本書は『週刊ポスト』に2001年9月28日号から2003年2月7日号までに連載したものに加筆改稿し、まとめた本である。
本書の構成は、序章:年収大格差時代の到来、第1章:生活習慣癖を撃退しよう、第2章:企画発想力、第3章:会議力、第4章:交渉力、第5章:人材育成力、第6章:営業力、第7章:人間力を鍛え直そう、第8章:外国人ビジネスマン攻略法、第9章:後悔しない転職の掟、第10章:失敗しない起業の鉄則、第11章:人生設計を見直そう、以上の章に分かれている。
プログラマーという職種について考えてみよう。顧客企業と話をし、業務形態や業務内容を理解し、どういうシステムが必要かを判断する。その上でコンピュータのハードやソフトの「アーキテクチャー(構造や設計思想)」を考えるプログラマーは“年収3000万円”の価値を認められる。しかし、そうしたアーキテクチャーに従い、単にコード(コンピュータを作動させるためのプログラム)を書くだけなら、“年収300万円”の仕事と見なされる。この場合、徹夜作業をして納期に間に合わせるなど重労働を強いられることになる。後者の年収はこれ以上増えない。
<“高年収体質”になるための4大原則>
1.人生の俯瞰図を持とう!
2.寄り道型人間になろう!
3.商機をみつける物差しを持とう!
4.起業力を身につけよう!
いまサラリーマンに求められているのは、“問題解決能力”に他ならない。問題解決とは、往々にして勇気を要する抜本的な行為を伴う。ここで強調したいのは、“What if …(…としたら、どうなるか)”という問いから逃げてはいけないということだ。子供の教育費を削ったらどうなる?あの取引先と縁を切ったらどうなる?上司に反論したらどうなる?こうした仮定を恐れずにできる者だけが、問題解決能力を身につけることができる。もしも自分の人生を変えようと思ったらどうするか――。
- 付き合う人間を変える
- 住む場所を変える
- 時間の使い方を変える
この3つしか方法はない。
会議で議論を重ねた上での結論を出すには、私の経験上、次の4点が不可欠だ。
- 会議の開催時間は60分
- 最初の30分で議案の背景にある情勢等を説明。参加者が理解を深める
- 続く20分で議論する
- 最後の10分で結論を出すと同時に、次の会議を開くタイミングや、その際の議案について確認する
これが、会議進行のゴールデンルールである。この中で実現が最も困難なのが2の「説明に30分」だ。
<交渉を成功させるための大切な3つの考え方>
1.1年後、3年後、5年後のビジョンを明確にした上で、その要求項目を満たすことが、自分たちにとって本当に利益となるのかを検討する
2.特定グループの利益を尊重するのではなく、あくまでも組織全体にとっての利益とは何かを考える
3.1と2を念頭に、交渉相手に絶対に譲れないポイントと、譲ってもいいポイントを明確にし、柔軟な姿勢で交渉に臨む
ビジネスでの交渉がうまくいかないのも、これら3点をクリアできないことが原因の場合が多い。
アメリカには「うるさい車軸には油をさせ」(The squeaky wheel gets the grease.)という諺がある。「異見・文句を言う人間がいたら、その人間にやらせてみよ」、という意味だ。
<英語スピーチ能力を鍛える4つの独習法>
1.自分の目に見えたもの、自分の頭に浮かんだことを、片っ端から英語にしてみる
2.英文メディアの記事を毎週最低1本目を通し、表現を蓄積する
3.一流の経営者のスピーチから一流の英語表現を盗め
4.海外のインターネット・サイトにアクセスし、英文で質問メールを送信する
<中途採用者に必要な4つの覚悟>
1.アウトサイダーの視点を失うな
2.批判するより解決策を提案せよ
3.解決策は1つに絞れ
4.ネットワークを持ち込め
つまり、「知らないからこそできる仕事」は、「知ってからではできない仕事」なのだ。新しい会社に転職したサラリーマン、新しい部署に異動したサラリーマンは、このことを肝に銘じておくべきだ。アウトサイダーであることは、実は会社にとっての自分の価値を高める千載一遇のチャンスなのである。
サラリーマンが、今いる会社という狭い枠の中だけで人生の設計図を描く時代はもはや終わっている。これだけ変化の激しい時代だ。今いる部門や会社が縮小されたり、なくなることも十分あり得る。自分で人生のハンドルを握らなければいけないのだ。
以上が本書の概要である。本書を読めばわかるが、従来の発想に囚われていたり、過去の思考に惑わされたりしていると、とんでもない落とし穴にはまってしまう可能性があるという時代に入っている。グローバルという言葉に象徴されるように、まず地球規模での発想が必要である。ヒト・モノ・カネ・情報が国境を越えて動いていく。そのため、経済活動がますます複雑化していくことになる。当然国際社会・経済の動きを無視して自国のことを語ることはできない。デフレの問題も日本一国のことではない。あらゆることが、グローバル化社会のなかで起きてきた現象であると言える。企業も従来のビジネスモデルから脱却できず、新ビジネスモデルの構築に関心がないようであれば、沈む以外に道はない。いま光が当っている企業は、新しいビジネスモデルを構築している企業群と言える。そのような意味合いを込めて書かれた本が本書である。
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