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ほんとうにわかる経営戦略表紙写真

[決定版]ほんとうにわかる経営戦略 Management Strategies Made Easy

著  者:武藤 泰明
出 版 社:PHPエディターズ・グループ
定  価:1,800円(税別)
ISBNコード:4−569−62949−0

知識を獲得するというのは、「パラダイムを使えるようになる」ということである。本書は、経営戦略について、上に述べたようなパラダイムの体得を目的とするものである。

本書の構成としては、第1章:戦略とは、第2章:経営戦略の変遷、第3章:事業戦略、第4章:競争戦略、第5章:事業構成、多角化、第6章:組織と機構、第7章:人材と知識、第8章:イノベーション、第9章:リスク、第10章:財務と資本政策となっている。

面倒なのは、自然科学とは違って、企業経営の世界ではパラダイムが1つではないという点である。2年も経てば有効なパラダイムが変わる。石油産業とITとでは、パラダイムは明らかに異なる。複数のパラダイムは、せめぎ合い、かつ共存する。したがって、そこで必要になるのは、当事者による選択である。このため、戦略には本質的なところで、選択という行為がついて回ることになる。本書は第1章の「戦略とは」から始まり、第10章の「財務と資本政策」の構成になっている。

米国のある著名な経営者の話である。業種は機械製造業。彼が初期に打った手の中で、有名なものの1つが「ベスト・プラクティス」である。ベスト・プラクティスを実現するためにこの社長が行ったことは、社員の中で能力の高い若手に、他の業務プロセスを調査させることであった。すなわち、業務コストが低く、効率経営を実現していると思われる企業を数十社選び、これらの企業が、どのようにローコスト経営、効率経営を行っているかについて調査し、自分に報告するように指示をした。調査の目的は「模倣」と「良いとこ取り」である。そうすれば、自分の会社も確実に効率化されるはずである。こうしてできあがるのがベスト・プラクティスである。もう一つ重要な点は、この経営者が、指示をする際、「戦略については調査しなくて良い」と付帯条件をつけた。この意味は、「企業は経営戦略によって大きな差がつく」という点である。

  • すべての企業は、何らかの独自性を存立基盤としている。
  • 独自性には強弱がある。
  • ある企業がもっている独自性の強さは、競争相手の独自性によって決まる。独自性は相対的なものである。

優位性の源泉は、切り取った市場での独自性である。必要なのは、独自性に基づく優位性である。そして、成長に繋がる正しい道もあれば、行き止まりも回り道もある。この道を「選択」するのかということは、企業にとって決定的に重要な行為である。

  • 環境を認識する力
  • 環境認識力がどんなに高まったとしても、未来は相当不確実なものだ
  • マネジメントは常に変革を目的とし、戦略はその手段となる。戦略は変革のために選択をおこなう
*PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

これは、「資産構成の全体像」を示す。スター、金のなる木、問題児、負け犬の区分である。

  1. スター:市場の成長性が高く、自社の競争力も強いのがスターである。先行投資が不可欠である。スターを育てるにはお金がかかるということである。
  2. 金のなる木:市場がもはやあまり伸びない。要は「投資の源泉」である。
  3. 問題児:市場が伸びているのに自社製品が伸びない。売上は多少なりとも増加しているが、シェアが低い。
  4. 負け犬:市場の成長もなく、勝ちに行くことに意味がないのである。

*リストラクチャリング
  • 保有・実施している事業そのものから撤退する場合(企業の再構築)
  • 事業は継続するが、事業の実施方法を変更する場合(事業の再構築)
*コア・コンピタンス「選択と集中」

コア・コンピタンスとは、顧客に特定の利益をもたらす一連のスキルや技術をいう。

*企業価値

定義に該当するものがない。一般的な了解は、株式時価総額であり、したがって直接的な成果指標は株価である

*バリュー・チェーン

バリュー・チェーンのチェーンは鎖である。鎖なので、その両端には何かがつながっている。つながっているものは、事業に必要な機能である。購買から販売・サービスに至るまでのライン上の機能がチェーンでつながる。そして経理や研究開発などのライン外の機能が、このチェーンを包む。下の表は実用的なバリュー・チェーンの例である。

バリュー・チェーン
*ビジネスモデル

ビジネスモデルという概念は、ITによって生まれたと言ってよい。今日ではITを伴わない「事業の仕組み」も、ビジネスモデルと呼ぶことができる。ビジネスモデルとは、事業戦略にかかわる概念である。そして一般的には、まず戦略があり、この戦略を実行する手段としてのビジネスモデルがあると考えられているのではないかと思う。

*製品ライフサイクル

製品やサービスが誕生し、最終的に消滅するまでをライフサイクルと呼ぶが、このライフサイクルの過程で製品・サービスは4つのライフステージを経ていく。(1)導入期、(2)成長期、(3)成熟期、(4)衰退期である。コメは静かな衰退期を続けている。代わりに外食産業のコメは拡大している。また無洗米が話題になっている。当初、無洗米は家事を楽にすることがメリットだと見られていたが、次第に外食での需要が高いことが分かってきている。以上の事実からわかるのは、市場のライフサイクルと製品ライフサイクルとは分けて考えた方がよさそうだという点である。

  1. 一つの市場の中には、製品群によって構成される下位市場がある。
  2. この下位市場は、企業の創意工夫によって形成される。
  3. 市場全体のライフサイクルと、下位市場=製品群のライフサイクルは別の動きをする。
例えば、「宮城県産コシヒカリ」「新潟県南魚沼群産のコシヒカリ」も成熟市場を相手に伸びはあまり期待できない。これに対して、産地無指定の無洗米は、無洗米という下位市場の伸びに、しばらくは期待することができる。

*成長戦略の基本

企業が成長を意識し、戦略構築が可能となるケースは、次のように類型化することができるだろう。
(1)市場成長が明らかである場合
(2)企業自身がシェアの拡大を意図する場合
(3)企業自身が新しいアイデアで市場を創造しようとしている場合
(4)海外展開など、自社が未進出の市場に展開しようという場合
アスクルは、従業員30人未満の事業所を主なターゲットとし、従来オフィス用品の購入に際し不便を感じていたそれらの事業所に対して、要望に沿った品揃えや低価格の商品を当日または翌日配送するサービスを実現した。その結果売上は4年で8.7倍、営業利益7倍以上になった。

*SWOT分析

競争戦略を策定しようという企業が、まず、はじめに行う作業の1つがSWOT分析である。SWOTとはstrongness(強み)、weakness(弱み)、opportunity(機会)、threat(脅威)の略である。一定の強みを持つということは、弱みをもつこととほぼ同意義である。企業の関心とエネルギーのほとんどは、強みを伸ばしていくことに向けられなければならない。そうしなければ、優位性を保っていくことはできないはずである。競争とは、ポジションをとることだ。

<市場ポジションと競争戦略>
市場ポジショニングと競争戦略
*リスクの時代

リスクという概念は、現代の企業経営にとって、極めて重要なものになっている。この理由は、リスクが増えたこと、企業がリスクに弱くなったこと、である。リスクが増えた理由として最大のものは、取引先の倒産である。倒産が増加した理由は、規制緩和、市場や技術の変化、企業がリスクに弱くなったことである。特に3番目の理由である、企業がリスクに弱くなった理由は、次のようなものである。

  • 収益力の低下
  • 成長力の低下
  • 銀行の行動変化
  • 「含み」の消滅

以上のような概要である。本題に『ほんとうにわかる経営戦略』とついている通り、読みやすく、分かりやすい。それにいろいろな事例が示されている。著者は本書の目的とするのは経営戦略を「知らせる」ことではなく、選択肢としての経営戦略パラダイムを「並べて提示する」ことと念を押しているように、それぞれの企業のおかれている環境、状況が違うからである。であるから、本書をヒントに自分に企業に置き換え活用してみることである。


北原 秀猛

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キーワード
•  パラダイム
•  ビジネスモデル


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