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勝利者表紙写真

勝利者 〜一流主義が人を育てる、勝つためのマネジメント〜

著  者:鈴木 智之
出 版 社:株式会社アカリFCB・万来舎
定  価:1,500円(税別)
ISBN:4−901221−06−X

鈴木智之氏をご存知という方は、アメリカンフットボールに興味をお持ちの方以外では少ないと思うが、しかし、知る人ぞ知るという、アメフトの世界では有名人である。関西学院大学中、アメリカンフットボールのクオーターバックとして甲子園ボウルに出場、4年連続全国制覇に貢献。1998年よりアサヒ飲料クラブチャレンジャーズ・スペシャルアドバイザーを務める。1990年、ドイツのワイツゼッカー大統領より国家功労勲章「一等功労十字章」を受けている。また、米国オレゴン州アッシュランド市民名誉市民でもある。

鈴木智之氏は、幾つかのチーム強化の手伝いをしてきた。その強化したチームが軒並に収める結果を生んだ。しかし彼は、「この成功は私ひとりの手腕ではなく、多くの人の力が結集して成し遂げられたものです。そして、そのバックにはアサヒビール名誉会長の樋口廣太郎氏の大きな存在がありました」と述べている。

本書は序章、第1章から第5章に区分されて、それぞれの章ごとに具体的に、勝つためにはどうあるべきかを解説し、鈴木智之氏自身が経営者であることもあって、経営の根幹についてもスポーツを通して触れている。「勝つ味を知らないチーム」の弱点を拭い去ることは簡単ではない。勝てなければ自信は生まれない。結果が出ないチームには、人間性に問題がある選手がいる場合が多い。「誰でも一流になる可能性は持っている。能力の引き出し方、活かし方が分らないだけ。それを引き出す環境を作ることで、遠いと思っていた目標にも手が届く」。力を引き出すには、できるだけ大きな目標をぶちあげ、すぐにでも挑戦させるようにする。そして目標達成には何が必要なのか、共に考える。そうすることで組織は変わるきっかけを掴むことができる。最初の勝負どころで目に見える成果があがらなければ、その勢いはしぼんでしまう。「ああ、また同じか。やっぱりダメなのか」と思ってしまう。組織を活性化させるために、良いと思えることを、先手を打つように取り入れていく。

一流を目指すと言う意識は、人間が生きていくうえで持っていなければならない。「自分は一流だ」と言う意識が持てれば、日々を漫然と生きることはない。プライドも生まれる。人生も豊かなものになる。一流を知ることによって、他の分野の一流のすばらしさもより深く理解できるようになる。そして、謙虚にもなれる。一流とは一つの道を極めることなのだ。

フットボールには事前の情報収集・分析は欠かせない。勝利の原点にあるのは常に基本、原理原則を知るところからスタートする。ゲームの目的はボールを蹴ったりするのを見せることではない。自分にとって有利な味方にパスをし、それを繰り返してゴールに近づき、得点を決めることだ。ビジネスの本質と、スポーツの本質は全く同じだ。この仕事は世の中にとって、どんな位置付けでどんな価値があるのか。何に対して顧客は対価を払い、会社は利潤を得るのか。これを見つめ直すことを組織に徹底させる。また、スタッフには、自分はここでどんな役割を果せるかということから、この仕事をすることは自分にとってどんな意味を持つかといったことまで考えるようにしむける。ここで考えておかなければならないことの一つは、人間は気合を入れられ、高揚感を持ったときには、「死ぬ気で頑張ろう」と思えるが、日常に戻ると「それに何の意味があるの」と思うことがあることだ。

本書の目次の中で素晴らしい文章を紹介する。

  • 変化の流れを作るにはスピードが大切(考える暇を与えない矢継ぎ早の改革を)
  • 数ランク上に挑むことで得る自信(同じ土俵で戦っていては壁は突き破れない)
  • 組織の気持ちをひとつにする(全体があってこそ個は輝く)
  • 意識改革を促すために(人を奮い立たせるキーワード)
  • 情報は重視するが躍らされない(情報の取捨選択能力を磨く)
  • 意欲が自分を伸ばす(弱点を克服するための糸口をつかむ)
  • 環境を変えると見えてくるものがある
  • 質を追い求めてこその事業(好きなことを仕事にすれば頑張れる)
  • 勝利を得るカギは“感性”にあり(人の感性を磨くコツ)
  • 一流の人物に接する(人脈づくりのヒント)
  • 人は財産である(人間関係を大切にする発想)
  • 家族あっての自分であることを知る(家族を紹介することの効用)
  • 人は短期間で驚くほど成長する(人間の可能性を信じること)
  • 起死回生の秘策を決めるには(他者に先んじる努力をした者が勝利をつかむ)
  • 夢をつかむには犠牲も必要だ(いま、何をすべきか見極める力)
  • 戦いは勝たなければならない(勝利を願う気持ちが向上心を生む)
  • 布石を打つことの重要性(成功を信じてやることに無駄はない)
  • チャレンジを続ける精神(日々チャレンジの気持ちが勝利者への道)
以上である。

著者は大変に魅力ある人物と見え、著者ご本人も「私はいい友人に恵まれたことが自慢のひとつです」と述べているように、歌舞伎の市川猿之助、指揮者である岩城宏之、元アサヒビール社長の樋口廣太郎氏をはじめ、外国にも知人を多くもっている。やはり指導者は人間的魅力を持つことが必須条件である。それを兼ね備えた経営者でもある著者が、自分の人生経験を踏まえて一流主義を教えてくれる。指導者を目指す人にとって、また、企業幹部にとって一読をお勧めしたい。


北原 秀猛

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•  一流
•  リーダーシップ


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