ルネッサンス――それは復興を意味する。歴史的には、14世紀から16世紀にかけて、ヨーロツパで文化と芸術が復興した時代を指す。
著者のカルロス・ゴーンはレバノン人でブラジル生まれである。78年、ミシュラン社に入社。ブラジルミシュラン社長、北米ミシュラン社長を経て、96年にルノー社にスカウトされ上席副社長、のち99年日産自動車最高執行責任者(COO)、2000年6月に社長に就任。47歳。彼はポルトガル語、フランス語、英語を自由に操ることができる。言葉というものは、思考の衣装のようなものだと言う。思考が他の言葉で通訳されれば衣装の何らかの手触りが失われる危険性がある。通訳された側の人間には通訳者が伝えたことしか伝わらない。この言葉は筆者も同感である。
さて、ゴーンの哲学的言葉を拾うと次のようなことが書かれている。
- 収益の上がる会社にしたいなら、マネジャーには問題の核心を見抜く能力が不可欠だ。
- どんな問題でも核心を見抜くことができれば解決できる。「解の無い問題はない」
- 経済が極度の混乱に見舞われている時期に、経営者に必要なのは、絶え間ない監視と分析である。
- ビジネスの世界では、会社の業績にどれだけ貢献できたかがゲームのすべてである。
- 重視すべきは年齢や経験ではなく、貢献度と業績の卓越性である。
- ビジネスはプロセスをきちんと踏まなければならない。
- ビジネスはビジネス原則を守ることが大切だ。
- 小さい企業が大企業と競争しようとするなら、常に最高の状態を保ち、新たな課題や市場の変化に遅れをとってはならない。
- 重要な決断を下す際には燃え盛る甲板(プラットホーム)が不可欠だ。
- マネジメントの責任とは、会社の持つ潜在能力を開発し、それを100パーセント具現化することだ。
- 適切な決断を下しているかどうかを確認するためには、明確な全体像が必要である。
- 経営トツプは責任を持って、優先順位が正しく守られるようにしなければならない。
- 痛みを先送りしてはならない。
- 断固たる決意が人を動かす。
- 文化的相違はイノベーションをもたらす。文化的相違を弁解の口実にしてはならない。
以上のような思考の基で日産の経営再建に成功している。かつて日産がしがみついていた考え方とやり方は、グローバル市場の試練と必然性によって時代遅れとなり、日産には倒産の危機が訪れた。社員の多くは変革の必要性を感じていたが、これまでのしがらみに縛られて有効な手を打つことができなかった。日産ルネッサンスは、変革の必要性を痛感し、進んでリスクを引き受けた人々の物語である。ゴーン流のスタンスは、試練を恐れない。危機的状況に対応できる。仕事には緊張感を求めるものであり、このスタンスが日産のルネッサンスを成功に導いたと言える。ルノー社に移籍したときも3年間で200億フラン(約24億ドル=3000億円)の削減テーマを上げ、社員が出来るわけがないとたかをくくっていたこの課題をクリヤしている。日産においても1999年10月18日、日産リバイバルプランを発表、<コミットメント必達目標>、<主要リストラ策>、<資源の再配備>など9つの目標を掲げ、結果として1年早い2001年3月31日までに達成している。利益の黒字化達成という目標が連結営業利益290億円という結果になった。
また、ゴーンはアメリカとフランスに住を構えた経験から、アメリカ人とフランス人の思考をうまく言い当てている。「一般にアメリカ人は、個人の業績に関心があるが、フランス人は、雇用保証を重視する。アメリカ人は数字を重視し、利益志向が強く、手っ取り早く核心に迫ろうとする傾向がある。フランス人は非常に分析的で物事や問題をさまざまな視点から論じ、量より質、業務遂行より戦略を重んじる」と述べている。
自分なりの信念に基づいた哲学を築いた人間は立派であるし、その生きざまは心の刺激になる。1時間程度で読める本であるので是非参考にして欲しいものです。
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