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顧客感動主義 CRM完全達成シナリオ表紙写真

顧客感動主義 CRM完全達成シナリオ

編  著:ベリングポイント株式会社
著  者:小村 誠、中村 雅也、丸山 悟
出 版 社:ダイヤモンド社
定  価:1,800円(税別)
ISBN:4−478−08238−3

本書は、「顧客の感動とは何か」の科学を紹介するものである。そのために「顧客の目」及びその目線と企業の目線とのギャップに焦点を当てている。「良いものを提供すれば売れる」という時代は終わり、「消費者の買いたいもの、買いたくさせる物だけが売れる」時代になった。顧客に何らかの感動を与えなければ購買行動につながらない。これは豊かな経済社会の必然とも言える。

本書の構成は、第1章「顧客の目」、第2章「マーケティング目」、第3章「待ったなし!営業構造改革」、第4章「サービス価値の本質」、第5章「顧客情報管理の目」となっている。

「顧客価値」=「利用価値」+「商品価値」

顧客価値の全体像「顧客価値」=「利用価値」+(「機能価値」+「ブランド価値」)
「利用価値」は顧客が決めることで、企業サイドからの影響を及ぼすことが難しい。「機能価値」は顧客が使用、また購買時点に重視するもので、商品自体が基本的の兼ね備えている客観性の強い価値要因を指す。「ブランド価値」は顧客それぞれの認識、受け止め方によってその意味・価値が大きく異なってくる、相対性の強い価値要因と考えることができる。この2つの価値には絶対的な分類基準はないので、各企業の商品やサービス特性、あるいは顧客特性などに応じて、独自に基準を設定すれば良い。重要なのは「商品がもともと持っている価値」と「顧客が自分自身で認識する価値」という、2つの視点で顧客にとっての商品価値を把握していくことである。

企業が価値創造を検討していく際には3つの段階が必要である。まずは企業がコントロールしにくい部分ではあっても利用価値を把握する必要がある。そしてそのような利用価値を生むためには、どのような商品が求められているか、何を提供すべきであるかを検討する。さらにその商品価値を「機能価値」と「ブランド価値」の2つの視点から捉え、それぞれが具体的にどのような価値要因から構成されているのかを探っていかなければならない。

われわれは、顧客セグメントというモノサシをよく使うが、この「顧客セグメント」というモノサシ自体、実は企業サイドによる勝手な物の見方でしかない。顧客分類に関しては売上が基準となっていてもよいが、施策展開のための顧客戦略を検討するのであれば、単に売上を基準としていてはいけない。顧客シェアの向上を図るためにはXYZに対する実績だけを見るのではなくシェアを算出する際の母数となるXYZを含めた商品群全体に対する出費を知らなければならない。さらに顧客関係を強化していくために気をつけなければならないことは、「時間の観念」である。今日の優良顧客が明日には競合顧客になってしまうこともある。優良顧客は期待値が高い分だけ何かの不手際に対する失望感も大きく、それまでのロイヤルティが一瞬にして崩れ去ってしまう危険性があることも十分考慮しておかなければならない。一方、企業が持つ商品について、企業サイドからの発想で良いところをあれもこれもと並べるような商品価値訴求の視点でなく、消費者にとっては周囲を、そして何よりも自分自身を強く納得させられるようなUSP(ユニークセリングプロポジション)が欲しいと思っているのである。「顧客」を語ることは、顧客層の構造的な把握やステークホルダーの位置付け、構築すべき関係などを体系化して考えていくことを意味する。まずは「顧客」という言葉の定義付けから始めたい。そして、顧客満足度向上は効果の見えにくい活動だからこそ、投資の「選択と集中」がより一層不可欠になる。

作れば売れた時代から、売れるものを作る時代へと変わってきている。実際には市場が納得し、その価値を認めたもの、つまりマーケット・アウトの発想である。「攻撃は最大の防禦なり」。顧客への積極的なアプローチを実践していかなければならない。市場の変化に伴い、顧客もますます進化してきている。

ここで確認しておきたいのは、今までどうして自社は顧客から取引をしてもらえたのだろうかという視点である。いわゆる顧客側から見た企業選別の基準を理解することが、大切である。そして、営業個人に依存した従来型の「各自おまかせプロセス」ではなく、組織として定義した営業プロセスを徹底して導入・実践することが必要である。自社の営業のあるべき姿と具体的に目指すものは何かを明確に示した戦略が必要である。

自社のビジネスにおける顧客志向の追及により顧客満足度が上がり、自社の製商品・サービスを購入してもらえる頻度や確率が高まったとすると、その結果収益が向上する。このCRM活動と収益向上という結果がROIの両端に位置する。しかし、結果を得るためにはさまざまなプロセスを経なければならない。このプロセスを的確に把握することがより良い結果を導く成功要因となるのだ。これがKPIである(KPI=performance indicator)。CRMではこのプロセスを評価するKPIと、そこから導き出される結果としてのROI(return on investment)を評価指標として投資効果の検証を進めるのである。

現代はサービスの時代といわれて久しい。今ほどサービス・ビジネスが企業収益に影響を及ぼす時代はない。戦略的に重要なポジションを占めるようになっている。企業の生き残りの鍵は、「製品」ではなく、顧客の抱えているさまざまな問題・課題を解決することと、そして貢献度によって企業が評価される時代になった。単なる製商品だけではなくサポート・サービスによる満足度が高まると、顧客はリピート顧客となり、再度自社の製商品を購入するようになる。一般顧客から得意客へ、さらにはロイヤル顧客へと、自社への忠誠心とあいまってステップアップしてくれる。カスタマー・リテンション(customer retention=顧客維持)の究極の目標でもある。

知恵とは顧客の立場を理解し、顧客が今一番大事なもの、欲しいもの、必要なものを見つけ出したり、考え出したり、仮説を立てたりすることができる能力のことである。その仮説を作り出す能力が企業内に存在するための条件は次のようなものだ。

  1. 特定の顧客がある時点で保有している全商品リストを調べられる。
  2. 先月までの売上情報が翌月の2〜3日以内に確認できる。
  3. 財務、マーケティング、営業などが、お互いの正確なデータをオンタイムで参照できる。
  4. 購買業務における商品仕入れ情報として、発注数と顧客購買数を対比できる。
  5. 様々な顧客情報の検索がオンラインででてくる。
  6. 次期プロモーションをターゲット・マーケティングの視点で考案でき、また実施後の結果を今後のプロモーションのために評価し調整ができる。
  7. いろいろなシステムからデータを自ら集めるのではなく、データウエアハウスがすべての販売パフォーマンス情報を扱えるようになっている。

これらの条件をクリアしていくことで企業としての独自の成功指標を測定・観測することが可能になる。「利益をもたらすのは商品ではなく顧客である」という考え方は、顧客志向のリレーション構築のためのアプローチ戦略である。

  1. ロイヤル顧客・・・・他社への推奨、価格だけでは選ばない、自社のフアン(魅了し続ける)
  2. 得意客・・・・かなりの頻度で購入、1回あたり購買額がつねに高い(魅了させる)
  3. 既存顧客・・・・複数回購入(顧客から個客)
  4. 新規顧客・・・・初回購入/長い間未購入(安心感提案、呼び覚まし)
  5. 見込客・・・・購入検討(購入促進)

そのセグメントには顧客の購入度合いに応じて顧客を識別し、それぞれの期待値に応じた個別の顧客戦略が必要であることを示している。顧客は、日々変化に敏感になりつつある。情報の多重化により自己の意識をより現実的・理論的に組み立て始めていることを忘れてはいけない。

以上が本書の概要である。まず、自社の現状として本当に顧客価値の創造と提供ができているのかを考えてみる必要がある。市場や顧客価値の変化をどう読み取るのか、その基準となる情報自体が曖昧では、何をか言わんやである。

情報は企業活動に転化されなければ、何の価値も生まれない。しかも一度情報活用の仕組みを構築してしまえばそれでうまくいくということではない。情報をもとに、常に変革を推進していく覚悟と革新性がなければならない。それは、市場や顧客の変化スピードがますます加速している現在、企業の対応にも一層のスピードが必要である。現実にCRMを導入した企業のうち成功例がほとんどないのが現状である。それは、顧客が自ら喜んで企業側に収益を提供してくれるような「対顧客価値向上」が進んでいないからだともいえる。その理由は顧客戦略を曖昧にCRMを導入してしまう。企業内組織の改革をしないまま導入してしまう。一方で、CRMのテクノロジーがハイテク・タイプであればよしとしてしまうなど、いろいろな原因が考えられる。そのあたりをよく考え、本書を参考にしながら再度CRMを検討し直すべきだろう。


北原 秀猛

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