HOME
会社概要
セミナー
教育関連
海外情報
書籍
お問い合わせ
ワールドネット
HOMEUBブックレビュー詳細





逆常識の経営 勝利を勝ち取る逆説思考と現場思考表紙写真

逆常識の経営 勝利を勝ち取る逆説思考と現場思考

著  者:牧野 昇
出 版 社:KKベストセラーズ
定  価:1,600円(税別)
ISBN:4−584−18697−9

本書は、第1章:“経済”米国型モデルに疑いを持て、第2章:“経営”スピードと変革がキーワード、第3章:“社会”逆説発想でプラス思考に転ぜよ、第4章:“技術”日本は世界ナンバー2である、の構成になっている。

日本のポテンシャルは世界のトップレベルだ。悲観主義を捨て、現状を打破する気概を持つべきだ。いま世界の成長率地図は、俗に「7.5.3.1.0」で表される。7は中国、以下アジア8ヵ国平均が5%、米国3%、EU1%、日本は最下位の0%だ。ポテンシャルは高いのに成長率が低い。私はこれを「豊かさのなかの不況」と呼んでいる。デフレ克服のための4つの提言として、(1)市場にある債権・証券を買い取る、(2)デノミを実施する、(3)相続税なしの無利子国債を発行する、(4)インフレ政策をとる、を挙げる。

本格的なデフレ対策を急ぐべきだ。日本経済の最大の課題は、膨大な需給ギャップにある。それを供給側の改革だけで解消しようというのはどう考えても無理がある。具体的にはIT、バイオ、ナノテクノロジー、環境・エネルギーなど、これから大きな市場に成長することが見込める分野へ積極的かつ集中的に予算を投じるべきだろう。そもそもこの国の経済がおかしくなったのは、80年代半ばに「双子の赤字」に苦しむ米国の政治的圧力に屈して、円高誘導、さらには内需拡大のための金融緩和政策を余儀なくされ、未曽有のバブル経済を招来したことに原因がある。つまり米国の言いなりに動いたからバブルが発生した面が大きい。

バブル崩壊後は、日本的経営への自信喪失から、年功序列も終身雇用も次々に捨てようとしている。しかし、私は、年功序列、終身雇用の日本的経営は、いまでも十分有効だと思っている。

景気というのは、簡単に言えば、みんなが無駄遣いをしてくれないとよくならない。長期不況の大きな原因の1つに個人消費の低迷がある。日本人がモノやサービスを買わなくなった理由は2つある。1つは、リストラ失業への不安、老後の暮らし向きの不安などと、「もう欲しいモノがない」という消費の飽和現象だ。住宅は、持ち家比率が約7割に達している。これは米国と並んで世界一である。ドイツは3割程度しかない。

1980年代、企業の寿命30年と言われた。しかし、いまや企業の寿命ははるかに短くなった。企業価値(株価×株数)の上位100社を取ると、リスト在位期間は平均7年しかない。米国の経営者が最も多用する言葉は「スピード」である。いまや日本の経営者も「スピード」こそ最も重要な経営テーマであると強く認識すべきである。

経済産業省によると、国内のエレベータ生産額は2000年が約2216億円。5年間で2割以上も市場が縮小したという。新設台数の減収と価格の低下が原因である。その一方で保守管理市場は、年間4400億円を稼ぎ出すようになっている。2000年の新設台数は24000台。しかし、保守メンテナンスの対象になるエレベータ総数は約46万台である。この既設のエレベータ管理の方が、いまや新設より儲かるのである。メンテナンス・ビジネスは、今後あらゆる分野で急速に拡大していく。

市場、生産、組織の3つの視点からイノベーションの動きをみると、次のようになる。

  1. 市場:プロダクトインからカスタムインへ
    「国内市場→海外市場」、「小売店→大型スーパー→コンビニエンス化→ネット販売」などの変化を指摘することができる。
  2. 生産:脱ベルトコンベアの「1人屋台生産方式」
    この方式は、製品の組み立てから検査、包装まですべての工程を1人で行う生産システムで、生産方式の発展形と位置づけられている。
  3. 組織:日本的経営の後退とベンチャー企業の台頭
    中国と日本の製品別製造台数の世界に占めるシェアを見ると、VTRは23%対3%、カラーテレビは25%対1%、デスクトップパソコンは12%対3%で、圧倒的に中国に分がある。つまり部品点数が数千点のモノに対しては中国が優位にある。これに対して部品点数が数万点になる自動車は4%対18%、NC工作機械は6%対24%と逆に日本が圧倒的に優位に立つ。このことから日本は部品点数万点のインテグラル(調整)型のハイテク製品が国際競争力に優れていることがわかる。

D・ゴールドマンによると、IQ(知能指数)は生得的なもので大きな改善は難しいが、EQ(感性指数)は学習によって大きく伸ばすことが可能だと言う。では具体的にどうすればいいのか。

  • プラス思考(楽観性)
  • フローの形成。自分の得意な分野で最高の調子を出せる状態をいう
  • 良好な人間関係

トム・ピータース(「経営破壊」の著者)によれば、転職に成功するには3つのRが大切であるという。レピュテーション(評判)、レジュメ(履歴書)、ローラーデックス(人脈)である。この3条件は米国における考え方だが、いずれも日本でも十分通用する。

モノづくりには研究、開発、生産と3段階あり、それぞれに能力が要求される。米国の場合は、圧倒的に研究の部分が強い。つまりオリジナリティのある発明、発見に優れている。ただし発明したらそれっきりということが多く、その先が続かない。その点、日本は発明はいま一つだが、みんなで力を合わせて何かを作り出す、開発、生産には向いている。

日本には「あうんの呼吸」という言葉がある。すなわちある部分を「暗黙知」でカバーすることができるが、米国はできない。米国における日本の特許件数は1位米国54.2%、日本2位20.9%、3位ドイツ6.2%である。

以上が本書の概要である。頭が疲れたときに、気楽に読んでいただきたい本である。


北原 秀猛

関連情報
この記事はお役にたちましたか?Yes | No
この記事に対する問い合わせ

この記事に対する
キーワード
•  牧野昇
•  需給ギャップ/td>
•  カスタムイン
•  EQ


HOMEUBブックレビュー詳細 Page Top



掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はセジデム・ストラテジックデータ株式会社またはその情報提供機関に帰属します。
Copyright © CEGEDIM All Rights Reserved.