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ライオンは眠れない表紙写真

ライオンは眠れない

原  題:The Lion Cannot Get To Sleep.
著  者:サミュエル・ライダー
訳  者:葉夏生(イェ・シャー・ション)
出 版 社:実業之日本社
定  価:900円
ISBNコード:4−408−39482−3

本書は、読んでいただくと気づくと思いますが、著者はサミュエル・ライダーとなっていますが、これはあくまで偽名で、日本の官僚かエコノミストが書いた本ではないかと感じます。ライオンとは小泉首相をイメージした著作内容に思えて仕方がありません。最初に、ブッダ最後の言葉として、「あらゆるものはうつろいやすいものである。怠ることなく、精進しなさい」の言葉も小泉首相に捧げているように思えます。

内容は、著者が中国大使館にいる友達の結婚式に参列するために北京に出かけた折、不思議な書物に出会い、その本の内容は動物たちが登場する寓話です。その寓話が「ライオンは眠らない」という本書の内容と符号すると述べています。最初はこの本(寓話の本)との出会い、いきさつから始まります。

これは本当のお話。ある時代、この世界に3つの国がありました。1つは、「龍」の国。そこから海を渡ったところに「鼠」の国。そして、さらに遠く海をへだてて「鷲」の国。これらの国は過去に戦争をし合ったこともありましたが、ここしばらく平和が続き、それぞれめざましい発展をとげました。ところが、あるとき、繁栄に翳りが見え始めたのです。3つの国はそれぞれ必死に対策を練りましたが、うまくいきませんでした。なぜなら、誰もが贅沢に慣れてしまって、もう昔のように質素な生活には戻れなかったからです。なかでも「鼠」の国の場合が一番深刻でした。他の国以上の繁栄を味わった後、急に景気が悪くなったのです。街には失業者があふれ、犯罪や自殺が増え、心の荒廃も目を覆うばかりとなりました。その間、何とか国を立ち直らせようと、何人もの王様が出て政治を行いましたが、かえって悪くなる一方でした。ところが、あるとき、ライオンの王様が出ると、様子が一変しました。そのライオン王は、いままでの王様とは違っていたのです。「皆さん、私はこの国を立て直すために大改革を行います。そのためには先ず、この国を壊さなくてはなりません。痛みをともないますが我慢してください!」。ライオン王の大胆な発言は、さらに続きました。「この改革を阻む敵は、外にはいません。内側にいます。その敵と私は、これから命をかけて戦います!」。これには周囲もやんやの喝采。口先だけの過去の王とは違って、この王様なら必ず国を立ちなおらせると、確かな手ごたえを感じたのです。

それから程ないある日、うす暗い密室で、太ったネズミたちによる会合が開かれました。まず、メガネをかけたネズミが一匹、前に出ました。「皆さま、対策委員長の私から始めさせていただきます。事態は深刻です。われわれの推した候補が落選するという番狂わせ。それに加えて、なんとわれらが不倶戴天の敵、ジャジャネコが大臣に選ばれるという最悪の結果となりました。ネズミ族にとってもズボン党にとっても、これ以上の屈辱、これ以上の危機はありません!」。別の偉そうなネズミが髭を動かしながら言いました。「なにしろ彼女は財産家じゃ。買収がきかん。利権をちらつかせても見向きもせん。博打は打たんし、スキャンダルとも無縁じゃ」。次の日から、ジャジャネコ大臣への攻撃と嫌がらせが連日続きました。

始めの頃、改革はすごい勢いで進むかに思えました。それまで社会を構成し、規制していた法律や組織の多くが廃止され、解体されることになりました。まさに大手術です。一方、ライオン政権の支持率も、変わることなく高いレベルを維持していました。ところが、順調に思える中、ライオン王は時折、眉根を寄せて心配げな表情を見せることがありました。それに目の下に浮き出た黒い隈。どうやら、よく眠れていないようです。

改革がスタートしてからしばらくして、大変なことが起こりました。改革に急ブレーキがかかりはじめたのです。原因は、百年に一度あるかないかの不景気でした。「龍」の国の進出による経済圧迫と、「鷲」の国で勃発した経済失速が引き金となって、この国にも大不景気が訪れたのです。失業者が街にあふれはじめました。政府は慌てて対策を講じたものの、後手後手に回りました。それほど失業者の急増は短期間のうちに起こったのです。社会不安から、企業の経営はさらに悪化しました。連鎖倒産が起こり、たくさんの会社や銀行が悲鳴をあげるようにして潰れはじめました。強盗や殺傷事件が一挙に増え、自殺者も増えました。ところが、これほどの社会不安にもかかわらず、驚いたことに、ライオン政権の支持率が落ちることはありませんでした。

口調を改めて、ライオン王が言いました。「私はこの先「龍」の国や「鷲」の国が、わが国に対し、無理な要求や何らかの干渉をしてくると踏んでるんです」。タカ長官が厳しい顔で言いました。「そうです。「龍」、「鷲」、「鼠」の三国のバランスが狂ってきている。これが大きな原因です。つまり、「鷲」の国に翳りが見え、「龍」の国の力が逆に拡大化している中で、わが国の脆弱さが目立ち始めてきた。わが国は弱すぎるんですよ。政治、文化、軍事、外交、そして今は経済まですべてが弱い。もっと強い国にならないと、このままでは危ない」。

ついにXデーが訪れました。どの家でも上を下への大騒ぎでした。いや、国中が蜂の巣をつついたようなだい混乱に陥っていたのです。Xデーから何日かたったある日、街の銀行や郵便局の入り口に、大勢の動物たちが群がる光景が見られました。彼らは古い紙幣を手にして建物の中に入ると、少し後には新しい札に替えて出てきました。でも、どの顔を見ても、明るい表情はみられません。不機嫌そうに無表情な顔、悲しそうに沈んだ顔がほとんどです。よく見ると、手にした紙幣の枚数も、心なしか前より減っているようです。「仕方ないよな。われわれが犠牲になれば、国が救われるってんだから」。建物から出てきた2匹のネズミ。肩を寄せながら話をしていました。

文章はここで終わりです。登場人物の一人一人が誰なのかは置くとしても、もしライオン王が小泉首相だとしたら、彼は景気がすごく悪くなっても、かまわずに構造改革を進めるみたいですね。私は、この寓話のキーワードを「破壊」と見ているのですが、小泉首相は、もしかすると、あらゆる分野で、「創造のための破壊」を行なうのかもしれませんね。「破壊」は、もう一度やり直したい、良くなりたい、蘇りたいという人々の切なる願いが凝縮したときに現われるんだ。そういう意味では、むしろ「希望」とか「救い」と同じ種類の言葉なのかもしれない。

いよいよX計画ですね。例えば、長銀が潰れたときには預金者保護のために3兆円もつぎ込んだけど、こらからはもうそんなことはしないですむ。預金者の犠牲にも目をつぶることができる。国は、着実に何かに向かって準備を整えつつありますね。私は、近いうちに日本国は破産し、国民がその犠牲になるだろうと書いているんです。寓話の内容がそれと一致するのです。預金封鎖は過去2、3回実施されています。今回の預金封鎖は、次のようになされるでしょう。まずそれは、ある日突然に起こります。でも、少しは予測がつく。たぶん、連休を翌日に控えた日の夕刻が選ばれるでしょう。その時刻が海外の休日にあたっていればより都合がいいですね。発表はおそらく、テレビを通して通じて首相が行うでしょう。沈痛な面持ちで、しかし決然と「日本はデノミに踏み切りました。同時に新円切り換えを実施いたします。旧100円は新1円に、旧1円は新1銭に……。本日から××日間、すべてのATMはストップします。窓口での預金引き出しも制限内でしかできません。実施は▽▽日から始まり、△△日までとします。その間にお手持ちの旧円を新円に交換してください。最終日を過ぎると旧円は失効となります……」。たちまち、隠し財産、膨大にあると言われるアングラマネーが炙り出されます。これだけでも国は巨額を獲得しますが、そこにプラスして実施されるのが、誰にとっても恐ろしい“財産税”の適用です。新円との交換時に国民一人一人、その財産がしっかりと記録されますから、国はそれをもとに新型の“財産税”をかけてくるのです。課税率は、国民の反発を和らげるために、富裕層ほど厳しい累進課税となることでしょう。もし、課税率の平均が30%だったらどうなるでしょうか?日本国民の金融資産は約1400兆円と言われていますから、その30%なら、420兆円ほどになります。ところが税務署も把握できないアングラマネーが同じくらいあると言われているので、この420兆円がプラスされて合計なんと840兆円となります。いま日本国の借金が666兆円ですから、もし銀行の不良債権が仮に170兆円あったとしても、この両方を一挙に返せることになります。

“聖域なき構造改革”とは、つまり、郵便や年金や銀行預金など国民から預かった財産はこれまで“聖域”と呼ばれ、国でさえ手をつけてはいけないものとされてきた。ところが今回の改革では、「“聖域”はないんだぞ」と、そこにも踏みこむと暗示している。小泉首相の“痛み”って、そのXデーを頭に置いて言ったことだったんですね…。

以上が本書の概要である。先にも述べたが、あまりにも寓話が現実の日本に似ているし、日本の抱える借金や国民の資産などの数字も現実のままですし、著者がここ数年日本に滞在、日本経済の大変動をテーマとしたレポートを近く出版予定としているが、文章から日本人くささが伝わってくるのは私だけだろうか。日本の将来を考えたとき、日本国のとるシナリオは(1)ハイパーインフレにいく、(2)新円発行・預金封鎖・富裕税、などが考えられる。何処にいくのかニッポンである。やはり現状のままでは先が思いやられる。


北原 秀猛

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キーワード
•  構造改革
•  破壊


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