HOME
会社概要
セミナー
教育関連
海外情報
書籍
お問い合わせ
ワールドネット
HOMEUBブックレビュー詳細





知的プロフェッショナルへの戦略表紙写真

知的プロフェッショナルへの戦略
 知識社会で成功するビジネスマン11の心得

著  者:田坂 広志
出 版 社:講談社
定  価:1,500円(税別)
ISBN:4−06−211153−5

田坂広志氏が以前、共著でお書きになり、ビジネス社より出版された「外資の戦略思考に学べ」の内容と合致するところが多いが、ビジネスマン11の心得と題がついているように新鮮な気持ちで読める本である。

◆第1話:「ナレッジ・ワーカー」でなく「知的プロフェッショナル」をめざせ

これからやってくるのは「ナレッジ」(知識)というものが最大の経営資源になる「ナレッジ・キャピタリズム」(知識資本主義)の時代である。そこで、「求められる人材」とは、これからの企業や産業や社会が「労働力」として欲する人材である。一方、「活躍する人材」とは、これからの企業や産業や社会で「指導力」を発揮していく人材である。すなわち、「知的プロフェッショナル」である。これからの知識社会で活躍する人材になるためには、「仕事で体得した職業的な智恵」や「職場で獲得した職業的な体験」を身につけていなければならない。

◆第2話:「知識の流通革命」が始まり「中抜き現象」が起こる

いま、時代がむかっている方向、社会が向かっている方向、それを深く読んでおくことが必要である。流通革命の鉄則は、「中間業者は不用になる」。この環境下で身につけることは、「メタ・ナレッジ」(方法知識)である。それは「知識を学習するための知識」「知識を編集するための知識」「知識を創造するための知識」である。

「職業的な智恵」は、時代が変化しても陳腐化しない。「職業的な智恵」は、経験を積めば積むほど深まっていく。

◆第3話:「知識資本主義」の時代は「勝者一人勝ち」の時代となる

これからの知識資本主義の市場においては、「勝者一人勝ち」、「優勝劣敗」が起こる。市場において「一人勝ち」が生じるように、企業においても特定の人材の「一人勝ち」が起きる。それは、一人の優秀な人材に、「多くの仕事」、「優れた諸評価」、「新しい機会」が集中するという現象が起こる。いま、インターネットがブロードバンド技術の出現によって、「知識の流通革命」を徹底的に推し進めていく。それは、会議を進化させるからである。その理由は(1)「空間的制約」、(2)「時間的制約」、(3)「費用的制約」である。

◆第4話:「知識社会」では「収穫逓増」のキャリア戦略を取れ

「収穫逓減」とは、市場に対してマーケティング費用を順次投入していくと、最初は、マーケティングの効果が現れて販売高が伸びる。しかし、徐々にマーケティング費用を増やしても販売高が増えないという傾向が生じ、遂にはいくらマーケティング費用を投入しても、販売高が少しも増えないという状態になることである。一方、「収穫逓増」とは、市場に対してマーケティング費用を順次投入していくと、費用を投入すればするほど販売高が増える傾向が生まれる状態をいう。

◆第5話:「キャリア戦略」には「波乗り」の戦略思考が求められる

経済や景気の上下、市場や産業の盛衰といった市場環境の変化の波や、企業の吸収や合併、買収や売却、起業や倒産といった企業環境の変化の波を乗りこなしながら、自分のめざすキャリアの方向感覚を失うことなく、しかし、具体的なキャリア戦略は柔軟に修正しながら、前に向かって進んでいくと言う思考のスタイルである。

◆第6話:「自己投資の戦略」における「三つのポイント」を誤るな

(1)「何を投資するか?」、(2)「何に投資するか?」、(3)「何を投資の成果とするか?」である。「時間」という「資本」や「資産」をどう使っていくかということこそが、「自己投資」の戦略において極めて重要である。

◆第7話:「師匠」を見出し「ディープ・ナレッジ」を学べ

個人における「ナレッジ・マネジメント」を実行するためには、3つの心得を身につけることだ。(1)ある仕事やプロジェクトに携わって働いたとき、ただ「色々と勉強になった」、「学ぶことが多かった」という感想のレベルで終わらせず、具体的に何を学んだのかを言語化することである。(2)その仕事やプロジェクトを通じて学んだことが「専門的な知識」なのか、「職業的な智恵」なのかを区別することである。(3)こうして区別した「専門的な知識」と「職業的な智恵」のうち、後者の「ナレッジ・リターン」を意識的に増やしていくことである。そして、「ディープ・ナレッジ」を身につけるために、よき師匠を見つけ、師匠から体得することだ。

◆第8話:「傾聴力」と「反省力」という「メタ・ナレッジ」を身につけよ

「メタ・ナレッジ」とは知識や智恵を学ぶための方法である。それには3つの方法がある。(1)書物や映像などの知識や智恵を伝える媒体から、その知識や智恵を学ぶための方法。これは、「探索力」と呼ばれる「メタ・ナレッジ」である。(2)識者や師匠などの知識や智恵を持った人物から、その知識や智恵を学ぶための方法で、「傾聴力」と呼ばれる「メタ・ナレッジ」である。(3)仕事や生活などの自分自身の主体的な経験から、その知識や智恵を学ぶための方法。これは、「反省力」と呼ばれる「メタ・ナレッジ」である。

◆第9話:「智恵の等価交換」と「共感」のネットワークを築け

そもそも他人の智恵というものは、「智恵を借りる」という言葉に象徴されるようにいつか「智恵を返す」ことが前提となっている。

◆第10話:「個人カンパニー」の時代には「個人ブランド」を生み出せ

ビジネスマンが働くことによって得られるリターンには、マネー・リターンの他に4つのリターンがある。

  1. ナレッジ・リターン=知識報酬
  2. リレーション・リターン=関係報酬
  3. ブランド・リターン=評判報酬
  4. グロース・リターン=成長報酬

これまでの時代は、ビジネスマンのアイデンティティは、いかなる大企業に属しているかや、いかなる有名企業で働いているかだった。これからは、日本の企業社会においては、大企業の終身雇用制が崩れ、中小・中堅企業への転職や、ベンチャー企業の創業などがビジネスマンにとって自然な選択肢になっていく。そして、一人の知的プロフェッショナルとして、「いかなる仕事をしてきたのか」や「どのような仕事ができるのか」に評価が移る。すなわち「個人カンパニー」の時代である。

◆第11話:「パーソナリティ」こそが「最高の戦略」となる

われわれは「成長」(growth)というリターンを忘れてはならない。我々は仕事を通じて成長していく。「自分自身」が究極の作品である。そして、優れたパーソナリティを身につけた知的プロフェッショナルの周りには、自然に、多くの人々が集まり、多くの智恵が集まるだけでなく、自然に多くの機会が集まり、多くの仕事が集まってくるのだ。

以上が本書の内容である。著者は常に、新しい視点で環境を捉え、新しい思考でわれわれに対し、いま行うべきことを具体的に教えてくれる。著者一流の眼力をもって、われわれに迫ってくる。そのため、著者の訴える一行一行の文章にわれわれは考えさせられながらも、一気に読まずにはおれない本である。知識社会で成功を願うビジネスマンは是非お読み戴きたい。


北原 秀猛

関連情報
この記事はお役にたちましたか?Yes | No
この記事に対する問い合わせ

この記事に対する
キーワード
•  田坂広志
•  ディープ・ナレッジ
•  メタ・ナレッジ
•  キャリア戦略
•  収穫逓増
•  収穫逓減
•  知識社会


HOMEUBブックレビュー詳細 Page Top



掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はセジデム・ストラテジックデータ株式会社またはその情報提供機関に帰属します。
Copyright © CEGEDIM All Rights Reserved.