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ネクストエコノミー
  next economy

著  者:エリオット・エッテンバーグ
訳  者:村田 昭治、杉原 素明
出 版 社:東急エージェンシー出版部
定  価:2,000円(税別)
ISBN:4−88−497092−6

ネクストエコノミーが現在のビジネスモデルに与える影響が意味しているのは、今後の15年から20年にわたって、マーケティングが企業収益を生み出す責任を担わなくてはならないということである。これは途方もなく大きな課題である。私たちがこれから直面する経済状況は先例のないものだ。著者のエリオット・エッテンバーグは、「ネクストエコノミーは2006年までに到来し、2020年まで続だろうという。そしてこの時代の注目すべきトレンドとして、従来市場最大の顧客層であるベビーブーマー世代がリタイアの時期を迎えつつあることを挙げている。彼らが支出を大幅に減らす結果、市場は急速に縮小し、企業間の競争は熾烈となり、企業は容赦ない優勝劣敗に追い込まれる。カギは企業でなく顧客に完全に移っている。だから企業が生き残るためには、顧客にたいして「満足」だけでなく「喜ばせること」をベースにしたマーケティングパラダイムを採用しなければならない」と指摘している。

「ネクストエコノミー」経済を特徴づけるものは、顧客支出の大幅な減少、需要の分極化、サービス需要の加速的な増加、株主を満足させることから顧客を満足させることへの優先課題の顕著な移行といったことである。ネクストエコノミーの中心は、企業の著しい自分本位の行動に対する顧客革命である。この革命の火に油を注いでいるのが、ベビーブーム世代の高齢化、(日本でいえば、団塊の世代であと5年―6年で60歳を迎える)生活の質への関心、平準化された製品とサービス、私たちの生活に価値を加え得ないテクノロジーの不毛性である。私たちは過去10年間のうちに、1つのビジネス周期を終えた。「オールドエコノミー」から「ニューエコノミー」への移行である。そのニューエコノミーはすでに衝撃的な死を遂げている。

  • オールドエコノミーは製品とサービスをベースにしていた。ビジネスの成功は市場シェアによって測定された。企業は一般に規模と効率性に照準を合わせていた。
  • ニューエコノミーは情報をベースにしていた。ビジネスの成功は、販売のスピードとサイトへのアクセス数によって測定された。企業は一般にテクノロジーの開発に照準を合わせていた。
  • ネクストエコノミーは知識をベースにする。ビジネスの成功は、利益と顧客の支出シェアによって測定される。企業は顧客との接触、顧客へのサービス、顧客の維持に照準をあわせる。

マーケティングは、かってない顧客のロイヤルティをめぐる戦いの先陣を担うことになる。利益は少数の勝利者だけが手中にする。大多数の企業は、旧来のビジネス慣行によって、需要の減退、価格の崩落という波を押し返すことができず、利益の漸減に苦しむ。

インターネットは依然として重要なマーケティングの役割を果し続けるだろう。しかしインターネット専門の企業でさえ、ネットは顧客関係の育成にユニークな能力を発揮はしても、情報とテクノロジーだけでこうした関係を構築できるものではないことを理解し始めている。ネクストエコノミーの本格的な出現はまだ4年先のことである。あらゆる社会的な大変動と同じように、この移行も徐々に進行するだろう。それはある日振り返って、しばらく前から新しい世界で生活していたことに気づくのである。ネクストエコノミーにおけるあなたの戦略がどのようなものであれ、テクノロジーにニューエコノミーの崩壊を早めたのと同じ失敗を再び繰り返させることは許されない。テクノロジーの統御と、テクノロジーに顧客と企業の優先課題に役立つ働きをさせるマネジメント能力とが、ネクストエコノミーにおける成功のまずは必要条件である。

オールドエコノミーの時代には、顧客関係は取引による利益の極大化を基本としていた。時が経つにつれ店内のショッピング通路は狭くなり、特売の回数が増え、サービスがカットされ、商品の価格は引き下げられた。顧客がブランドや店を切り替えことで反撃に出るまで、これが続いた。顧客関係は敵対的であったと形容するのが一番適切だろう。ネクストエコノミーの根底にある特徴は、ベビーブーム世代の人口統計によって引き起こされる消費者需要の一大変化である。高齢者世帯の購入額は総じて減少する。

オールドエコノミー、ニューエコノミーとネクストエコノミーとの違いは、前2つの時代には、急激な成長にとって顧客との関係を構築すべきマーケティングの能力の低下が包み隠されていたことである。ネクストエコノミーにおいては、成長は与件ではない。リトレンチメント(顧客との距離の短縮化)と需要の減退が、これから先の時代の特徴となるのである。ひとたび収縮したデフレ傾向の市場が姿を現し始めたら、企業のマーケティング力のもろさがたちまち露呈することだろう。

今日、競争が激烈なビジネス環境のなかで、価格競争がいたるところで展開され、他のマーケティング戦略の補足的手段としてではなく、戦略そのものとして機能していることである。ただ残念なことにこの戦略は、企業の長期の生き残りにとって健全なものであるとはいえない。1つは価格プロモーションでは他の製品との差別化ができないからだ。

買い手市場の今日、売り手同士の競争の激化である。私たちはひどい店舗過剰の状況に直面している。1人当たりの小売店舗スペースは増える一方である。こうした過剰競争には多くの理由がある。1部はグローバル経済から生まれたものだ。シンガポール、チリ、マレーシア、インドネシア、ブラジル、韓国など急速に発展を遂げつつある国々が、ポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ロシア、チェコなど旧ソ連圏の国々と並んで工業力を高め、自由市場経済に参入するにつれ、これらの諸国の製品が世界中の市場に進出しているのである。

もし私の予測が正しければ、ネクストエコノミーは2006年までに到来し、2020年ごろまで続くだろう。2006年から2020年にかけて、私たちは売り手市場から買い手市場移行を経験し、その間に企業内のマーケティングの役割は永久的な変化を遂げるだろう。ネクストエコノミーが進むにつれて、インターネット上のB2Cビジネスは、ウォンツセグメンテーション・ビジネスに変身していくだろう。主なウォンツの構造は絶えず変化している。なぜなら価値観が常に変化するからである。ネクストエコノミーで成功する企業は、静的で厳格に型にはめられたオールドエコノミー時代の戦略が、ネクストエコノミーでは通用しないことを理解し始めるであろう。

スピード、効率、カテゴリー支配を重視しながら、戦略的なレリバンシーをもたなかったニューエコノミーの戦略も同じように通用しない。企業は最良の顧客とのブランドレリバンスを基本にして戦略的なビジョンを構築しなくてはならない。つまり、共有された価値観がブランドエクイティーにとって欠かせない要素であるということだ。さらに留意して欲しいのは、B2Cに引き継がれないB2B取引は存在しないということである。GDPの3分の2以上が消費支出によって動かされている。したがって、事実上あらゆる場合において、B2B取引は究極的に消費者につながる道の第一歩なのである。

顧客デターを集め、1番多く買ってくれる顧客から一番少ない顧客までをランクづけしたら、彼らを5つの同数のグループ――5分位(クインタイル)に分けて欲しい。各各の5分位には当然ながら、同人数の顧客が入っている。例えば、あなたのデータベースに全部で16万人の顧客が入っているとしたら、各5分位の顧客数は16万÷5=3.2万、すなわち顧客総数の20%である。最上位の5分位――以下Q1と呼ぶ。ここには最も購入金額の多い顧客が入っている。次のQ2には入っている顧客は2番目に購入金額が多い。このQ2顧客は、ネクストエコノミーのなかではより重要な存在となる。なぜなら顧客が減り、求める製品もサービスも減るからである。Q2の顧客を失うことは深刻な問題であるにもかかわらず、私たちはしばしばQ1顧客の確保とQ3顧客へのインセンティブの提供に的を絞っている。潜在的なQ1およびQ2顧客に狙いを定めた強力な獲得プログラムが、ネクストエコノミーで勝利をえるのに必要な最も重要な武器の1つである。その戦略は次のように要約できる。

  • Q1とQ2顧客を獲得し、確保するための全面戦争を行う。
  • Q3顧客の争奪戦をしかける
  • Q4顧客を放置したままにする。
  • Q5顧客の気持ちを離反させる。

2010年までに、5分位マーケティングによって最良の顧客に焦点を絞ってきた企業が、利益面でリードし、顧客と自社ブランド間に強くて深い関係を構築し終えているだろう。

オールドエコノミーの4つP、プロダクト、プレイス、プロモーション、プライスは、メーカーから消費者への製品とサービスの流れの管理にかかわってきた。ニューエコノミーがかかわってきたのは、テクノロジーとスピードの管理であった。ネクストエコノミーは、一貫した着実な方法で、顧客とのあらゆる接触点の管理にかかわるのである。そしてそれによって、ブランドと最良の顧客との間に双方にとって有利な関係を築くことができるようにするのである。ここで登場する新しい4つのRは、ネクストエコノミーに備えるブランド構築の処方のなかで重要な役割を担うことになる。

  1. リレーションシップス(関係づけ)
  2. リトレンチメント(顧客との距離の短縮化)
  3. レリバンシー(顧客にとって意味のあること)
  4. リワーズ(報奨)

私たちは必要とする物のほとんどを、品質と確かさにおいて十分に信用できる企業から外部調達している。必要とする物を自分で管理するだけの専門知識、エネルギー、時間ないしは興味のない分野ではすべてそのようにしているのである。私たちがこれらの必要事項を依頼する企業は、必要な知識、能力、それに私たちが個人としては持ち合わせていない購買力を保有していると信じられる企業である。これらが、新しい顧客関係を創出するコンシェルジュマーケティングを支える基本的な思想である。コンシェルジュマーケティングは、売りと買いに関する古い方式の逆の形だ。コンシェルジュは売り手ではなく買い手側の代行をする新しいビジネスの担い手である。当然のことだが、コンシェルジュは私たちについて今以上に知らない限り、成功は望めない。

以上が概要である。本書は第1部、第1章から第5章に分れており、第2部は、第6章から第10章の構成になっている。著者が本書のなかで示しているように、あと4年後の2006年ぐらいから頭をもたげてくる。そして著者は、オールドエコノミーでは成功基準は市場シェアであり、ニューエコノミーの時期には売上だった。売上を追求するためテクノロジーに対してあらゆる種まきがおこなわれた。ネクストエコノミーでは基準になるのは利益だ。利益は最良の顧客が疑念なく認める製品やサービスの付加価値からもたらされる。以上のように成功の尺度が代わってきている。法人統計によると、今年の4月―6月期における売上高は前年同期比マイナス9.2%であり、昭和30年の統計を開始して以来最大の落ち込みである。この状況をみてもわかるように、従来のやり方ではダメな時代である。未来は予測するものではない。創造するものである。

ダーウインがいう、「生き残ることが出来る種は、最も強いものでもなく、最も賢いものでもない。それは最も環境の変化によく対応したものである」であるように、本書の中身を1つのヒントとして新しい時代に対応できる企業に変身しなければならない。


北原 秀猛

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キーワード
•  ネクストエコノミー
•  ベビーブーマー世代
•  リトレンチメント
•  コンシェルジュマーケティング


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