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教養が試される341語表紙写真

知らない日本語 教養が試される341語

著  者:谷沢 永一(関西大学名譽教授)
出 版 社:幻冬舎
価  格:1,470円(税込み)
ISBNコード:4−344−00341−1

われわれが日常ごく普通に話したり書いたりする言葉というものは、なにも格別に気合を入れて、捩じり鉢巻するかのように、血相変えて勉強しなければならぬわけではない。気楽に構えてゆっくりと面白く、人々の間に立ち交じってさえすれば、知らぬ間に自然の勢いで覚えてゆく。子曰。後生可畏。焉知来者之不如今也。四十五十而無聞焉。斯亦不足畏也己。子曰く、若い学徒に大きな期待を持つべきだ。どうして後輩がいつまでも先輩に及ばないでいるものか。併し40歳、50歳になって芽のふかぬ者には、もう期待するのは無理だろう。勉強というほどのことでなくても、気分が朗らかで暇のあるとき、辞書をひいてみると幾分の楽しみが増えるのではないか。読書は人間学であるから、本を広く読むことで言葉が理解できるようになり、それによって人間学が自然と身に付くという要領である。わからない言葉をそのまま放っておかず、わかるまで粘る根性が人間を大きくするのである。

  • 冥加に余る(みょうがにあまる):ありがたすぎて罰が当たりそうだ。
  • 弥栄を祈る(いやさかをいのる):ますます栄える。
  • 惻隠の情(そくいんのじょう):人の不幸を黙視できず、その人の身を哀れみ傷む心。
  • やんぬるかな:予想した通りに事態が進行して、今となってはどうしようもない。
  • 気息奄々(きそくえんえん):息も絶え絶えでいまにも死にそうな様子。
  • 含むところがある:怒りや恨みを心の中に抱くことである。
  • あやをつける:言葉のちょっとした技巧や修飾。
  • 沙汰の限り:是非を云々する範囲を越えている。
  • 以って瞑すべし(もってめいすべし):その結果で満足すべきだ。
  • 潔しとせず(いさぎよしとせず):自分の生きる方針に合わないからきっぱり断る態度のことをいう。
  • 風樹の嘆(ふうじゅのたん):両親がすでに亡くなり、孝養を尽くすことができない嘆きをいう。
  • 鹿島立ち(かしまたち):旅立ち、出立のこと。
  • 人中が薬:若者にとって、世間の人と交わることが何よりの修養。
  • 奇貨とする(きかとする):チャンスを逃がすな。
  • 嚆矢とする(こうしとする):物事の始め、起源の意味。
  • 春秋に富む:年が若くて将来性がある。
  • 無聊をかこつ(ぶりょうをかこつ):自分の能力が乏しく世に認められない。
  • 世故に長ける(せこにたける):世渡りがうまい。
  • 尾羽打ち枯らす(おはうちからす):かつては羽振りの良かった人が、すっかり落ちぶれてしまうこと。
  • 百年河清を待つ(ひゃくねんかせいをまつ):どれだけ待ってもあり得ないこと、望みが叶わないこと。
  • 死して後已む(ししてあとやむ):死ぬまで努力する。
  • 馬齢を重ねる(ばれいをかさねる):何の功績も挙げず今日に至った。
  • 逆さ別れ(さかさわかれ):子が親よりも先に死ぬことをいう。
  • 旦夕に迫る(たんせきにせまる):死期が迫っていること、危篤状態。
  • 墨守(ぼくしゅ):自説を固く守って動じないことから「旧習にとらわれる」の意に転じた。
  • 端倪すべからず(たんげいすべからず):始めと終わりが見えない、全貌が測り知れない。
  • 嚢中の錐(のうちゅうのきり):人間の隠れている才能は外から見ただけではわからない。
  • 並び大名:名前だけは連ねているものの、何ら重要な役割を果たしていない人々。
  • 千三屋(せんさんや):うそつき、ほら
  • 寸鉄人を刺す:一言で人の心を刺し抜く。
  • 銀流し:見せかけをつくろって、その場逃れをすること。
  • 謦咳に接する(けいがいにせっする):日頃尊敬する人物に直接対面したという喜び。
  • 既往は咎めず(きおうはとがめず):すでに起こってしまったこと、済んでしまったことは蒸し返さない。
  • 刎頚の交わり(ふんけいのまじわり):たとえ首を刎ねられても構わないという熱い友情をあらわす言葉。
  • 正鵠を失わず(せいこくをうしなわず):ぴたりと的をついた指摘、表現、または術策のことを言う。
  • 論語読みの論語知らず:何事も書物の上で理解しているだけで、それを実行しない者。
  • 驥尾に付す(きびにふす):優れたリーダーに従えば、平凡な者でも事を成し遂げる。
  • 糟糠の妻(そうこうのつま):ともに貧しさを耐え忍んだ妻を言う。
  • 亭主の好きな赤烏帽子(ていしゅのすきなあかえぼし):どんなにとんでもない好みでも、一家の主人の好みとあれば、家族はそれに逆らえないの意。
  • 文目もわかず(あやめもわかず):物事の(善し悪しの)区別もつかない無分別。
  • 内股膏薬:どっちにもつく無節操。
  • 腰折れ文:つたない文章を指す言葉。
  • 卒爾ながら:突然で失礼ですが
  • 鼻毛を読む:女が自分に気のある男をいいように利用したり翻弄したりする。
  • 髭の塵を払う:臆面もないゴマスリのこと。
  • 肝胆愛照らす(かんたんあいてらす):互いの臓腑まで理解し合う関係ということある。
  • 肯綮にあたる(こうけいにあたる):急所をついていること、当を得ていること。
  • 埴生の宿(はにゅうのやど):土間にむしろを敷いただけのような貧しい小屋をいう。
  • 夜の錦:美しいものも、時と場合を間違えるとまったく映えなくなる。
  • 遣らずの雨(やらずのあめ):帰ろうとする人を、まるで引きとめるかのように降り出した雨。
  • 送り梅雨:強い雨が降り、梅雨を追い払うほどに勢いがある。
  • たまゆら:ほんのかすかなひと時。
  • 轍鮒の急(てっぷのきゅう):危急存亡のさし迫った状態。
  • 空蝉(うつせみ):セミの脱け殻。
  • 喪家の狗(そうかのいぬ):やつれて元気のない様子。
  • 獅子身中の虫(しししんちゅうのむし):獅子の体内にあって養分をもらいながら、獅子の体に害を与える虫。
  • 馬脚を現す(ばきゃくをあらわす):隠していた正体が現れること。
  • ひょうたんなまず:つかまえどころのないことのたとえ。
  • 風声鶴唳(ふうせいかくれい):すっかり気が弱くなって、ささいな音にもびくびくして恐れること。
  • 沐こうにして冠す(もくこうにしてかんす):高い地位についたり、美しい着物で着飾ったりしていても、内面が卑しかったり、愚かだったりすると、やはり釣り合いが取れない。
  • 優曇華(うどんげ):めったに起こらないことのたとえ。
  • 桐一葉(きりひとは):ごくわずかな動きから、衰えのきざしを敏感に感じることをいう。
  • 波の花:海に関係した白いものということで、塩のことを指す。
  • 蝸牛角上の争い(かぎゅうかくじょうのあらそい):狭い世界でのつまらない争い。
  • 迷える羊:心の正しき人よりも、悔い改めることを知らない迷える者(罪人)こそ、力をつくして救わなければならない。
  • 象牙の塔:権威主義に凝り固まった学問、現実生活とは隔たった芸術に閉じ篭もった人を皮肉を込めて言う言葉。
  • 新しき酒は新しき皮袋に:新しい思想や発想を実践するためには、新しい制度やシステムが必要という意味で用いられるようになった。
  • バベルの塔:とうてい実現できそうもない空想的な計画のこと。
  • 木馬の計:予想もしない奇策、奇計の意。
  • トロイのヘレン:多情であるがゆえに大きな争いの元を作る女。
  • コーランか剣か:厳しく二者択一を迫る言葉。
  •  

お読みいただいてお分かりのように341語のうち、特に71語を選びだして記載した。本書ではそれぞれの言葉の由来、意味なども書かれている。しかし、71語に関しては語句の意味のみを記載した。言葉の由来までお知りになりたい方は、ぜひ本書を読んでいただき、教養を身につけて欲しいと願うものである。日本語の言い回しは世界に例を見ない繊細さがある。例えば雨という語句を取り上げてみると、日本文化の特徴でもある、繊細さや感性、の豊かさなどを強く感じてしまう。本書のなかでも取り上げている、「虎が雨」「5月雨」「菜種梅雨」「遣らずの雨」「送り梅雨」など、表現の豊かには驚かされる。まさに「教養が試される341語」である。本書は2003年5月30日に初版が発売され、同年の2ヵ月後には7版となっている。肩をはらずに気楽に読める本だから売れているのであろう。


北原 秀猛

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