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社長が戦わなければ、会社は変わらない表紙写真

社長が戦わなければ、会社は変わらない 不況を言い訳にしない実践経営学

著  者:金川 千尋(信越化学工業社長)
出 版 社:東洋経済新報社
定  価:1,400円(税別)
ISBN:4−492−55466−1

変転の激しい現代にあって、企業経営者は、常に変化に備えておかなければなりません。今いかなる時期にあるのかを、客観的に見なければなりません。危険な要素はいつやってくるかわかりませんから、そのような時期が近づいているかもしれないという腹積もりだけは、常にしておく必要があります。私にとって重要なのは、昨日よりも今日と明日のことです。安定的な利益を上げるには、経営者の先見性が大切で、時流の変化をいち早く感じ取り、それに素早く対応できなければなりません。「疾風に勁草を知る」という言葉があります。激しい風が吹いているときこそ、強い草が見分けられるという意味で、「艱難に遭ってこそ、節操の固さ、意思の強さがわかる」というたとえです。

本書は序章:成功体験には引きずられない、第1章:自分流の経営”で戦う、第2章:会社を変革するために戦う、第3章:少数精鋭でムダと戦う、第4章:世界を舞台に戦う、第5章:戦うトップの条件、第6章:日本企業よ共に戦おう、以上の構成です。

ほんの一時だけ会社が好成績を収めたとしても、それは本当の成功とは言えません。本当の成功とは、どんな厳しい時代にも利益を出し、それを出来る限り長く続けることです。経営者には、「景気が悪いから」という言い訳は許されません。ブームがあった後は必ず落ち込むものです。それを想定し、手を打っておけば、悪い情勢になってもある程度は乗り切れるわけです。

私は財務について複雑には考えません。「会社が潰れるときは借金で潰れる」というのが私の経験則で、有利子負債は少ないほど良いと考えています。経営の指標としては、配当性向やROE(株主資本利益率)などよりも、当期純利益を見るようにしています。毎期の純利益を上げていくのが、最も簡単明瞭な考え方だと思っております。

社長が戦わなければ、会社は変わりません。経営者が強力なリーダーシップを発揮しなければ、会社の改革など出来るはずがないからです。会社を変えられる人の条件として大切なことが2つあります。それは、まず会社をどう変えるかという目標をはっきり持っていること、そして現状を正確に判断できるということ、この2つです。この2つの能力を持っていることが大前提となります。

「やって見せ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ」。かって、山本五十六長官はこう言ったそうですが、まさにその通りです。私はこの言葉が好きで、人を動かし育てる要諦は、この言葉に尽きていると思っています。

社長は取締役会で選任されます。ですから、取締役の支持を失った場合、改革の目標がどんなに良くても仕事は出来ませんし、逆に、取締役の支持があればかなり自由に改革できます。

わが社の研究者には、高い能力をもった人材がいると自負しております。でも、問題なのは、研究者の研究がいかによかろうが、それが成果につながるようにしなければ、単なる研究のための研究で終ってしまうということです。研究者は自分たちの世界にはまり込んでしまいがちで、マンネリになってしまう危険があります。これは、研究以外のあらゆる分野についても言えることです。毎日のようにそれをぶち破るのが、私の仕事だと考えています。

企業の合理化について、私の基本的な考え方は、少数精鋭主義ということになります。20人の官僚よりも1人のプロということです。私はいつでも、まず事業が最初にあるという考え方をします。つまり、仕事の性質によって、設備も人員の数も決まってくるということです。人が育たなければ、組織など何にもなりません。極端な話、組織を変えるだけなら、1時間で変えられます。しかし人を育てるには数年以上かかります。人を育ててこその組織なのですから、人が育たない組織改変など無意味です。

現在、信越化学の本社は賃借です。自社のオフィスビルなど買う気は毛頭ありません。なぜなら、もしオフィスビルなどを買えば、それはわが社の没落の始まりだと思うからです。現在、手持ち現金が3000億円以上ありますから、そんなものは買おうと思えばすぐにでも買えます。私が嫌なのは、引越しによって1ヵ月くらい使ってしまうことになりそうだからです。

世界に通用する企業となるには、経営者に事業家としての手腕と国際感覚が必要です。1976年、私にシンテック株のすべてを買い取るよう要請がありました。当面必要だったのは、当時の金額で約28億円でした。この年の前年度(75年)の信越化学の当期利益は6億5000万円でした。これはわが社にとってかなり大きな賭けでした。当時の小田切社長は決断しました。この決断は、社運を左右する重いものでした。シンテックが子会社となった当初、私は会長、実際の経営はアメリカ人社長に任せました。ところが、実際に経営を任せてみると、どうも業績が思わしくありません。それに加えて、会長の私とは考え方の違いがありました。2年の契約のところ、違約金を払って1年で辞めてもらいました。海外でも自分の経営哲学は貫くべきです。

リスクを踏まなければ、事業の発展は見込めません。株式会社の起源となったのは大航海時代の冒険商人たちが行ったビジネスですが、当時も今も、事業はリスク抜きに語ることは出来ないものです。発展を望むならば、リスクは避けて通れないわけです。

私は、経営者には判断力、先見性、決断力、執行能力が必要と考えています。この4つはいずれも、経営者として仕事をするために直接的に必要となる資質です。でも、これだけではまだ十分でなく、経営者には、もう1つ人格的な要素が必要です。それは、誠実さと温かさです。また、経営には、意志と努力だけではどうにもならない部分があります。ひらめきと言う要素もそうで、これなどは経営者には欠かせない資質ですが、どうやらこれは天分によるもののようです。

今、私は必死になって仕事をしています。本当に、情けないと思うぐらい必死です。景気が良ければここまでやらないのですが、あまりにも状況がひどいので、そうしていないと、いつ会社が危機に陥るかわかりません。これからの時代、日本企業は商品のオリジナリティが求められると思います。オリジナリティが高く、プレミアムが稼げれば、当然付加価値が高いものは、高く売れるということです。これとは逆に、付加価値が低く、人件費が大きな問題になるようなものは、これからの日本ではだめです。人件費を比較すると、日本はマレーシアの7〜10倍、中国の20〜30倍と言う高い賃金水準です。技術価値の低いものに頼っていては、日本の産業は急速に空洞化してしまいます。人件費でいえば、これから日本は中国の30倍の価値を創造していかなければ、生き残れないわけです。それには日本が高度な知能集団、技術集団になる必要があります。海外で生産するにはリスクの高過ぎるような高度な技術や製品を開発し、特許とレベルの高いノウハウで、コストの安い海外品とすみ分けるわけです。

現在、景気は非常に悪いですが、私は決してあきらめていません。チャンスは必ずあるはずです。とにかくそれを見つけて必ず物にしてやろうと常に思っています。チャンスを見逃さないためには、先入観を持たないことが大切です。私には固定した経営モデルというものはありません。強いて言うならば、それは型にとらわれないモデルです。経営においては、客観情勢を正確に理解して、いかにすれば一番会社に有利かをその場その場で判断していかなければなりません。

経営者の仕事は激務です。ましてや、会社を改革するには大変なエネルギーが必要となります。私の場合、そのエネルギーの源泉は一種の使命感です。私はこれまで常に戦ってきました。戦えば戦うほど、社会には豊かに物が溢れ、利便性が増していき、人々の生活を向上させてくれる。経済の戦とは、そうしたものだったはずです。日本企業の経営者である我々が勇気を持って戦えば、日本は必ず明るく豊かになります。我々の会社に、そして日本に明るさを取り戻そうではありませんか。

以上が本書の概要で、著者の金川千尋氏は1950年東大卒業後、三井物産を経て62年に信越化学に入社、現在代表取締役社長です。米国テキサス州名誉州民、ヒューストン市名誉市民、97年には、ルイジアナ州名誉州代表・名誉州務長官を務めました。著者は本書のなかで題名が示す通り“戦う”という言葉が頻繁に出てきます。経済はよく戦にたとえられます。というように、経済戦争も勝つか負けるかの真剣勝負と言っていいでしょう。負ければ、倒産といった悲劇もあります。そうなると、株主は勿論、従業員やその家族も悲劇に巻き込まれ、取引先、消費者にまで迷惑がおよびます。企業の舵を仕切るのは社長ですから、その責任は重大です。その意味から言っても、著者がいみじくも述べているように「エネルギーの源泉は一種の使命感」です。この言葉に経営者としての重みと共に、金川社長の素晴らしさがあると思います。社長がその気にならない限り、なにも変わらないし、何も生まれないでしょう。この厳しい環境は、経営者に哲学を求めているとも言えます。どんなに厳しい環境であろうとも、企業は環境適応業、環境創造業です。


北原 秀猛

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•  金川千尋
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