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そうだったのか!現代史パート2表紙写真

そうだったのか!現代史パート2

著  者:池上 彰
出 版 社:ホーム社
定  価:1,700円(税別)
ISBN:4−8342−5076−8

「人はみんな平和を求めているはずなのに、なぜ地球上から戦争がなくならないのですか?」

こんな質問を大学生からされて、思わず絶句したことがあります。あまりに素朴な、しかし、それだけに根本的な疑問だったからです。確かに誰でも平和を望んでいるはずです。でも、「奴隷の平和なら戦争のほうがマシだ」と考える人もいるのです。そうなると、いったい「平和」とは何でしょうか。「戦争がない状態」が平和なのでしょうか。

本書は、第1章:イラクが軍事大国になるまで、第2章:アフガニスタンが戦場になった、第3章:パレスチナの大地は再び血塗られた、第4章:チェチェンの人々、第5章:北朝鮮はなぜ「不可解」な国なのか、第6章:インドとパキスタンはなぜ仲が悪いのか、第7章:核兵器の拡散、第8章:チェルノブイリの悲劇、第9章:アウン・サン・スー・チー、第10章:東ティモール独立、の10章に分かれています。

2002年、中東のイラクが国際ニュースに大きく取り上げられるようになりました。この11月、国連の査察団がイラク国内に入り、大量破壊兵器の捜索を開始しました。イラクは1991年の湾岸戦争後、保有していた大量破壊兵器を破棄することを国際社会に約束し、その査察が続けられてきました。1998年にいったん中断してきましたが、それ以来の査察再開です。ブッシュ大統領は2002年1月29日、アメリカ議会で演説してイラン、イラク、北朝鮮の3ヵ国を「悪の枢軸」と決め付けています。さらに、イラクに関してこうも述べています。「引き続き米国に対する敵意を誇示し、テロを支援している。イラクの現政権は過去10年にわたって炭疽菌や神経ガス、核兵器の開発を企ててきた。この政権はすでに毒ガスを実際に使用して何千人という自国民殺害し、死亡した子供たちの遺体の上に母親たちの遺体を積み重ねて放置した。この政権は国際査察に同意しておきながら、査察官を追い出した。この政権には、文明世界の目からは隠しておきたい何かがあるのだ」。ブッシュ大統領は、このようにイラクに対する敵意を示しました。

「大量破壊兵器」とはすべての核兵器、化学兵器、生物兵器のことです。この国連の査察で、イラクが核兵器の開発を進めていたことが明らかになりました。あと6ヵ月もあれば、イラクは核兵器を完成させていたのです。また、化学兵器をミサイルの弾頭として装填していたことも突き止めました。

イラクは、イギリスが作り上げた人工国家です。この辺りは、チグリス川、ユーフラテス川の沿岸に発展した古代メソポタミア文明の発祥地として知られています。面積は日本の1.2倍。人口は約2425万人です。サダム・フセインは1937年4月28日、首都バクダットから北150キロのチグリス川近くの町テイクリート郊外の農村で生まれました。1957年、20歳で「アラブ世界統一」を目指すバース党(アラブ復興社会党)に入党します。1958年、イラクではイラク軍部のアブル・カセムがクーデターを起こし権力を掌握します。フセインはカセム暗殺を試みますが失敗します。足に銃撃を受けて負傷したフセインはシリア、そしてエジプトへ亡命します。カセムは1963年、アブド・アリフによって殺害されます。バース党は、このときアリフ政権樹立に貢献したことから、政権内部で台頭します。当時26歳だったフセインは直ちにエジプトから帰国し、バース党内部の秘密警察のトップに任命されます。その後、副大統領に抜擢、1979年大統領が健康上の理由で辞任します。フセインは42歳で大統領に就任します。

東西冷戦の中で、イラク軍を強大な組織に育て上げたのはソ連でした。アメリカは、これに対抗して隣国イランを支援しました。しかし、イランでイスラム原理主義の革命が起き、イランが反米に転じると、アメリカは今度はイランに対抗してイラクを支援しました。フセイン大統領がアメリカの支援を受けて、少々のことではアメリカが文句を言わないだろうと誤解したことは十分考えられます。その誤解が1990年8月2日、隣国クウェートへの侵攻となります。これが「湾岸危機」です。イラクは原油の輸出先として、ロシア、フランス、中国を選んだのです。それは、常任理事国に国連でイラク寄りの立場をとってもらえるように、原油を「エサ」に使ったのです。

2002年3月29日、中東のヨルダン川西岸のパレスチナ自治区にある都市ラマラにイスラエル軍戦車部隊が侵攻。パレスチナ自治政府の総合庁舎を包囲して、建物を砲撃しました。建物の壁に大きな穴が開き、兵士が突入。中にいた自治政府のアラファト議長の警護隊と銃撃戦になりました。イスラエル軍は建物の電気と電話を切断し、水道も止め、アラファト議長とその側近を監禁状態におきました。ラマラで監禁されたアラファト議長は、携帯電話を使って世界各国の首脳に電話をかけ、自らがおかれた現状を訴えました。この様子は、中に入ったアメリカのテレビ局が世界に報道しました。

イスラエルによるパレスチナ占領は、いまも続いています。住んでいた土地を追われて狭い場所に押し込められ、差別されるパレスナ人たち。未来への展望をなくし、自分たちをこのような境遇に追い込んだイスラエルへの憎しみが募ります。絶望にかられたパレスチナ人の若者が自らの体に爆弾を巻きつけ、イスラエル国内の雑踏や路線バスの中で爆弾を爆発させます。自分も死にますが、周囲のイスラエル人を巻き添えにして死亡させることが目的です。するとイスラエル政府は、これに対する報復として、パレスチナ自治区に戦車で侵攻したり、戦闘機で自治政府の建物を爆撃したりします。「憎悪の報復の連鎖」が続いているのです。イスラエル建国のきっかけになったのは、第2次世界大戦中にナチス・ドイツによって引き起こされたユダヤ人虐殺でした。ドイツ本国での犠牲者18万人を含め、ヨーロッパ全体で約600万人が殺されました。第2次世界大戦が終わって、ユダヤ人虐殺の実態が判明するにつれ、国際世論はユダヤ人に同情的になります。「ユダヤ人独自の国をつくりたい」という主張に耳を傾けるようになります。ユダヤ人は、紀元前にエルサレム周辺に王国を築いていましたが、1世紀にローマ帝国によって滅ぼされ、ユダヤ人たちはヨーロッパ各地に離散しました。それ以来、キリスト教社会でさまざまな迫害を受けます。「こんな迫害を受けるのも、自分たちの国がないからだ」と考えた人たちが、ユダヤ王国のあった場所に自分たちの国をつくる運動を始めたのです。その場所がパレスチナでした。ユダヤ教徒は、「旧約聖書」を信じる人々です。「旧約聖書」によれば、「カナンの地」と呼ばれるパレスチナに移ってきたアブラハム(ユダヤ人の祖先)は、神ヤハウェを唯一神として信仰すると誓いました。これに対して神は、「この地をあなたの子孫に与える」と約束。こうして「約束の地」という考え方が生まれたのです。

いまの中東問題をややこしくさせた原因はイギリスにあります。第1次世界大戦が始まるまで、パレスチナを含むアラブ地方はオスマン・トルコの領土でした。第1次世界大戦が始まると、オスマン・トルコはドイツ側について、イギリスやフランスと戦いました。このときイギリスは、トルコの支配下にあったアラブ人を味方につけるため、イスラム教の聖地メッカを守っていたアラブ人の有力者フセインに対して、戦後アラブの独立国を認めると約束しました。イギリスの約束を信じたフセインは、1916年アラブの独立を宣言し、トルコに対する「アラブの反乱」を起こします。

国連の分割案にもとづき、1948年5月14日、初代イスラエル首相ダヴィド・ベングリオンが「イスラエル建国」を宣言しました。その翌日、イスラエル建国を認めない連合軍(エジプト、シリア、ヨルダン、レバノン、イラク)がイスラエルを攻撃。第1次中東戦争が始まったのです。第1次中東戦争の結果、イスラエルは国連分割決議で割り当てられた分を上回る地域を占領しました。その広さはパレスチナ全土の77%を占めました。パレスチナの残りの地域は、ヨルダンとエジプトが占領しました。パレスチナは、事実上3つに分断されたのです。中東では、これまでに計4回もの戦争が起きました。イスラエルによって奪われたアラブ人の土地を奪い返そうと作られた組織が、パレスチナ解放機構(PLO)です。

私の手元に、北朝鮮の小学校で使われていた教科書があります。そもそもこれが紙だろうかと思えるほど粗悪な紙質に、かすれたようなハングルが印刷してあります。教科書は、日本のようにひとりに1冊ずつ配布されるわけではありません。1人が使用すると、進級するとき次の子供に渡すのです。何年にもわたって何人もの子供たちに使われてきた教科書ですから、すっかりボロボロになっています。文字がかすれたところは、後からなぞった形跡があります。大事に大事に教科書を扱っていることが伺えます。次の世代を担う子どもたちに、こんなに粗悪な教科書しか与えることができない北朝鮮。ところが。金日成と金正日について学ぶ教科書だけはカラー印刷なのです。この教科書を見るだけで、北朝鮮の悲惨な経済状態と、にもかかわらず、金日成と金正日に対する個人崇拝が強調される国家の意思が読みとれます。2002年9月、北朝鮮の金正日総書記は、日本人を拉致していたことを認めて謝罪。拉致されていた日本人のうち、5人が10月に日本に帰国しました。拉致疑惑に対して、これまで北朝鮮は「そのような事実はない。そういう問題を提起することは、我が国に対する侮辱である」と反発してきました。それがすべてウソだったのです。拉致された残りの日本人についての北朝鮮の説明は誠意に欠けるもので、真相は明らかになっていません。そして10月にはもう一つ。北朝鮮を訪問したアメリカの特使に、北朝鮮は核開発を進めていることを認めたのです。さらに北朝鮮は12月になって、国内の原子力施設に常駐していたIAEA(国際原子力機関)の調査官を国外に退去させ、2003年1月には、核拡散防止条約(NPT)から脱退を宣言しました。核開発へ向けてまっしぐらの姿勢を示したのです。

北朝鮮に関しては、わからないことばかりです。そもそも、なぜ日本人を拉致したのか。住民がどうして命の危険を冒してまで亡命しようとするのか。なぜ北朝鮮はあれほどまでに貧しい国になってしまったのか。にもかかわらず、多額の資金を注ぎ込んで、核兵器の開発を進めようとしているのか。金日成と金正日の親子は、どうしてあそこまで個人崇拝されているのか。このような疑問が、次から次ぎへと湧いてきます。

ソ連によって作られた国家である北朝鮮は、スターリンの面接試験に合格した金日成を国家の指導者にしました。その金日成は、同志を次々に粛清することで権力の基盤を確立し、個人崇拝のシステムを完成させていきました。このシステムは息子の金正日が世襲しましたが、個人崇拝は農業を非科学的なものにしてしまい、大飢餓の発生を招きました。また、軍備に資金を注ぎ込み、核開発を進めて、国際社会からの孤立化を自ら招いてしまっているのです。北朝鮮を社会主義国あるいは共産主義国と呼ぶ人がいますが、いまや北朝鮮は社会主義や共産主義のイデオロギーとは無縁の国家です。封建制度の「王朝」になってしまったのです。

以上10章のうち、現在、一番新聞をにぎわせているイラク、パレスチナ、北朝鮮の3つの章を取り上げました。われわれは世界の動きに敏感でなければなりませんが、そのためには歴史と地理を知ることが重要です。またそれらを知らなければ理解できません。イラクはイギリスが作り上げた人工国家です。その経緯は歴史を知らなければ分かりません。その意味からいっても本書を読んで戴くと、いままで分かりにくかったことが理解できます。文章は平易ですし、地図もついており「現代史こぼれ話」も載っていて読みやすく工夫されています。


北原 秀猛

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