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EQリーダーシップ
成功する人の「こころの知能指数」の活かし方

著  者:ダニエル・ゴールマン、リチャード・ボヤツィス、アニー・マッキー
訳  者:土屋 京子 出 版 社:日本経済新聞社
定  価:2,000円(税別)
ISBN:4−532−14975−4

1995年に発表したゴールマン著書の「EQ−こころの知能指数」は、日本を含む全世界で大ベストセラーを記録した。

リーダーの基本的な役割は、良い雰囲気を醸成して集団を導くことである。そのためには、集団に共鳴現象を起こし、最善の資質を引き出してやることが肝要だ。リーダーにとってEQ(感じる知性)が重要になる。本書では、EQの高いリーダーが集団に共鳴現象を起こし業績を伸ばすことができるのはなぜか、という問いを解明する。変革の激動を生きのびるために、リーダーにはどのようなEQが必要か?これまで長い間、感情の問題は組織の理性的運用を乱す雑音と見なされてきた。しかし、ビジネスから感情を切り捨てる時代は終わった。雇用もリーダーシップEQを見て決められるだろうし、昇進も教育もEQがポイントになるだろう。

優れたリーダーは、人の心を動かす。優れたリーダーは人の情熱に火をつけ、最高の力を引き出す。リーダーの影響力は、発言だけにとどまらない。発言していないときも、リーダーは注目されている。特に、人によって異なる反応を示すような微妙な状況下では、人々はリーダーを見る。ある意味で、リーダーは感情の基準を作るのである。

「共鳴」という言葉の語源はラテン語のresonareで、辞書を引くと、「音が反響して増幅または延長すること。共鳴」という説明がある。人間の場合、共鳴は感情の波長が一致したときに起こる。そして語源のとおり、共鳴は前向きの感情をより長引かせる効果がある。EQの高いリーダーは、ごく自然に共鳴を起こすことができる。熱意と行動力を示して、グループ全体を共鳴させるのだ。ただし、EQの高いリーダーは、必要なときにはメンバーの感情を読み取った上で、やや深刻な雰囲気を表明してみせる場合もある。

知と情は別々の神経回路でコントロールされているが、両者は緊密に絡み合っている。この知性と情動(激しく強い感情を心理学では情動と呼ぶ)を統合する脳の回路こそ、EQリーダーシップの基礎だ。ビジネスの世界は感情抜きの知性を重視したがるが、人間の感情は知性よりも強い。非常事態が起こったとき、脳をコントロールするのは、情動をつかさどる脳(大脳辺縁系)なのだ。情動をつかさどる脳と前頭葉前部との対話は、思考と感情を統御する役割をもつ脳内のスーパーハイウェイとも呼ぶべき神経回路を通して行われる。リーダーシップに不可欠なEQが発揮できるかどうかは、前頭葉前部と大脳辺縁系を結ぶ神経回路がスムーズに機能するかどうかにかかっている。この回路に損傷を受けた患者を調べてみると、認知能力には何の問題もないのに情動の知性に障害が起きていることがわかる。すなわち、知能能力や専門知識やビジネス・ノウハウのように、大脳新皮質だけに存在する純粋な認知能力と情動の知性とは、明らかに別のものなのである。

EQには「自分の感情を認識する」、「自分の感情をコントロールする」、「他者の気持ちを認識する」、「人間関係を適切に管理する」という4つの領域があり、それぞれが共鳴的リーダーシップに不可欠なスキルを提供する。言うまでもなく、この4つの領域は密接に撚りあわされ連繋して動くものだ。

共感能力に欠けるリーダーは、知らず知らずのうちに集団と気持ちが離れ、負の反応を招く言動を繰り返すことになる。共感能力のあるリーダーは相手の話に耳を傾け、相手の視点に立ってものを見ることができるので、集団の気持ちに同調して共鳴を形成し、相手の心に響くメッセージを送ることが出来る。

優秀なリーダーがユーモアを多用する事実と、リーダーが優秀な成績をあげるうえで不可欠なEQコンピテンシーとの間に強い相関関係が存在することだ。これらのEQコンピテンシーは、優れたリーダーシップの要件だ。EQは持って生まれた能力ではなく、学習によって習得しうる能力である、ということだ。EQコンピテンシーは、どれも集団に共鳴を起こす力を高め、リーダーの指導力を高める資質だ。

「自己認識」とは、自分の長所や限界、自分の価値観や動機について深い理解を有している、ということだ。自己認識の優れた人間は、自分の価値観に合った決断ができるので、仕事に対していつも前向きでいられる。自己認識ができてはじめて、自己管理が可能になる。自分が何を感じているかがわからなければ、自分の感情を管理できるはずがない。

リーダーシップ・スタイル

* ビジョン型リーダーシップ
 A:<共鳴の起こし方> 共通の夢に向かって人々をうごかす
 B:<風土へのインパクト> 最も前向き
 C:<適用すべき状況> 変革のための新ビジョンが必要なとき、または明確な方向が必要なとき
* コーチ型リーダーシップ
 A:個々人の希望を組織の目標に結びつける
 B:非常に前向き
 C:従業員の長期的才能を伸ばし、パフォーマンス向上を援助するとき
* 関係重視型リーダーシップ
 A:人々を互いに結びつけてハーモニーを作る
 B:前向き
 C:亀裂を修復するとき、ストレスのかかる状況下でモチベーションを高めるとき、結束を強めるとき
* 民主型リーダーシップ
 A:提案を歓迎し、参加を通じてコミットメントをえる
 B:前向き
 C:賛同やコンセンサスを形成するとき、または従業員から貴重な提案を得たい時
* ペースセッター型リーダーシップ
 A:難度が高くやりがいのある目標の達成をめざす
 B:使い方が稚拙なケースが多いため、非常にマイナスの場合が多い
 C:モチベーションも能力も高いチームから高いレベルの結果を引き出したい時
* 強制型リーダーシップ
 A:緊急時に明確な方向性を示すことによって恐怖を鎮める
 B:使い方を誤るケースが多いため、非常にマイナス
 C:危機的状況下、または再建始動時、または問題のある従業員に対して

部下を奮い立たせるEQコンピテンシーは、言うまでもなく、ビジョン型リーダーシップを支える最強の基礎力だ。ビジョン型リーダーは、EQの3大要素である「自信」、「自己認識」、「共感」とともに「鼓舞激励」のコンピテンシーを発揮することによって、自分が心から信じる目的を表明し、それを部下たちの価値観と調和させることができる。このようなリーダーは自分のビジョンに確信を持っているので、部下たちを力強く導くことができる。また、「自信」と「変革促進」のコンピテンシーに支えられて、組織の変革を円滑に進めることができる
ボヤツィスによる自発的学習の理論

  • 第1の発見 理想の自分――自分はどんな人間になりたいか?
  • 第2の発見 現実の自分――自分はどんな人間か?長所は?短所は?
  • 第3の発見 学習計画――どうやって長所を伸ばし、短所を克服するか?
  • 第4の発見 新しい行動、思考、感情をマスターできるまで試行錯誤と反復練習
  • 第5の発見 変化の努力を支援してくれる人間関係を作る

断絶の自覚が新しい発見につながり、認識と意欲が高まり、学習プロセスが進んでいく、という展開が理想的だ。ナポレオンが言ったように、「リーダーは希望を売り歩く人」なのだ。リーダーは、自分の内面を見つめて希望の源泉を探りあてなくてはならない。あらゆる機会をとらえて練習に励むほど、向上も早い。人生はすべて学習の場だ。そして、特定のパフォーマンス水準に目標を定めただけの単純な学習計画よりも、理想と現実を勘案して決めた学習目標の方が効果的であることも忘れてはならない。

個人の場合、人生の夢や理想像を自覚したときにモチベーションが最も高まる。将来のビジョンが見えてくると、自分の行動パターンを変えようとするエネルギーやコミットメントが湧いてくる。しかし、集団にとって、理想のビジョンはしばしば遠い概念でしかなく、変化を促すモチベーションとしては不十分な場合が多い。企業の社訓が良い例だ。高邁な言葉は、従業員の日常から遠くかけ離れたものに感じられてしまう。

集団がEQを発揮するうえでも、自己認識、自己管理、社会認識、人間関係の管理など、個人のEQと同じ能力が必要になる。ただし、集団の場合、個人個人のEQが反映されると同時に集団自体のEQも問題になる点が異なる。個人の場合と同じように、集団においてもEQは練習をひとつずつ積み重ねて連続的に育っていくものだ。EQの高いチームは、チームとして共感力を発揮することができる。共感は、あらゆる関係を発展させていくスキルの基礎になる能力だ。

共鳴を起こすリーダーシップ・スタイルを用いて健全で効率的な人間関係につながる企業規範を作り上げる優秀なリーダーは、組織の集団が持つ力強いエネルギーを解き放し、あらゆるビジネス戦略の追求を可能にする。こういうリーダーは、心からの情熱をもってビジョンを構築し、組織にしっかりと根付いたミッションをかかげて人々の意欲を引き出し、仕事に意味を与えることができる。EQの高いリーダーは、正しいタイミングで、正しいやり方で、正しい相手に対して、正しい行動を起こす。優れたリーダーはミッションに対して純粋な情熱を抱いており、その情熱は周囲に伝播する。リーダーの熱意と興奮は自然に拡散し、部下たちを元気づける。EQリーダーシップの鍵は、共鳴なのだ。

以上が本書の概要である。本書はEQに関して3冊目に当たる。著者が謝辞で述べているように、数十年にわたる研究をEQリーダーシップ論としてまとめたものである。

Emotional intelligence(quotient)――このEQと言う概念はいま、アメリカの企業社会の中で予想以上のスピードで浸透し、日本の経営者の間でも多くの支持者を獲得しつつある。人材消費論的発想であれば、感情など意に介さなくてもよかったが、人間性をより重視しなければならない知恵の社会、情報社会では、EQは非常に重要なファクターである。


北原 秀猛

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