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マーケティング・プロフェッショナリズム

編著・監訳:山梨 広一、菅原 章、梅里 慶子、日比野 智彦
出 版 社:ダイヤモンド社
定  価:2,000円(税別)
ISBN:4−478−50207−2

人材は企業の競争力の源泉である。マッキンゼーの研究によると、次代のリーダーの層が厚い企業は優れた業績を継続して達成可能であるということを示している。プロフェッショナル人材の基本要件は、「本質の理解」「技能の修練」「基本へのこだわり」の3つである。マッキンゼーのコンサルタントが大切にする価値観の1つに“Do what is right”というものがある。正しいことをきちんと述べ、行動しているかということである。

マクロ経済が低迷を続け、自社が対象とする市場にも飽和感が充満しており、これまでの事業モデルや戦略から成長や収益性の向上も生まれにくい。しかも、このような経営環境を反映して、自社の行動や風土も停滞している。多くの日本企業が、大なり小なり、このような状況を共有している。求められるのは「ブレークスルー」である。すなわち、殻を破り、新たな事業機会と成長を生み出し、企業の行動様式、さらには業界の行動様式を転換し、組織や人材を変革することだ。従来の枠や殻を破ることが日本企業の最重要課題であることは疑いようがない。自社の戦略が求めるプロフェッショナル人材をきちんと育成・活用できる日本企業は、停滞する市場や自社の殻を打ち破り、新たな発展を実現する「勝ち組」へのキップを手に入れる。本書は、産業分野を越えて多くの日本企業にとって重要性を増しているマーケティング分野におけるプロフェッショナルな人材づくりの基本となるであろう、マーケティングの各課題に関する本質的な概念と具体的な思考のあり方を集めたものである。

企業にとって成長は、欠かせないものであることはいうまでもない。それは、「株主価値の最大化」「顧客価値のたゆまぬ向上」「雇用の創出」を同時に実現させるという経営の連立方程式は、継続的成長なくしては解き得ないからである。1999年のデータによると、日本産業の労働生産性はアメリカの69%、資本生産性は61%というのが実態である。このような低い生産性の要因は産業によって異なるが、概ね、事業者数の過剰と小規模事業の乱立、流通構造の多層性とその効率性の低さ、過剰な商品やサービスなどが挙げられる。

要するに、日本企業の生産性の低さはその産業構造が生み出した産物なのである。では、需要創造型の成長に求められる要件とは何か。

第1に、市場を見る眼の転換である。従来と同じ観察力、すなわち競合他社と同じように市場を見ている企業に需要創造は不可能である。これまでは見えなかった顧客ニーズの違いや固まりを見出すことが需要創造の第一歩となる。

第2は、独自の視点で見つけ出すことは、顧客ニーズを充足するための手段を設計することになる。その際、その手段を商品やサービスだけに限定しないことが肝心である。

日本企業がプロフェッショナル・マーケティングを実践するには、数々の側面で、従来の「枠」を破ることが求められる。

今後、マーケティング活動を設計するにあたって、3つのタイプのインテグレーターが求められる。

  1. 消費者インテグレーター
    仕事の内容は、明確に特定できるエンドユーザーのセグメントに的を絞り、そのニーズを満たすことのみである。
  2. 顧客インテグレーター
    法人顧客と取引する企業、つまりエンドユーザーに商品を直接販売しない企業において必要である。法人顧客は個人顧客に比べると、往々にして要求が厳しく、価格交渉力も強力で、しかもニーズも細分化しているのが特徴だ。
  3. 商品インテグレーター
    特定商品を対象とすると同時に、クロスファンクショナルなリーダーシップが期待される。その仕事は、事業ユニットが消費者にしかるべき価値を提供するのをバックアップし、それぞれの商品カテゴリーが生み出す余剰利益を最大化することにある。

コスト削減はパートナーリングによる最もわかりやすい経済効果だが、逆に売上を増加させることも可能である。実際、成長を目的としたパートナーリングの事例は多い。アストラがメルクとパートナーシップを組んだのは、メルクの営業力をテコに、それまで目立った成功を収めていなかったアメリカという巨大市場に足場を築くためだった。まずメルクは、アストラがアメリカ市場で実施した12の調査プロジェクトから生まれた商品の臨床試験・登録・マーケティング・販売を担当することになつた。1989年、アストラとメルクがアメリカで発売した抗潰瘍薬のプリロセックは爆発的な売上を記録した。

パートナーリングは、「商品」(product)、「価格」(price)、「場所」(place)、「ポジショニング」(positioning)、「プロモーション」(promotion)、「パケージング」(packaging)、「人」(people)などと同じく、マーケティングの“P”に含めてよいだろう。

想像もつかなかったスピードで市場は変化している。その中で誕生したのが、「ベンチャー・マケティング・オーガニゼーション」(以下VMO)である。VMOは常に市場の最先端を走り、アメーバのように流動的に離合集散できる組織を組成しているばかりか、業績評価や意思決定には厳格さを求め、決して妥協したりしない。

  • ビジネスチャンスの開拓には全社で取り組む
  • トップダウンの意思決定にテクノロジーを活用する
  • 人材は職種ではなく役割を基準に採用する

<CRMを成功させる5つのルール>


(1)より良い商品とサービスを提供するために収集した顧客情報を活用すること
(2)ビジネスにおける「真のバリュー・ドライバー」に集中すること
(3)顧客との「緊密なリレーションシップ」を築くこと
(4)顧客を積極的に「差別化」すること
(5)資金力でなく「スキル」で勝負すること

真に効果的なCRMを展開するには、既存組織では考えられなかった方法で顧客価値を提供する必要がある。CRMを成功させるカギは以下の6点にある。

  1. 既存顧客と見込み客に関する情報の収集(購買履歴、プログラムへの反応、デモグラフィクス)
  2. 顧客一人ひとりの分析(購買行動にもとづいた顧客セグメント、レスポンス・モデリング、購買行動やイベントの引き金/インセンティブの定義、経済性に関する厳格な評価)
  3. マーケティング・プログラムの設計と開発(能動的な活動、反応的な活動)
  4. 統計的に証明できるテストの設計と実施
  5. プログラムの管理(商品やサービスの組合せ、マルチチャネル、顧客行動に反応したインバウンド活動、能動的なアウトバウンド活動)
  6. 結果に対する厳格な測定と分析の継続的な実施(データの収集、経済的な分析、ニーズと行動分析)

成功企業は、商品を選択・管理するのと同じく、顧客も選択・管理する。顧客の意思決定のパターンを予測することは、技術的に優れた商品プログラムを開発するのと同じくらい重要なKSF(Key factor for success:成功要因)である。

「真の顧客はだれか」「顧客が定義する価値とは何か」については全社的に取り組むべきである。R&Dや製造部門の社員、あるいはマネージャーさえも頻繁に顧客と接する必要がある。また、マーケティング部門は顧客情報を独占することなく、市場に関する理解が全社に広まるように努力しなければならない。

マーケティングの役割は、トップ・マネジメントに世界に開かれた「窓」を提供することである。もはや「マーケティングを志向する」だけでは不十分であり、「市場にフォーカス」し、目に見えるニーズやビジネスチャンスに即応すると同時に、潜在的な機会を活性化するように努めなければならない。市場にフォーカスする企業は、市場変化に敏感に反応するだけでなく、市場の動きも予測している。また、市場の反応を戦略的に探りながら、いつでも柔軟に対応できる準備も怠らない。マーケティングは、一般に次のような課題に応える職能と理解されている。

  • 商品やサービスはどうあるべきか
  • 商品やサービスをどのような形で提供し、どのように販売を促し、流通させるにか。さらに、商品やサービスの顧客価値をどのように維持するのか
  • どのように価格を決めるのか

マーケティングとは、総合的事業哲学であり、その目的は主要顧客グループ(セグメント)のニーズを特定し、利益率を向上させることである。さらに、ターゲットとした顧客グループを同業他社とりも効率的に満足させる商品やサービスのパッケージを設計・生産することである。

以上のように本書は、産業分野を越えて多くの日本企業にとって重要性を増しているマーケティング分野におけるプロフェッショナルな人材づくりの基本となるであろう、マーケティングの各課題に関する本質的な概念と具体的な思考のあり方を集めたものである。本書でも示しているように「成長率が鈍化すると、多くの業界で市場シェアをめぐる競争がさらに激しくなる」現在は成熟社会である。特に日本は業界ごとに護送船団を組んできただけにオーバーカンパニーの状況にある。今後倒産も多くでるだろうと予測される。この環境下で勝ち残っていくためには、本書でも明らかに示されているように、ビジネス・マーケティングに与えられた4つの課題に対する挑戦をしていかなければならない。その点を含め本書は本質と技能を具体的に示している本である。


北原 秀猛

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•  マーケティング
•  CRM
•  人材育成


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