本書はマネジャーが直面する、人間の行動に関する主要な問題ごとに構成されている。つまり、採用、モチベーション、リーダーシップ、コミュニケーション、チーム作り、衝突処理、職務設計、業績評価、変化への対応、である。それぞれの問題では、マネジャーに関係があり、引用する研究結果が十分に揃っているトピックスを厳選している。
著者のスティーブン・P.ロビンズは、元サンディエゴ州立大学教授で、マネジメントと組織行動学の分野における世界一のベストセラー教科書作者である。
面接では、予定される職務に関係のある、候補者の過去の経験に絞って質問すればよい。
「今までについた仕事で創造力が発揮されたのはどんなことでしたか?」
「前の仕事で、一番やりたかったのにできなかったことは何ですか?なぜできなかったのですか?」
面接ではマイナス面も知らせよう。たとえば1日10時間も12時間も働いてもらうつもりだと話すのだ。「一目散に逃げ出す人もいるが、残った人は意志が強く、どんなことでもする覚悟がある」ものだ。質問はイエス、ノーだけでは答えられない質問を選ぼう。
- 過去の行動を見れば、将来の行動が一番よく予想できる。
- 面接者が黙っていれば、応募者は話を続ける気になる。
- どの程度前向きになれるかは、そのほぼ80%が遺伝子による。
- 知能は、業務成績に影響を与える唯一の要因ではないが、最も重要な要因であることも多い。
- 過去の業績が良くても悪くても、それが別の仕事にあてはまるとは限らない。
- 広範な職種において、誠実さの度合いから業績を予測することができる。
- 組織の文化が社員の成功や失敗に与える影響を過小評価することは禁物だ。
パーソナリティには6つのタイプがある。
* 現実的・・・スキル、強さ、協調を必要とする。内向的、まじめ、我慢強い、従順。
* 研究的・・・系統的に思考、独創的、好奇心強い、独立心が強い。
* 芸術的・・・型にはまらず、組織に縛られない、創造性を発揮できる。非規律的、感情的。
* 社会的・・・他人を助け、育てることに関心を持ち、社交的、愛想がよい、協力的。
* 企業的・・・他人に影響を及ぼし主導権を握る。自信家、野心的。
* 慣習的・・・規律的、能率的、実際的である一方で、想像力や柔軟性に欠ける。
- 人はパーソナリティに合った職場に配置されたときに、最も充実感を抱く。
新人の採用に当たって決定しなければならないことが4つある。
- 本格的な教育を行うか、それとも簡単な教育ですませるか?
- 教育を個別に行うか、あるいは集団で行うか?
- 教育を連続して行うか、それとも不定期に行うか?
- 何かを身につけさせるためのプラス型の教育か、あるいは消し去るためのマイナス型の教育か?
- 教育は部外者を組織の人間に変え、マネジメントの要求に合うように、従業員の行動を細かく調整できるのだ。
- 従業員がやる気を出さないとしたら、悪いマネジャーと組織の慣行であり、従業員ではない。
- ほとんどの場合、生産性の高い従業員が充実感を抱くのであり、その逆ではない。
- 価値観は様々だが、育った時代の社会的価値観の影響を受けることが多い。
- 具体的で困難な目標は、「ベストを尽くせ」といった漠然とした目標よりも、高いレベルの結果を生む。
- 従業員参加型経営は、業績向上の確実な手段でない。
自分の好きなことをしている時は、他のことは忘れ完全に没頭している状態であり、この状態を「フロー」と呼ぶ。フローが一番起きやすいのは仕事中であって、くつろいだ時間ではない。
- マネジャーは従業員が怠けていないこと、組織の秘密を漏洩していないことを確認する必要がある。
- どんなに腹がたっても、フィードバックは仕事に関することに限定するべきで、個人攻撃であってはならない。
- 従業員に求めていない行動に対して報酬を与え、実際に望んでいる行動には報酬を与えていないことが非常に多い。
- 従業員は額そのものだけでなく、他との比較で報酬を見ている。
- 最高のモチベーションとは、「認められること」の一言に尽きる。
- マクドナルドのような業種では、年間離職率が200%を超えることも稀ではない。
- 従業員のモチベーションがどんなに高くても、それを支える職場環境がなければ業績は上がらない。業績=f(能力×モチベーション×機会)
信頼を築くために有効な行動
- オープンであること
- 公正であること
- 気持ちを伝えること
- 真実を告げること
- 一貫性を示すこと
- 約束を守ること
- 秘密を守ること
- 信頼してくれない人を導くことは不可能だ。
- 20年の経験といっても、1年の経験を20回繰り返しただけの人がなんと多いことか。
- たとえ真のリーダーではなくとも、リーダーらしく見せることはできる。
グローバルな環境でリーダーシップが効果を発揮するには、フレーミングが非常に重要になってくる。争点をフレームするのに役立つ表現方法が5つある。比喩、業界用語、対照、情報操作、伝説である。
- 期待を予測されたために実現する予言と考えてみよう。
- リーダーが何をしようと部下が応えてくれなければ、リーダーは失敗する。
カリスマ的リーダーは、自信、より良い未来を提唱する力強いビジョン、ビジョンを明確に描き出す能力、ビジョンに対する強い確信、徹定した変革を遂行する意志などだ。具体的なカリスマ的行動を示す。
- パワフルで自信に満ちた、ダイナミックな存在感を演出する。
- 壮大な目標を示す。
- 優れた業績を期待し、期待に応える能力を人々が持つと信じていることを伝える。
- 人は訓練によってカリスマ性のある行動を示せるようになるのだ。
- 有能なリーダーは人に頼られることによって影響力の基盤を築く。
- リーダーの普遍的なスタイルなどない。
- 文化は望ましいリーダー像を形成すると同時に、何が部下に受け入れられるかを決定する。
- 企業の成功や失敗の大部分は、リーダーの影響が及ばない要因によるものだ。
- 「聞こえる」と「聞く」とはまったく違う。「聞こえる」というのは、音の響きを耳で拾っているだけだ。「聞く」は聞こえた音を理解することだ。
- 高い業績を挙げるマネジャーは、コミュニケーション手段の選び方がうまい。
- 噂がまったくでたらめでも、そのメッセージには意味がある。
- 男性は自分の地位を強調するために話をしがちだが、女性はつながりを作るために会話する。
- 言葉と行動にずれがあるとき、人が注目するのは行動の方だ。
- オープンブック経営では、すべての従業員にオーナーのように考え行動してもらう。
有能なチームを作るカギとなる構成要素は、4つのカテゴリーに大別できる。第1のカテゴリーは職務設計、第2はチームの構成、第3はチームを効果的に機能させるための資源やその他の状況による影響だ。そして最後はプロセスの要素であり、これはチームの中で進行し、チームの効率を左右する要素を指す。
- 成功するチームは、共通の目的を、評価のできる現実的な目標に具体化する。
- 実際には、チームは負の相乗効果を生み出すことも多いのだ。
- どんなグループでも、役割や儀式によってメンバーを差別化しようとする。
- メンバーとして優れた業績を挙げるには、個人の目標をチームのために昇華させることができなくてはならない。
- 慣例的な決定を下しがちなグループにとって、衝突が解毒剤の役割を果す。
- 集団思考は、グループがポジティブなイメージを守る手段なのだ。
- 個人的な生活が仕事の犠牲になると考え不満を抱く従業員が増えている。
- 職務の再設計を考える際には、個人の考え方の違いをよく見極めることだ。
- 仕事に成長の機会を見出すことを期待していない人も多い。
- 職務設計を改善すれば、従業員のモチベーションが高まり、生産性は向上しやすくなる。
- まめにフィードバックを行うようにして、公式な効果の場で部下を驚かせるようなことは避けるべきである。
- 人は、自分の成功は能力や努力といった内的要因によるものとするが、失敗の責任は運などの外的要因のせいにする。
- 様々な関係者からの複数の評価を得ることで、多様な行動を捉えられる。
- 変化への抵抗の決定的な欠点は、適応と進化を妨げることだ。
- 自分が参加して決定された変化には、人は抵抗しづらいものである。
- レイオフは、会社に留まる従業員にも深刻な影響を与える。
感情が行動を左右するのと同じように、行動も感情に影響を与える。具体的には、すでに生じた行動の意味を理解した後で、感情が生まれることが多いということだ。これを自己知覚理論という。
- すでに生じた行動の意味を理解することで、感情が生まれることが多い。
- 第一印象と矛盾する情報を後から受け取った場合、割り引いて聞いたり、不正確に伝えたり、ときには無視したりもしてしまう。
- 特に人との交流がたくさん必要な職務においては、採用の過程でEQの高い人を探すべきだ。
- 経営という複雑な仕事に近道はない。
以上が本書の概要である。一読してお分りのように、われわれが過去に気がつかなかったこととか、なるほどと思い当たることも多くある。部下を持つ幹部をはじめ、新人を採用する立場の人は勿論であるが、人間として、また社会人として競争社会に生きていく人々にとって非常に役に立つ本である。しかも各部、各章ごとに事例やわかりやすい解説がついているので読めば理解できる。
|