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若きサムライたちへ―自分を生きる10のメッセージ表紙写真

若きサムライたちへ―自分を生きる10のメッセージ

著  者:中谷 巌、田坂 広志
出 版 社:PHP研究所
定  価:1,300円(税別)
ISBN:4−569−61831−6

著者の中谷巌氏はご存知の方も多いと思うが、一橋大学教授からソニーの社外重役に就任したことがきっかけで転身し、現在は多摩大学の学長と三和総合研究所の理事長を兼務している。田坂広志氏は東大大学院で工学博士を取得後、アメリカのシンクタンク・バテル記念研究所の客員研究員を経て現在日本でシンクタンク・ソフィアバンクの代表を務め、また、多摩大学大学院で教鞭をとっている。この2人の書いた本はほとんど読んでいるが、それぞれの本を通してその人柄が伝わって来るような素晴らしい方々である。

さて、この本のタイトル「若きサムライたちへ」をつけた理由として田坂氏は、武士道の精神を語った書「葉隠」を紹介している。武士道の精神の真髄は「武士道とは、死ぬことと見つけたり」。この言葉がわれわれに教えようとしているのは、究極「死生観」の大切さです。そうである限り、いかなる思想をも超えてわれわれが本当に考えるべきは「いかに死ぬべきか」である。そのことを深く考える精神をもたない限り「いかに生きるべきか」に対する答えは決して得られない。そこで「いかに生きるべきか」を考えていただくためのメッセージを熱い思いを込めて書きました、と述べている。

社会が安定しているときは、安定した生活基盤をつくることは比較的容易であるが、世の中が不安定になってきた今日のような情勢の中では、個人がよほどしっかりした考え方と行動のスタイルをもたない限り、自分の思うような生活を送ることは難しい。

中谷巌氏は「一度何かに深くはまってみることが大事」と説く。彼は「1万時間説」を唱えている。1万時間とはどれくらいの時間か。土日は休むとして、1日8時間、週5日は一生懸命努力するとして、1年250日で計算すると、2000時間、5年それを続ければ1万時間になる。1万時間一つのことを徹底してやってみると、研究者でも、プロゴルファーでも、マラソンランナーでも、あるいは企業の財務の専門家でも、その分野ではかなり注目に値する能力を身につけることができるはずだ。大リーグで活躍しているイチロー選手にしても、シドニーオリンピツクで金メタルを獲得した高橋尚子選手にしても、その道で死に物狂いで努力した人は鉱脈を堀当てている。そして、その鉱脈はどれも相通じるものがある。だから、彼らはテレビでインタビューを受けても非常にインプレッシブ(印象的)なことを私たちに伝えることができるのだ。

中谷巌氏がアメリカのハーバード大学大学院で学んでいた時の恩師にノーベル賞を受賞したケネス・アロー教授がいた。その教授がノーベル賞を受賞した時に次のような言葉を述べている。

「学問というものは直感や思いつきで「こういうことではないか」「ああいうことではないか」と思っていても、体系的に分析してみると思いもかけない結論に行き当たることがある。私が経済学を研究しているのは、そういう直感や思いつきでは決して到達できない一つの興味深い結論を見出すためである」

中谷巌氏は直感や思いつきは重要なことだけれども、それだけに頼ってはいけない。それが本当に現実的な意味をもちうるか、社会のためにプラスになる考えか、厳しい検証を行って確認しなければならない。それがケネス・アロー教授の教えであり姿勢の表れなのだ。広げて考えれば、常に自分というものを謙虚に見ながら、本当にそれでいいのだろうかと常に検証しなさいという教えである、と述べている。

田坂広志氏は「知の世界は風船に似ている」という。風船の中に新しい知識や知恵を吹き込んでいくと、ますます風船の表面積は広がっていく。その結果、未知の世界との境界面はますます大きくなっていく。つまり、知れば知るほどますます知らないことが増えていく。これからは、「スーパージェネラリストの時代」がやって来ると言う。それは、今しばらくは「スペシャリストの時代」が続き、多くの人々がスペシャリストになり、それが溢れてくると、その先はスペシャリストをコーディネートする「スーパージェネラリスト」が必要になるというのである。田坂広志氏は多摩大学大学院で「経営情報論」や「経営実務」の教鞭をとっているが、実際には本来の授業内容からしばしば脱線し、「大学で何を学ぶか」「大学でいかに学ぶか」「何のために働くのか」「いかにして働くべきか」といったテーマで語り、さらには「いかにして成長していくか」「この人生をいかに生きるか」といったテーマを語り続けていると云う。素晴らしいことである。もし、筆者も若ければ田坂広志氏の授業を受けたかったと卒直に思う。この一冊の本を通して人間としてどうあるべきか、どう生きていかねばならないか、など自分自身を見つめなおすためには素晴らしい本である。一読をお勧めしたい。


北原 秀猛

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