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コトラーのマーケティング・コンセプト表紙写真

コトラーのマーケティング・コンセプト

Marketing Insights from A to Z:80 Concepts Every Manager Needs Know
著  者:フィリップ・コトラー
監  訳:恩蔵 直人
訳  者:大川 修二
出 版 社:東洋経済新報社
定  価:2,200円(税別)
ISBNコード:4−492−55476−9

「コトラーがマーケティングに携わって40年。そこで、今日のマーケティングで最も重要と思われる80のコンセプトをリストアップしたうえで、それらがどのような意味を持ち、堅実なビジネスを展開するうえでどう影響するかを、じっくりと考えてみることにした」というのが本書である。

今日のビジネス界が直面している中心問題は、商品の不足ではなく、顧客の不足である。すべての企業が10%の売上増を目指したにもかかわらず、市場全体の成長率が3%であれば過剰生産という結果になる。続いてこの過剰生産がハイパーコンペティションをもたらす。競合各社は、何としても顧客を引き寄せようと価格引き下げや景品の付加に走る。この手の戦略は、最終的に利ざやの縮小や利益の減少につながり、企業倒産を招いたり、合併、買収を加速させたりすることになる。

価格に頼ることなく競争するにはどうすればよいのか。その答えを教えてくれるのがマーケティングだ。

マーケティングの理想は、販売活動が不要になるところまで標的顧客を知り尽くすことだ。ピーター・ドラッカーも「マーケティングの目的は販売を不要にすることだ」と断言している。マーケティング(marketing)とは、的(mark)に命中させる能力のことなのだ。コトラーはマーケティング・マネジメントの定義として、「標的市場を選択し、優れた顧客価値の創造、伝達、提供を通じて、顧客を獲得、維持、育成の技術である」とし、詳しくいうと「マーケティングとは、充足されていないニーズや欲求を突き止め、その重要性と潜在的な収益性を明確化・評価し、組織が最も貢献できる標的市場を選択したうえで、当該市場に最適な製品、サービス、プログラムを決定し、組織の全成員に顧客志向、顧客奉仕の姿勢を求めるビジネス上の機能である」。簡単に言えば、マーケティングの役割とは、たえず変化する人々のニーズを収益機会に転化することである。

本書は表題にあるように80のコンセプトをリストアップして登場させている。

<広告>

最高の広告は、単に独創的であるだけでなく、売上に結びつくものである。独創だけでは十分とは言えない。広告は芸術的表現以上のものでなければならないのだ。顧客ロイヤルティが高まれば、広告に要する費用は減少する。第1に、満足した顧客のほとんどが、広告など行わなくても再購入してくれる。第2に、こうした顧客の多くは、高い満足度ゆえに、企業になり代わって広告活動を行ってくれるのである。広告の5つのM、すなわち目的(Mission)、メッセージ(Message)、媒体(Media)、予算(Money)、評価(Measurement)、について意思決定を行う必要がある。

<ブランド>

優れたブランドは、平均以上の収益を継続的に確保するための唯一の手段である。また、優れたブランドは、合理的ベネフィットだけでなく感情的ベネフィットをもたらしてくれる。

<変化>

変化に直面して取りうる最善の防御策は、変化を糧にするような組織をつくることである。変化を正常状態を乱すものとは見ず、変化こそが正常な状態だと考える組織にするのだ。

<企業>

企業には4つのタイプがあると言われている。(1)新しく事を起こす企業、(2)事が起ったのをみて反応する企業、(3)事が起ったのを見ても反応しない企業、(4)事が起ったことに気づかない企業。1917年に「フォーブス100社」に選ばれた企業のうち1987年まで存在したのはわずか18社であった。企業は、優れた顧客価値を提供しつづける限り存続を許される。成功するためには、市場と顧客を重視しなければならない。

<競争優位>

競争優位の源泉には、実にさまざまなものがある。例えば、卓越した品質、スピード、安全性、サービス、デザイン、信頼性、さらには低コスト、低価格などだ。これらが単独で特効薬的な力を発揮するというよりも、複数の要素の独特な組み合わせをもたらすことの方が多い。

<創造性>

企業の創造性を高める方法としては、以下の3つがある。

  1. 生まれながらに創造的な人間を採用し、自由に行動させる。
  2. 効果が実証されているさまざまな技法を用いて、組織の創造性を刺激する。
  3. 専門家と契約し、創造性の向上を支援してもらう。

<顧客>

企業は、製品マーケティング中心主義から顧客所有中心主義へと見方を改めなければならない。企業は顧客を金融資産と見なし、他の資産同様、適切に管理し最大化を図るべきである。

<顧客満足>
  1. 新規顧客の獲得には、既存顧客を満足させ維持する場合の5倍から10倍のコストがかかる。
  2. 平均的な企業は、年間に10%から20%の顧客を失っている。
  3. 業種によって差はあるものの、顧客離反率を5%低下させれば、利益は25%から85%増加する。
  4. 顧客1人当たりの利益率は、維持された顧客の生涯を通じて増加する傾向にある。
<データベース・マーケティング>
  • 収集すべき最も重要な情報は、各購買者の取引履歴である。過去に何を購入したかがわかれば、次にどのようなものの購入に興味を示すのかといった、さまざまな手がかりを得ることができる。
  • 各購買者のデモグラフィック情報も利用価値が高い。一般消費者の場合、年齢、学歴、収入、世帯規模、その他の属性がこれに該当する。企業間取引の場合であれば、相手の職種、役職、取引上の関係、連絡先なども含まれる。
  • 上記に加えて、個々の顧客の活動、興味、意見(AIO:Activities,Interests,and Opinions)、考え方、意思決定の仕方、他社への影響力といったサイコグラフィック情報を集めるのもよい。
<差別化>
  • 1つめは、製品の外観によって差別化を図る方法である。オレンジの場合で言えば、大きさ、形、色、味などの異なるオレンジを異なる価格で提供する。これは物理的差別化と言える。
  • 2つめは、特徴的なブランド名を使用する方法で、ブランドによる差別化と呼ばれている。サンキスト、フロリダズ・ベストなどのブランド名で販売されるオレンジが、これに該当する。
  • 3つめは、顧客が特定の供給者との関係に満足を覚えるようになった場合である。これをリレーションシップによる差別化という。例えば、知名度の高いブランドが複数あるなかで、1社が顧客からの問い合わせにより質の高い迅速な対応をしたような場合がこれにあたる。
  • 製品による差別化(特徴、性能、適合、耐久性、信頼性、修理可能性、スタイル、デザイン)
  • サービスによる差別化(配達、取り付け、顧客トレーニング、コンサルティング、修理)
  • スタッフによる差別化(コンピタンス、親切丁寧、確実性、信頼性、迅速な対応、コミュニケーション・スキル)
  • イメージによる差別化(シンボル、文章およびAVメディア、雰囲気、イベント)
<将来予測>

将来の問題を予見できない企業は、将来大きな問題に巻き込まれることになる。企業がエコノミストやコンサルタント、未来学者に頼る理由はここにある。とは言え、将来を予測するにあたっては慎重な姿勢が求められる。ベンジャミン・フランクリンが言うように「見るのは簡単。見通すのは困難」だからだ。「水晶玉に頼る者は、磨りガラスを食べるはめになる」という諺もある。「最も確実に将来を予測する方法は、将来をつくり出すことだ」。

<成長戦略>

企業を成長させるためには、社員やパートナーの意識を成長志向に変える必要がある。そうして、いまだ満たされていないニーズに目を向けるのだ。現在扱っている製品や現時点におけるコンピテンシーを発想の出発点にする(インサイド・アウト思考)のではなく、既存ならびに新規顧客のいまだ満たされていないニーズを感知し、それを満たすこと(アウトサイド・イン思考)で成長を目指すべきだ。

<イノベーション>

このプロセスは、アイデア創出、アイデア・スクリーニング、コンセプト開発とテスト、事業分析、試作品開発とテスト、テスト・マーケティング、商品化といったプロセスからなっており、全体を注意深く管理しなければならない。

<国際マーケティング>

国内市場のみに習熟した企業は、やがてその国内市場を失うことになる。強力な外国企業が参入し、勝負を挑んでくることは避けられないからだ。現代のビジネスに国境はない。企業にとって最も望ましい成長の道筋は、地域化もしくはグローバル化することである。

<マーケティング計画>

企業にはビジョンが必要だ。そして、ビジョンには戦略が、戦略には計画が、計画には実行が必要となる。

  1. 状況分析:この段階では、自社を取り巻く環境に関して、マクロの影響要因(経済的、政治―法律的、社会―文化的、技術的要因)と参加者(自社、競合他社、流通業者、供給業者)を分析する。
  2. 目的:状況分析で望ましい機械が明らかになったら、次ぎはそれらをランクづけし、達成のための具体的な目標とタイムテーブルを設定するステップである。
  3. 戦略:どんな目標でも、達成する方法は複数ある。戦略の役割は、目的を達成するうえで最も効果的な行動指針を定めることである。
  4. 戦術:戦術は4P(製品、価格、流通、プロモーション)や、誰がいつまでに何をなすべきかといったスケジュールを、詳細に記述したものでなければならない。
  5. 予算:計画された行動や活動にはコストがともなう。このコストの合計額が、目的達成に必要な予算となる。
  6. コントロール:目標達成に向けた計画の進捗状況を確認するため、調査期間と測定基準を設定しておく必要がある。実績が計画より遅れている場合は、目的、戦略、活動を見直し、状況を是正しなければならない。

以上のように本書に記載されている80のコンセプトのうち、ポピュラーな項目を15取り上げた。この15でおわかりのように、実に平易に、誰にでも理解できるように解説している。「新鮮で刺激的な考え方や見方を、いつでも検索や拾い読みができ、わかりやすいかたちでまとめたい」と著者が冒頭に述べているように編集されている。最後に事項牽引が添付され、読者が忘れていた項目やヒントを欲しいときなどに自由に調べることができる。


北原 秀猛

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•  ハイパーコンペティション
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