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仕事の報酬とは何か表紙写真

仕事の報酬とは何か 人間成長をめざして

著  者:田坂 広志
出 版 社:PHPエディターズ・グループ
定  価:1,150円(税別)
ISBN:4−569626−34−3

田坂氏の著書はすべてが本質論をベースにしており、我々日本人が忘れかけている心の持ち方や考え方などを思い起こさせてくれるものだ。今回の「仕事の報酬とは何か」も正に本質論で切っている。本書の構成は第一話から第9話に分かれており、本質論を展開している。

仕事の報酬とは何か。「仕事の報酬は給料や収入だ」と答えるならば、残念ながら、そのビジネスマンは大切なものが見えていない。では、その「本当に大切な報酬」とは何か。それは「目に見えない報酬」である。目には見えないけれども、決して見失ってはならない、大切な報酬がある。第1が「能力」である。一生懸命に仕事をすると職業人としての「能力」が身につく。良い仕事を残そうと努力を通じて職業人としての「能力」が磨かれる。第2が、「仕事」。一生懸命に仕事をすると、良い「仕事」を残すことができる。職業人としての能力を磨くことによって、優れた「仕事」を残すことができる。第3が、「成長」。一生懸命に仕事をすると、人間として「成長」できる。仕事の困難と悪戦苦闘し、仕事の仲間と切磋琢磨することによって、1人の人間として「成長」していくことができる。それは、ある意味で、「最高の報酬」である。

「報酬」というものには2つの種類がある。1つは「自ら求めて得るべき報酬」、もう1つは「結果として与えられる報酬」の2つだ。「自ら求めるべき報酬」は、「能力」「仕事」「成長」である。「結果として与えられる報酬」は、「収入」や「地位」である。この「結果として与えられる報酬」を「自ら求めて得るべき報酬」であると考えた瞬間に、我々は大きなジレンマに陥る。それは、「能力」が磨かれないのである。なぜなら、「早く職業的能力を磨いて、早く経済的報酬に結び付けたい」という性急な心の姿勢に陥った瞬間に、我々はその「職業的能力」を磨いていくために不可欠な「忍耐力」や「粘り強さ」を失ってしまうからだ。そして、「少しでも早く、少しでも楽に」という安易な心に流されてしまうからだ。いかなるスキルも、センスも、ノウハウも、テクニックも、仕事の現場での厳しい修練を通じて忍耐力を持って粘り強く学んでいかない限り、決して身に付くことはない。

プロフェッショナルとして「スキル」を学び、「腕を磨いて」いくために最も大切な条件は、優れた「師匠」を見つけることである。そして、その師匠からいったい何を学ぶか。第1は「呼吸」。呼吸とは、「リズム感」と「バランス感覚」である。第2の基本は、「着眼」。それは「反省」をするためである。「反省」を通じてこそ、「スキル」を改善していけるからだ。しかし、この「反省」ということが難しい。なぜなら、「反省」には高度な「技術」があるからだ。その技術を身につけないと、反省をしているつもりが単なる「懺悔」や「後悔」になってしまう。反省の技術は「着眼」なのだ。その「着眼」というものが、ある意味での「見識」であり「知恵」である。それは、言葉を換えれば「コツ」や「ツボ」と呼ばれるものである。そしてこれは、「師匠」から学ぶべきものである。第3の基本は「心得」。プロフェッショナルの優れた「スキル」の奥には、必ず優れた「心得」がある。そのことである。

師匠とは与えられるものではない。自身が自ら見つけ出すものである。自身の心が本当に謙虚であるならば、周りに「師匠」と仰ぐべき人物は必ずいる。「私淑」という言葉は、香りのある言葉である。心の中で「あの方は私の師匠だ」と思い定め、その方を遠くみつめながら学ぶ。この「私淑」ということを、されるべきであろう。周りに「師匠」を見出そうとするとき、忘れてはならない一つの心得がある。それは「一芸」を学ぶという心得である。「反面教師」という言葉は、本当は素晴らしい言葉である。他人の中にある「欠点」は、必ず自分の中にもある。問われているのは「自らの姿勢」であり、それに気がつくか、否か。例えば、「謙虚な心」が無ければ、傍らの「師匠」に気がつくことはない。そして、「求める心」もそうである。

どうすれば我々は仲間との「共感」を生み出していけるのか。他の誰でもなく、自らが仲間に「共感する」ことである。自分に対して仲間の「共感」を得ようとするのではなく、自分自身が仲間の気持ちに深く「共感する」ことだ。

「人間としての成長」とは何か。それは「心の世界に処する力」であり、それが「人間としての成長」ということの意味である。「心の世界」とは何か。それには3つの世界があり、「自分の心の世界」「相手の心の世界」「人間集団の心の世界」である。そして、それらの世界にそれぞれ「表面意識の世界」と「無意識の世界」がある。

いかにして人間を高めるか。それは、「格闘」することであり、「人間の心」と格闘することだ。なぜなら、「人間の心」と格闘するとき、我々の心は最も成長する。では、「格闘」とは何か。相手の心と正対し、相手の心を理解しようとすること。そして、相手に心を伝えようとすることである。

日々の仕事の中から、「無限の報酬」を得ることができるのだ。「目に見えない報酬」を見つめる力。「目に見えない報酬」を求める心の姿勢。その力であり、心の姿勢なのである。たとえ遅々とした拙い歩みであろうとも、たとえその道の途上で力尽きようとも、「人間成長」を目指して登り続けていった1人の人間の後ろ姿を見つめている。そして、その若き世代の方々も、いつかその山の頂きに向かって歩み始める。我々の残したその後ろ姿の記憶を胸に。

以上が本書の内容概要である。冒頭に述べたように、本質論の話で、読者の1人としてまったくその通りだなと感銘した。何か私たちが忘れていたものを思い出させてくれた気がする。今、「仕事の報酬は何ですか?」と質問したら、給料とか昇進と答える方が多いのではないだろうか。目に見えない3つの報酬は、「能力・仕事・成長」なのである。


北原 秀猛

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