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サラリーマンIT道場

著  者:大前 研一
出 版 社:小学館
定  価:1,500円(税別)
ISBN:4−093−87377−1

日本は「IT戦略会議」だの「e-Japan 計画」だの、掛け声やスローガンだけは大仰だが、個人を磨く以外には国全体として富を創出したり呼び込むことができない、という肝心なことが明言されていない。ネットワーク社会では個々人が力をつけないと話しにならない。しかもその個人は日本人であれ何人であれ、世界を相手に商売できなかったら話にならない、ということがわかっていない。

ネットワーク社会で富を創出するためには、世界中の人にお金を払ってもらえるような知的生産物を生み出していかねばならないのだ。これがネットワーク社会の醍醐味である。

これから先、日本がネットワーク社会で栄えていくためには、教育が3つのレベルで根本から変わらなければならない。第1に語学、第2にITリテラシー(情報技術能力)、第3に知的付加価値を生み出す頭脳(論理思考力と構想力)である。

工業化社会は1億2000万人の日本人を食べさせるのに十分な力を持ったが、ネットワーク社会において1億2000万人をどうやって食べさせていくのか、と言う問題については、まだ答えが見つかっていない。

本書は1部と2部に分れており、第1部[ITニュース編]“夕刊フジ”に著者が毎週執筆しているコラムの元原稿を題材に、著者が注目するニュースを提供している。

第2部[IT人物編]では、シスコシステムズなどの注目すべきIT企業や世界の音響メーカー・BOSEなど、21世紀のIT時代に向けたユニークな企業戦略、経営トップの仕事に対する取り組み方が紹介されている。

ITとは、つまるところコンピューターとネットワークの織り成す世界である。ネットワークは世界に広がるから国境がない。ITを景気刺激策ぐらいに思って推進している日本の産業界や政府筋は何と言うのだろうか?ITは従来のやり方から脱却できない。「日本株式会社」の命取りにさえなるのである。

“ReBoot”=リブートとは、パソコンなどでフリーズしたり混乱した時に、一度電源を切って立ち上げ直すことを言う。パソコンを使う者であれば誰でも経験があると思うが、ゼロから出発する気持ちで21世紀に取り組まなければならない。パソコンなどのネットワーク端末はメガネのようなものだ。世の中をよりはっきりと見たり確かめたりする道具、と言う意味においてだ。ネットワーク社会で日本が(吸収ばかりする)ブラックホールになるのではないか、日本はもの作りは得意だが、ものを言うのはあまり得意ではない。しかし情報を受信しても何も発信しなければ、それはネットワーク社会における構成要員とはならない。無視されるだけである。そうならないためには、誰が聞いても“なるほど”と言う分析力と論理思考力を身につけること、誰も考えたことがないような発想力、構想力、着眼点などを重視すること、である。政治家や株屋が何と叫ぼうが21世紀は「ITの世紀」であり、ネットワーク社会になっていくのである。

工業化社会では大活躍した日本の技術者だが、IT時代になると事情は一変する。まず絶対数が足りない。現在、日本でIT技術者と考えられる職種に従事している人は約100万人と推計されている。そして不足者数も、やはり約100万人とみられている。しかも、最近は理工系学部の入学者が減っているので、今後飛躍的に増える可能性なない。もうひとつの根本的問題は、最新のパッケージソフトは英語で書かれていることだ。要するに、日本は内部での人材の養成も、外部の人材の使い方も、また外国人材の招聘も、まったくお手上げの状態なのだ。日本がIT先進国になろうとするなら、いの一番にやらなくてはならないことは人材の養成と確保だということを、アメリカとの対比で真剣に考えてもらいたいものである。

経営者自らがITを用いた経営革命の先頭に立たなければ、投下資本は回収できない。しかも、技術に振り回されるのではなく、経営のツールとしてネットワーク系の構築を推し進め、顧客の引き留めを廉価に行っていかなくては競争に勝つことは出来ない。CRM(顧客との関係の管理)、SFA(営業部隊の支援ツール)、CTI(顧客と通信回線を通じての接点の管理手法)などが注目され、優れたパッケージソフトが世界中で飛ぶように売れているのは偶然ではない。

IT社会で一番必要となるのは身分証明である。誰かが“なりすまし”をして他人を攻撃したり、買い物をしたり、許認可をとったりしてしまう危険性があるからだ。著者は、“本籍コンピュータ”の電子戸籍法を作れと提案しているが、その後何の進歩もしていない。

ITを景気回復のカンフル剤ぐらいにしか考えていない今の日本政府では、いくら金を遣っても将来につながる新しい社会は生まれてこない。今の中国の恐ろしさは、かつての日本が持っていた恐ろしさでもある。それは、遠い将来を見据えたそのビジョンの実現にまっしぐらに取り組んでいる人間、その成功に疑いを持っていない人間だけが持つ勢いを感じさせるのだ。日本ではまだITで何をするのかはっきりしていない。光ファィバー網で全国4000万世帯にブロードバンド・ネットワークが2005年までに敷設されると政府は言うが、それで何をするのか、と言う議論がない。中国・遼寧省の大連および瀋陽ではそれが明確だった。サラリーマン諸君!あなたは中国の挑戦に耐えられるような付加価値のある仕事をしているか?

ブロードバンドとは何か。一般には伝達速度が1Mbps(毎秒メガビット)以上の容量を持つ双方向の伝送路をさしている。電話線を使ってやるのがADSLとかDSL(デジタル加入者線)と呼ばれている方法である。人口密集地のそばまで光ファィバーを使い、DSLAMという配線中継所から各家庭に届ける。家庭側には機器に接続するための受・配信機が必要である。中途半端な「iモード」ではあきたらず、パソコンで本格的なインターネットをやりたいという人が増えている。だから、固定電話を持たない人々は携帯電話経由で本格的なインターネットの世界へと入っていくだろう。

今、インターネット・ビジネスで一番有望だと思われているのが遠隔教育である。「南カリフォルニア大学」とオーストラリア「ボンド大学」のMBAコースで、インターネットと衛星放送を使った双方向の授業環境を実現している。ITはスポーツや音楽と同じで、好き嫌いもある。それでいいのだ。好きな子が若いうちからうんと伸びて、世界のトップクラスの人材と競ってくれるようになればいいのだ。あとの子たちは使えるようになればいいのであって、これは自転車に乗るようなものである。つまり、早くから慣れることが肝心で、試験をして詰め込む性格のものではない。ITの本質は、物事の本質を明らかにしてしまうことである。一方で戸籍がコンピュータに収まり、投票が電話やパソコンで出来るようになるであろうことは誰でもわかるだろう。そうなると、国民による直接投票が可能になる。今のように総選挙1回につき700億円もかけてやる必要はなくなる。現在は投標率が低いので組織標を持っている候補者が有利だが、今度はそうはいかない。国民の半数以上が「なるほど」という政策と実績を掲げなければアウトである。小泉首相の持論は郵政3事業(郵便、貯金、保険)の民営化の問題もやがてIT時代には確実に淘汰される。

以上のようにITの発達により、日本における従来の思考、やり方ではわれわれも生きていけないことがわかる。ビジネスの基本は変わる環境変化、そのなかで消費者一人ひとりの違ったニーズにフォーカスしていかなければレッドカードを突きつきられるだろう。

ドッグイヤーといわれる今日、ものすごいスピードで環境は動いている。革新とは昨日までのやり方を切り捨てていくことだ。この覚悟と実践力が求められている。


北原 秀猛

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•  IT戦略会議
•  e-Japan 計画
•  ブロードバンド
•  郵政3事業
•  ドッグイヤー


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