本書は、仕事に熱意を抱くための書である。どうすれば熱意を抱くことができるのか。私たちは3つの重要なポイントを発見した。(1)自分の強みを発見する、(2)自分にふさわしい場所を見つける、そして、(3)自分にあったマネジャーのもとで働く。
すばらしい業績は強みから生まれるのである。自分の才能を知り、完全に理解し、それを土台に強みを築き上げ、どうやってその強みを日々の業務に活かすかを考える。成績上位の社員が他の社員より優れているのは、次のパターンを繰り返しているからである。
- 人との関係を築く。
- 人に影響を与える(そして、イエスと言わせる)。
- 顧客のニーズを見極め、満足させる。
- 価値のあるゴールと報酬に焦点を絞り、個々の成績を達成する。
- 自分の能力が最大限に活かされるやり方を見つけ出す。
優れた営業担当者は、仕事そのものを自分の強みに適合させる。仕事に合わせて強みを変えようとはしない(体型に合わせてスーツを仕立てる方が、スーツに合わせて体型を変えるより、ずっと簡単なのだ)。
あらゆる産業で、40年前には大勢の営業担当者を雇っていた企業は、倒産したか、または販売方法を180度転換させている。私たちは、将来もこの傾向が続くと考えている。保険、自動車、医薬品などどれをとっても、消費者が過去10年と同じ方法で将来も購入するとは考えられない。私たちが質問をしたシニア・エグゼクティブの97%以上が、この先10年の会社経営はさらに困難を極めるだろうと言っている。インターネット、グローバル化、政府の規制、通信の発達、人口構成の変化などが、私たちのビジネス手法に予想可能な、あるいはときには予想不可能な変化をもたらす。営業部門は途方もない転換を強いられることになるだろう。営業という仕事の本質は、多くの面で劇的に変化していくだろう。しかし同時に、新たなチャンスも生まれてくる。
何千というインタビューと長年の調査の結果、ある特定の資質が営業活動に非常に重要であることがわかってきた。その特定の資質は、動機付け(モチベーション)、人に影響を及ぼす力、人と関係を築く方法、仕事をやり遂げる方法、顧客の抱える問題について考える力、に係わっている。
10万人に行ったインタビューをもとに作られたデータベースを慎重に検討し、私たちは、34の資質を抽出した。
- アレンジ=あなたは指揮者です。たくさんの要素を含む複雑な状況に直面すると、最も生産性の高い組み合わせにそれらをアレンジしたと確信するまで、何度も並べ替えを繰り返し、すべての要素を自分で管理することを愉しみます。
- 運命指向=偶然に起こることは一つもありません。あなたは絶対にそう思っています。それは、人々が互いに結びついていることを、心の底から確信しているからです。
- 回復指向=あなたは問題を解決することが大好きです。さらなる困難に遭遇するとうろたえる人もいますが、あなたはそれによって力を与えられます。あなたは症状を分析し、何が悪いのかを突き止め、解決策を見出すという挑戦を愉しみます。
- 学習欲=あなたは学ぶことが大好きです。あなたが最も感心を持つテーマは、あなたの他の資質や経験によって決まりますが、それがなんであれ、あなたはいつも学ぶ「プロセス」に心を惹かれます。
- 活発性=「いつ始めようか?」これはあなたの人生で繰り替えされる質問です。あなたは動き出したくてうずうずしています。行動だけが有意義であると知っています。
- 共感性=あなたは周囲の人の感情を察することができます。彼らが感じていることを、まるで自分自身の気持ちであるかのように感じることができます。本能的に彼らの目で世の中を見ることができ、彼らの見方を理解できるのです。
- 競争性=競争性の根源は比較することにあります。世の中を見渡すとき、あなたは直感的に他の人の成果を気にしています。彼らの成果は究極的の評価基準となります。あなたがどれほど頑張っても、あなたの目的がどれほど価値のあるものであろうと、競争相手を超える出来映えで目標に到達していなければ、その成果が無意味に感じられるのです。
- 規律性=あなたの周りのことはすべて予期できていなければなりません。何事も秩序正しく計画されていなければなりません。あなたは本能的に自分の周りのことを秩序立てています。毎日の日課を決めます。あなたは物事の進捗状況と締め切りに気持ちを集中します。
- 原点思考=あなたは過去を振り返ります。そこに答えがあるから過去を振り返ります。現在を理解するために、過去を振り返ります。あなたの見方からすると、現在は不安定で、わけのわからない喧騒が入り乱れています。現在が安定を取り戻すには、過ぎ去ったとき−すなわち計画が立てられたとき−に心を向けてみる以外方法はありません。
- 公平性=あなたにとって、バランスはとても大切です。あなたは、地位とは関係なく人々を平等に扱う必要性を強く信じています。ですから、あなたは誰か一人が特別扱いされることを望みません。あなたは、このようなことが利己主義や個人主義につながると考えています。
- 個別化=あなたは個別化という資質により、一人ひとりが持つユニークな個性に興味を惹かれます。あなたは一人ひとりの何が特別で、どこが個性的なのかを覆い隠したくないので、人を一般化したり、あるいは類型化したりすることに我慢できません。むしろ、個人個人の違いに注目します。
- コミュニケーション=あなたは説明すること、描写すること、進行役を勤めること、人前で話すこと、書くことが好きです。これにはあなたのコミュニケーションという資質がよく現れています。アイデアはアイデアにすぎません。事実は、その時々に起こったことにすぎません。あなたは、それに命を吹き込み、活力を与え、刺激的で生き生きとしたものにしなければならないと感じます。そこであなたは、「単なる事実」を「物語」に転換させて、上手に語ります。
- 最上志向=優秀であること、平均的ではなく。これがあなたの基準です。平均以下の何かを平均より少し上に引き上げるには大変な努力を要しますが、あなたはそこにまったく意味を見出しません。同様に努力を要しますが、平均以上の何かを最高のものに高めることの方が、はるかに胸躍ります。
- 自我=あなたは、他人の目にとても重要な人間として映りたいのです。もっとはっきり言えば、あなたは認められたいのです。あなたは聞いてほしいのです。あなたは目立ちたいのです。あなたは知られたいのです。具体的には、あなたの持ち前の強みによって人に知られ、評価されたいのです。
- 自己確信=自己確信は自身と共通する点があります。心の奥深くで、あなたは自分の強みを強く確信しています。あなたは、自分は絶対できる−リスクをとることができ、新しい挑戦をすることができ、そして最も重要なこととして成果を出すことができる―ことを確信しています。ただし、自己確信は単なる自身を超えるものです。
- 社交性=社交性とは、他者を味方に引き入れる才能です。あなたは知らない人と出会い、彼らにあなたを好きにさせることに挑戦するのが大好きです。あなたは見知らぬ人を怖がることはめったにありません。むしろ、あなたは見知らぬ人に元気づけられます。あなたは彼らに惹かれるのです。
- 収集心=あなたは知りたがり屋です。あなたはものを収集します。あなたが収集するのは情報―ことば、事実、書籍、引用文―かもしれません。あるいは形のあるもの、例えば切手、野球カード、ぬいぐるみ、包装紙などかもしれません。集めるものが何であれ、あなたはそれに興味を惹かれるから集めるのです。
- 指令性=指令性という資質によって、あなたは主導権を握ります。他の人と違い、あなたは自分の考えを他人に押しつけることを苦痛とは感じません。それどころか、ひとたび考えが固まると、あなたは、それを他の人に伝えずにはいられません。ひとたび目標が定まると、あなたは、他の人をそれに同調させるまで安心できません。
- 慎重さ=あなたは用心深く、決して油断しません。あなたは世の中が予測できない場所であることを知っています。すべてが秩序正しように見えますが、表面下には数多く危険が待ち構えていることを感じ取っています。あなたはこれらの危険を否定するよりは、一つひとつを表面に引き出します。そして、危険は一つずつ特定され、評価され、最終的に減っていきます。言うならば、あなたは毎日の生活を注意深く送る、かなりまじめな人です。
- 信念=強い信念という資質を持っているとすれば、あなたは普遍的な価値を持っています。これらの価値は人によって異なりますが、一般的にこの信念という資質が、あなたを家族中心主義に、他人に献身的にさらに崇高さを持つようにさえします。さらに自分自身についても他人についても、責任感と倫理感が強いことを評価します。この普遍的価値は多くの面であなたの行動に影響を与えます。あなたの人生に意義と満足感をもたらします。
- 親密性=親密性という資質は、あなたの人間関係に対する姿勢を説明します。簡単に言えば、親密性という資質によって、あなたは既に知っている人々とより深い関係を結ぶ方向に引き寄せられます。
- 成長促進=あなたは、他の人たちが持つ潜在的な可能性を見抜きます。実際のところ、潜在的な可能性があなたの見ているすべてであることも多いのです。あなたの考えでは、完全にできあがった人間は存在しません。誰もが進歩の途上にあり、可能性にあふれています。だからこそあなたは人々に惹きつけられるのです。
- 責任感=あなたは責任感という資質により、自分がやると言ったことに対しては何でもやり遂げようという強い気持ちを持ちます。それが大きかろうと小さかろうと、あなたは完了するまでそれをやり遂げることに心理的に拘束されます。あなたの良い評判はそこからきています。
- 戦略性=戦略性という資質によって、あなたはいろいろなものが乱雑にある中から、最終目的に合った最善の道筋を発見することができます。これは学習できるスキルではありません。これは特異な考え方であり、物事に対する特殊な見方です。
- 達成欲=達成欲という資質は、あなたの原動力を説明する助けになります。達成欲は、何かを成し遂げたいという恒常的な欲求を示しています。
- 着想=あなたは着想に魅力を感じます。では、着想とはなんでしょうか?着想とは、ほとんどの出来事を最もうまく説明できる考え方です。あなたは複雑に見える表面の下に、なぜ物事はそうなっているかを説明する、的確で簡潔な考え方を発見すると嬉しくなります。着想とは結びつきです。
- 調和性=あなたは同意点を求めます。あなたは、衝突や摩擦から得るものはないという考えを持っているため、そのような争いを最小限にしようとします。周囲の人々が異なる意見を持っていることがわかると、あなたはその中の共通する部分を見出そうとします。あなたは彼らを対立から遠ざけて調和に向かわせようとします。
- 適応性=あなたにとって今この瞬間が最も重要です。あなたは将来を既に決まっているものとは考えていません。将来というのは、今あなたが行う選択によって変わっていくものだと考えています。つまり、それぞれの時点で進む方向を一つずつ選択することによって、将来を見出すのです。
- 内省=あなたは考えることが好きです。あなたは頭脳活動を好みます。あなたは脳を刺激し、縦横無尽に頭を働かせることが好きです。内省という資質は、あなたは考えることが好きだということです。
- 分析思考=分析思考という資質を持つあなたは、他の人に「証明しなさい。あなたの主張がなぜ正しいのか示しなさい」と強く要求します。このような詰問を受けると、自分のすばらしい理論がもろくも崩れ落ちるのを感じる人もいます。あなたは必ずしも他人のアイデアを壊したいわけではないのですが、彼らの理論が堅固であることを強く求めます。あなたは自分自身を、客観的で公平であると考えています。
- 包含=「もっと輪を広げよう」。これはあなたが人生の基本としている信念です。あなたは人々をグループの中に包含し、その一員であると感じさせたいのです。選ばれた者だけのグループを好む人たちとは正反対です。
- ポジティブ=あなたは人をよく褒め、すぐに微笑みかけ、どんな状況においても常にポジティブな面を探します。あなたのことを陽気と言う人もいます。あなたのように楽天的になりたいと思う人もいます。いずれにしても、人々はあなたの周りにいたいと思います。
- 未来志向=「もし…だったら、どんなに素晴らしいだろうなぁ」と、あなたは水平線の向こうを目を細めて見つめることを愛するタイプの人です。未来はあなたを魅了します。まるで壁に投影された映像のように、あなたには、未来に待ち受けているかもしれないものが細かいところまで見えます。
- 目標志向=「私はどこに向かっているのか?」とあなたは自問します。毎日、この質問を繰り返します。目標志向という資質のために、あなたは明確な行き先を必要とします。行き先がないと、あなたの生活や仕事はたちまち苛立たしいものになる可能性があります。ですから毎年、毎月、さらに毎週でさえ、あなたは目標を設定します。この目標はあなたの羅針盤となり、優先順位を決定したり、行き先に向かうコースに戻るために必要な修正をしたりする上で、あなたを助けてくれます。
以上が34の強みである。本書の出発点は「才能」である。才能というと、何か特別な能力と考えがちだが、そうではない。それは、頻繁に繰り返される思考や感情、行動のパターンであり、研究者や音楽家といった人たちだけでなく、すべての人に備わっている。そこが本書のポジティブなところだ。営業関連の本は数多く出版されているが、一つの決まったやり方を万人に向かって示すのではなく、一人ひとり異なる営業スタイル(その人にとって最適な営業スタイル)を探し出そうと主張するものである。
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