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大前研一 新・資本論表紙写真

大前研一 新・資本論 〜見えない経済大陸へ挑む〜

著  者:大前 研一
出 版 社:東洋経済新報社
定  価:2,000円(税別)
ISBN:4−492−52122−4

本書は2000年6月にアメリカで出版され、その後12カ国で翻訳出版されている。

著者はニューエコノミー時代を「見えない大陸」と名付け、この新大陸を開拓せずして国も企業も、また個人も生き残ることは出来ないと説く。新しい経済とは、経済のボーダレス化、サイバー化、マルチプル化であり、この現実を理解せず古い道具で困難を克服しようとしてもうまくいくわけはない。

今の経済が本質的に「貸席経済」だと言う点に気が付けば我々の貴重なお金を使って景気刺激をする愚かさも理解出来るだろう。逆に国境を越えて世界中からのお金、企業、個人、情報が日本に来たくなるような開放経済という環境をつくれば「世界を呼びこんで」繁栄することができるのだ。自分の国、自分の会社だけを見ていては現在のように「経済原則」が激しく変化している場合には、視野が狭くなりすぎて有効な解決策が出てこない場合が多い。

著者は見えない大陸を構成する要素として次の4つを挙げている。

  1. 実体経済の空間:従来から存在する実体経済の空間で行われるビジネスや政治活動は、他の経済空間との相互関連という点で非常に重要な役割を果たす。しかしこの実体経済の空間だけでは、現実社会を十分に反映できないケースがますます増えてきている。
  2. ボーダレス経済の空間:ボーダレス空間の経済は国民国家の概念とは全く結びつかない。見えない大陸で旧世界に存在している、数えきれないほど多くの組織、団体、個人が国境を越えて横断的なつながりを持つことがたやすくなった。ボーダレスであるということは、見えない大陸の定義の一部を構成しているばかりでなく、見えない大陸自身がボーダレス化を加速させているのだ。
  3. サイバー(cyber=電脳)経済の空間:例えば必要な映像を送信する能力のあるコールセンターによって何か助言が必要になれば、顧客の自宅のテレビや携帯電話のスクリーンにアドバイザーが登場し適切な助言を与えるということが可能になっている。携帯電話は電子財布として持ち歩け、どこへ行こうとサイバー経済の空間からの支援が受けられる。
  4. マルチプル(multiple=倍率)経済の空間:見えない大陸に関わる資金総額自体が巨額であり、さらにこうしたマルチプルとそれを利用したデリバティブが、国境を越えて異なる通貨に転換されて移動するという性格を持つことで、政府や企業はもちろん投機家にとっても見えない大陸というものは空恐ろしくなるほど、つかみどころのない存在となっている。例えば、高いマルチプルという高水準の株価を使ってアマゾンドット・コムは利益ゼロでありながら株式交換を使って他の企業をいくつも買収することを可能にしている。

我々はニューエコノミーの時代に足を踏み入れている。前述のように、ニューエコノミーの特徴はサイバー経済、マルチプル経済、ボーダレス経済などの新しい要素の組み合わせにある。その新大陸の特徴は4つある。

  1. 新大陸にはIT革命により国家間、企業間を問わず、あらゆる境界を越えて簡単に情報が移動することが可能である。情報が自由に流れることで、見えない大陸は、商品、知識、サービス、資本をすべての境界を越えて交換できる能力を持つようになった。
  2. 新大陸は物理的な土地が存在しないために入っていくのは簡単なのだが、本当に簡単だと感じられるのは、古い考え方を喜んで捨てられる者のみに限られるという点である。
  3. 見えない大陸は今でもその管理体制やインフラが開発途上にあるということである。このことに気が付いた人がいるとすれば、この分野で自分の領地をものにすることができ、後から侵入者が現れたとしても、その領地を奪い取られることはまずないだろう。
  4. どの開拓地にも共通しているものであるが、新大陸での価値観は、非常に個人的な価値観を基本に形成されているということだ。

「見えない大陸」に挑戦するためには2つの基本ステップの実銭が不可欠である。

  • 第一ステップ:オールドエコノミーの固定概念から自由になること。国家や地域にとってグローバル経済と協調できるようなシステムを整えるために規制緩和をすすめ、過度期にふさわしい政策を段階的に実施することが必要になる。国家主導型から消費者・市民主導型の社会へ移行し、生活者がそれぞれに選択できる余地が与えられなければならないのである。
  • 第二ステップ:「見えない大陸」でサバイバルするための準備をすること。国家にとってしなくてはならないのは、教育における重点ポイントを改め、法律を書き直し、サイバー社会に対応したインフラと金融システムを再構築することである。企業にとっては、ネットワーク型、ウェブ型の組織を作り上げることである。既存の組織を変えていくことが極めて困難になるならば、会社そのものを新しく更地につくり出すことが必要となるだろう。個人にとっては、新大陸で急速に常識となりつつあるスキルや言語能力を身に付け、世界中のどこへ行っても生活できるようにすることである。

新大陸で他の国が羨む地位を獲得するには、第二ステップへの移行が欠かせないが、第一ステップを飛び越えて第二ステップへは進めないのである。


北原 秀猛

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•  見えない経済大陸
•  大前研一
•  貸席経済
•  サイバー経済
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