることである。そのためには、研究開発、調達、生産、マーケテイング、流通、アフターサービス・・・一連の流れはそれぞれの工程ごとに付加価値を追加していく過程であり、これがバリューチェーンで企業の競争戦略上極めて重要な役割を果すものである。
われわれ企業人としてこれらの思考から学ぶものは多くある。
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