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経営の実際 8つの重要なポイント

著  者:飯田 亮
出 版 社:中経出版
定  価:1,500円
ISBNコード:4−8061−1868−0

経営とは、すこぶる経営者という人間個人の属人性に彩られるものです。また、そうでなければ、その会社は社会から魅力的に見られません。世界は歴史的な大転換期を迎えています。新しいビジネスを起こすチャンスです。会社を変える、会社の将来を決しかねない新しいビジネスの構想は、経営者だけにできる特権であり、経営者だからこそやらねばならない義務なのです。だからこそ、経営はエキサイティングであり、やり甲斐があるということではないでしょうか。

本書は表題にもあるように8つのポイントを項目別に説明した構成になっている。

  • 第1章:「経営とは、創業の基本理念を貫き通すことである」
  • 第2章:「経営とは、お客様の立場でシステムづくりを進めることである」
  • 第3章:「経営とは、世の中が何を求めているか、その本質を捉えることである」
  • 第4章:「経営とは、チャレンジとスピードである」
  • 第5章:「経営とは、常に革新する組織カルチャーをつくることである」
  • 第6章:「経営とは、目的を実現するプロフェッショナル集団づくりである」
  • 第7章:「経営とは、結果責任を具体的に伴うものである」
  • 第8章:「経営とは、“社会の深い信頼”を得るブランドを築くことである」

経営者のリーダーシップとは、自らリスクを引き受け、決断するということですが、会社をこうする、事業はこれで勝負するというデザインを行うことも経営者の使命です。日本の経済が10年間も停滞してきた最大の原因は、新陳代謝、企業の選手交代が行われなかったからだと私は思っています。前例のない長持ちするビジネスモデルをつくり上げるには、社内やお客様や規制当局などから大変な抵抗に見舞われるものです。よっぽど強い思い入れがないと、持続的なビジネスモデルはできない、それが私の実感です。経営とは、自らの構想による独創でなければならないのです。経営者とは、逃げ場のない職種です。

現状に甘んじていたら退歩、衰退しかねない。41年前にはゼロだった警備業の就業者数が現在、全国で約43〜44万人となり、市場規模も2兆7500億円を超える規模になりました。「1つの産業ができたな」という感慨はあります。

私は41年間の経営の体験からも、経営とは、創業の基本理念を、どんなに時代の環境が変わろうとも、一心不乱に貫き通すことだと革新しています。

<「セコム憲法」の要旨>
  • セコムの提供する社会サービスシステムは、人々の安心のための、よりよき社会のためのサービスシステムである。
  • 他のいかなる組織が実施するよりも、セコムが事業化し実施することが最適であるとの判断が重要だ。
  • 選択した事業の実行にあたっては、自ら完全に納得できるものとして事業を行うべきであり、妥協は徹底して排除しなければならない。
  • 額に汗し、努力の結果以外の利益は受けない。
  • すべてのことに関して、セコムの判断の尺度は「社会にとって正しいかどうか」と「公正であるかどうか」である。
  • セコムは、常に革新的であり続ける。そのため否定の精神、現状打破の精神をもち続け絶やさない。
  • セコムはすべてに関して礼節を重んずる。
  • セコムの社員は、いかなることに関しても、自らの立場、職責を利用した言動をしてはならない。

セコムの判断基準は「会社のために」ではありません。「社会にとって正しいかどうか」、その1点に尽きます。私と戸田(創業者の1人)は創業に当たって、どんな事業がいいだろうかと、とことん考えました。たどり着いた結論が、次の3条件でした。

  1. 人から後ろ指をさされない事業であり、努力すれば大きくなる事業であること
  2. 未開拓、新分野であること
  3. 前金のとれる事業であること

私の起業・創業の発端はすべて「こういうモノやサービスがあればいいな」という私の願望なんです。企業の盛衰は、その企業のカルチャーの善し悪しにかかっています。カルチャーとは与えられるものではなく、経営の意思として、常に注意深く育てるものです。経営とは、世の中が何を求めているかの本質をきっちり捉えることです。

1976年(昭和51年)2月、私は社長を退いて会長に、共同創業者の戸田寿一も副会長に就きました。私は42歳。若くして社長を退いた理由は、これからさまざまな事業を展開したいと考えたからです。すでに海外進出の準備を始めていましたし、国内でもオンライン・セキュリティシステムのSPアラームを中心に「安全」にかかわる事業が拡大しつつありました。社長のまま既存の事業や冠婚葬祭に追われていては、自分で構想した新しい事業に挑戦できない、という発想でした。

「警備会社のセコムがなぜ医療事業を?」。セコムがアメリカで救急医療会社や在宅医療会社を買収したり、その運営ノウハウをもとに、日本で在宅医療事業を始めました。そもそも私が医療事業に関心を持ったのは20年以上も前からでした。当時、赤ん坊が引きつけを起こしたり、高熱を出したときに、病院をたらい回しにされた挙げ句、診てもらえず死亡するという事故が何件か新聞に載りました。今でもときどき起こっている問題ですが、新聞記事を読んで、そんな非情なことがあってなるものかと怒りを覚えたときからです。

経営とは、潮の変わり目を捉えること、そして機を逸することなく即座に行動することです。98年に、中堅損害保険会社の東洋火災海上保険(現・セコム損害保険)を買収したときも、「セキユリティのセコムがなぜ?」と訊かれました。セキュリティは盗難や火災などの事件・事故を未然に防ぐのが役割ですが、不幸にも事件・事故が起こった後に損害を補償するのが保険事業です。表裏一体の関係にある両事業を組み合わせて提供できれば、お客様の安心感は一段と高められると考えたのです。しかも、我々のセキュリティの契約先が盗難や火災に見舞われる事故率は極めて低いわけです。それだけ保険料を安くできるのです。

日本の経営者はこれまで、将来の事業ビジョンを考えるに当たって、自分の会社のリソースだけで事業を発想してきたと思います。それ自体は間違ってはいないが、リソースがなければ新しい事業ができないと思うのは間違いではないでしょうか。リソースが社内になければ社外から持ち込めばいいのです。デジタル革命で急速に変化する時代には、とても自社だけのリソースでは間に合いません。

そもそも資本主義とは、他とは差別化した価値を持つ商品・サービスを創造することであり、企業の組織カルチャーもまた差別化したものでなければなりません。他と違う価値あるものを創造するためには、現状に甘んじることなく、現状を否定・打破する革新的なカルチャーでなければなりません。つまり、経営とは、常に革新する組織カルチャーをつくり続けることなのです。革新できない、改革のできない組織というのは、緊張感も集中る力もないということであり、社会からみても魅力がないということです。艶っぽさとかしなやかさというのは、その企業の考え方、発想、行動に現れるものです。

最近も、損保会社や航空測量とGIS(地理情報サービス)の最大手企業のパスコなどを買収しています。また、米国エントラスト社の企業向け暗号・電子承認システムを販売するエントラストジャパンを設立し、サイバーセキュリティ事業への本格的な取り組みを始めています。いずれの事業も社会にとって不可欠な“社会システム”です。とりわけパスコのコア・ビジネスは、航空写真を使って国土を測量し、地形図や行政用地図をする制作することであり、身近な例を挙げれば、道路地図や住宅地図などもパスコの原画をもとに地図制作会社が制作しています。私は組織に異文化を入れることは、組織に“ストレスを生み出す効用がある“と痛感しています。組織の美学として、折にふれて私が社内に向けて次のことを言ってきました。

  • 「革新的」であること
  • 「前例にはいっさいとらわれない」こと
  • 「すべてにおいて卑しくない」こと
  • 「自分の職位を何によらず利用しない」「威張らない」こと
  • 「社会におもねない」こと
  • 「何事によらずスピードが速い」こと

今は時代の変化を自らの手でつかまえようとする強い意志、時代を見極める研ぎ澄まされた感覚を身につけていなければなりません。言い換えれば、プロフェッショナルとしての感受性や力量がなければなりません。私は、経営とは、プロフェッショナルが集まる組織をつくることだと考えてきました。私は、経営とはビジネスデザインを描くこと、経営者とはビジネスデザインを描ける人材だと思っています。しかし、自分のデザインに酔ってはいけない。経営とは、厳しく結果責任を求められるものなのです。私は経営にはロマンチズムが必要だと思っています。経営者はロマンチストであるべきなのです。将来の成長と利益を生み出す夢を描くべきです。

私は「凛(りん)」という言葉が好きなのですが、「豁達(フータ)」(困難なことも明るく成し遂げてしまう)も含めて、いつも前向きな、晴れ晴れとした組織風土こそ、社会から見ても魅力的な会社なのだと思っています。

以上が本書の概要である。セコムの飯田最高顧問は、29歳のときに大学の友人・戸田寿一氏と、我が国初の警備保障会社である日本警備保障株式会社を創業した。42歳で社長職を退き、本業に関連のある事業を次々に起こし、97年にはセコムの会長を退任して、現在は取締役最高顧問として、高所から関連会社のアドバイザー役の任に就いている。いまだに起業家精神を貫き、自分の哲学を基本にリーダーシップを発揮している。自分で考え、行動し、結果を出してきた経営者魂が随所に見られ、本書の特徴でもある「経営とは・・・」という言葉が多く使われている。それは、実践から得た本質論であるために、迫力のある言葉として読者の心を捉えるに違いない。


北原 秀猛

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