HOME
会社概要
セミナー
教育関連
海外情報
書籍
お問い合わせ
ワールドネット
HOMEUBブックレビュー詳細





リーダーシップの本質表紙写真

リーダーシップの本質 真のリーダーシップとは何か

著  者:堀 紘一
出 版 社:ダイヤモンド社
定  価:1,500円(税別)
ISBNコード:4−478−36052−9

民主主義とは、全体の幸福を実現するための基本理念である。国家も企業も、つねに崩壊することなく、繁栄していかなければならない。といって、その過程としての状況判断、意思決定に成員全員が関わる必要はない。なぜなら、状況判断、意思決定にはきわめて高い能力と技術、知識と経験が必要だからである。そこに大衆全員が参加することによって、判断・決定の誤りが生まれる危険性が高くなる。自分の利益のためでなく組織全体のことを考え、犠牲的精神をもって組織を向かうべき方向へとリードしていく意志と能力を持ったリーダーの不在は、とくに政治の分野において甚だしく、国民を不幸にしていると言わざるを得ない。と言うのも、リーダーのいない民主主義は民衆を混乱させるだけだからである。

リーダーシップは才能に恵まれようと一見恵まれていまいと、学んで掴み取るものである。人間性という、とらえどころのない概念も同じである。人間は意識して努力することにより、十分人間性を高められる。そう私は信じている。

本書は第1部:「リーダーシップの本質」、第2部:「リーダーシップの方法」に分かれており、さらに7章に細分化された構成になっている。

リーダーの仕事は、製品を開発し、作ることではない。商品を売ることではない。会社が行っている事業の個別の仕事をすることだはなく、その事業をうまく進めるための作戦を決め、社員に周知徹底させて、速やかに実践させることである。リーダーは個々の社員(構成員)が何を目的とし、そのために何をしなければいけないかを理解させなければならない。つまりリーダーは社員に方向を示し、組織に方向性を与えなければいけない。事業を進めていくうえでは原理原則を確立し、貫いていくのが基本である。原理原則を守っていくとき、組織は最大限の力を発揮する。強い組織をつくるためには、直接戦う人の迷いを吹っ切ってあげる必要がある。また、強い組織をつくるには下位概念の人に責任を押しつけないことである。

ビジネス市場の変化はますます加速の度を強めている。未経験の新しい状況に対しても、リーダーは正しい判断をし、正しい決定をしなければならない。そのとき彼は、情報のなかから変化の性格、向かっている方向、本質をできるだけ読み取り、あるいは類似性、共通性をもつ史実に照らすなど、有効かつ可能と思われる手段を尽くすべきである。このとき重要なのは、どの角度からも眺められる柔軟な発想をもつことであり、分析、判断の経験を重ねることによって研ぎすました勘を働かせることである。リーダーシップを行使するにはノウハウや技術が必要とされる。しかしそれらのノウハウと技術は、リーダーシップの本質を理解し、リーダーとしての理念をもって行使したとき初めて意味のある力として働く。

リーダーの果すべき役割とはなんだろうか。

  1. まず「ビジョン」を示す。その組織によって何を実現しようとしているのか、何を具現化したいのか。
  2. 「戦略」である。ビジョンに近付くため、だからこうしよう、というやり方である。
  3. ビジョンを実現するための戦略を、どういう体制で実行していくのかという「組織」。
  4. 「人事」である。組織体制の中で、誰がどういう部分を受けもつのかということである。
  5. 「カルチャー」である。

リーダーはそのすべてに影響を与える存在であり、その中心にいてもっとも大きな役割を果さねばならない。

リーダーシップには、「フォーマル・リーダーシップ」と「インフォーマル・リーダーシップ」の2つの形態がある。“フォーマル・リーダーシップ”とは、組織から権限を与えられた人間に付随するリーダーシップである。そこでは、その人のリーダーシップを行使する内容に関わりなく、リーダーとして権威づけられており、リーダーとして行動できる。これに対して、正式な権限は何も与えられていないが、人徳があるとか説得力があるということで自然な成り行きによってリーダーシップを発揮している人のもつリーダーシップを“インフォーマル・リーダーシップ”と呼んでいる。真のリーダーには、自然に人がついてくるものだ。小細工を弄してみても、心から人を惹きつけることはできない。人が前向きの気持ちでついていきたくなるリーダーとはどういうものかを考え、学ばなければならない。リーダーの権力は強大である。その理由は、リーダーは資源配分の決定力を持っている。企業組織の資源とは、「人、物、金」であり、その資源をどのように配分するかを最終決定するのがリーダーである。

組織とは何か。組織が成り立つためには、2つの条件を満たす必要がある。第1の条件は、これを構成する人間が3人以上いることである。会社は2人でもつくれるが、1対1の関係は個が集団となる以前の形態であり、この関係を超えて初めて、組織としての共通性も生まれてくる。第2の条件は、目的を持つということである。もともと組織とは、何かをするという目的を達成するために人が集まり、体制を整えるものである。これからは、企業自身が「わが社は何のために存在しているのか」と企業目的を意識、確認し、自問する時代になるだろう。

企業が収益をあげるための基本は、意味があり、価値のある商品またはサービスを提供することである。本当に意味があって価値も高いものは、太陽が照るように、必ず認める人、お客を迎えることができる。ビジネスの基本は利益そのものを追いかけることではない。ビジネスの基本はいかに「付加価値」を生みだすかというところにある。それは同じ業界でのライバル企業同士の競争の焦点でもある。そして付加価値生産に成功すれば、それこそ太陽が照るがごとくお客さんが認めてくれるようになるだろう。

リーダーが果すべき仕事は5つある。
(1)目的またはゴールを設定することである。
(2)現在地がどこかを認識することである。
(3)組織としての活動をしていく時間の経過の中で、どのような環境変化があるかを読むことである。
(4)この3つのことをした後に、どういう戦略をとって現在地から目的地までたどり着くかを策定することである。
(5)直接任務にある者を励まし、叱咤して実行することである。

<リーダーに必要な4つの能力>
  1. 観察=observation
  2. 状況判断=orient
  3. 意思決定=decide
  4. 繰り返し行う=loop

この4つの行為に関する能力、観察力、状況判断力、意思決定力、行動力はいずれも組織のリーダーに必須のものである。

「企業の寿命30年」という説がある。企業が設立されて30年も経つと倒産してしまうわけでは必ずしもない。ただ隆盛を誇る日の出の勢いはそれほど長くは続かない。この世界に永遠に続くものはない。強大で不滅のように思われたローマ帝国でさえ滅び、栄華を極めて終わりがないように見えた唐王朝も終焉を迎え、万全の防御体制を布いた徳川幕府もいとも簡単に倒されてしまった。このような強大な権力でさえ衰亡するのである。まして民間企業など、いつまでも大きいまま存在し続けられるはずはない。だとすれば、一番大切にしなければならないのは自分自身である。

組織はリーダーシップを学ぶ不可欠の場である。自分たちの会社をよくするためには、管理職だけでなく、一般社員の一人一人がオーナーシップをもち、責任感をもって仕事をすることがもっとも望ましく、理想的なあり方である。管理職ではない社員にはフォーマル・リーダーシップはないが、インフォーマル・リーダーシップを得ることは可能だろう。

これからの真のリーダーは、地位を与えられてからインフォーマル・リーダーシップを身につけたのでは間に合わない。インフォーマル・リーダーシップを身につけたうえで、課長、部長、社長と地位に応じたフォーマル・リーダーシップを備えていき、責務を遂行していくのでなければならない。だとすれば、地位がなくてもリーダーシップを発揮できるようにすることを考えなければいけない。

以上が本書の概要である。実際日本でも諸外国でも、第2次大戦後に急成長して世界的な企業となったところは、必ずリーダーシップをもった優れた経営者がいたことは確かだ。つまりは天性のリーダーシップ能力を自分の中に発見して、これを自分で磨いてきたのではないか。GEのジャック・ウェルチやIBMのルイス・ガースナーなどは典型的なリーダーシップを発揮した経営者であろう。それぞれが経営哲学を明確にもち、リーダーシップを発揮しながら、その哲学を社内に浸透させていき会社を蘇生させている。日本では松下電器の創業者である松下幸之助、ホンダの創業者 本田総一郎などは強烈なるリーダーシップを発揮して世界の企業に育てている。著者があとがきで「リーダーになる人は若いときから常人とは異なる哲学、思考、行動をしなければならないという考え方もある」、と述べている。いずれにしてもリーダーシップを発揮するには私利私欲から離れ、状況を見極め、自分の責任において決断できなければならない。自分の行動と照らし合わせて読んでいただきたい。


北原 秀猛

関連情報
この記事はお役にたちましたか?Yes | No
この記事に対する問い合わせ

この記事に対する
キーワード
•  強い組織
•  リーダーシップ


HOMEUBブックレビュー詳細 Page Top



掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権はセジデム・ストラテジックデータ株式会社またはその情報提供機関に帰属します。
Copyright © CEGEDIM All Rights Reserved.