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日経大予測2005年版表紙写真

日経大予測 2005年版

編  者:日本経済新聞社
出 版 社:日本経済新聞社
価  格:1,680円(税込)
ISBNコード:4−532−21914−0

「2007年問題」への取り組みの助走――。2005年はそんな年になるでしょう。

団塊の世代と呼ばれる1947〜49年生まれの層が60歳に達し、今の制度のままなら定年を迎え始めるのが2007年。国立社会保障・人口問題研究所の中位推計では、15歳から64歳までの生産年齢人口は、2004年から2015年の間に約880万人減る。日本の人口も2006年をピークに減少に転じ、いよいよ「人口減少社会」が現実のものとなる。1990年代の度重なる景気刺激策や景気低迷による税収の落ち込みで、財政赤字は急膨張しており、深刻な問題を抱えたままである。今後、長期金利が上昇すれば、さらに利払いが膨らむ。

公的年金など社会保障制度の持続可能性にも疑念が広がる。国民負担の増加は必至で、消費税率の引き上げの是非の論議が大きな焦点となるのも2007年。企業はこうした流れを先読みし、競争力の維持に海外展開を引き続き進め、高齢者の人材確保へ、定年延長や退職後の再雇用の模索に2005年から動くだろう。

足元を見ると、日本経済は着実な回復を続けているが、先行きは不透明である。日銀の量的緩和は続き、デフレ脱却への航路は見えないままだ。一方で「世界の製造工場」としての中国の存在感が増しており、目配りが必要である。さらに、それに続く新興国の動きには目が離せない。

本書は巻頭特集として、トップアナリストに2005年の業界大予測を聞いている。医薬品業界については、みずほ証券の田中洋氏が答えている。第1章:日本経済大予測、第2章:金融・マネー大予測、第3章:経営・企業大予測、第4章:産業・科学技術大予測、第5章:政治・制度大予測、第6章:世界大予測、の構成になっている。なお、本書では予測シナリオを、
・本命:最も現実可能性が高いシナリオ
・対抗:「本命」ではないにせよ、十分起こり得るシナリオ
・大穴:可能性はかなり低いものの、ないとは言い切れないシナリオ
の3つの方向性で示しているが、ここでは「本命」のみを取り上げた。

1.「景気」 日本経済、減速するも成長持続

2002年1月を「谷」とするバブル後3回目の回復局面に入った景気は、2003年秋に底離れし、緩やかな上昇に転じた。中国特需とデジタル家電に支えられて、まず企業部門から浮上し、その後は雇用情勢も底入れした。過去2回の回復と異なるのは、バブル崩壊以降、景気の自律回復を阻んできた2つの重しがとれてきたことだ。その1つは金融不安の後退だ。大手銀行の与信残高に対する不良債権の比率は2004年3月末に5.2%と1年前より2ポイントも低下。地域金融機関の不安はなお残るものの、仮に景気が循環的に後退局面に入っても、大手銀行が突然破綻の危機に直面するような懸念は小さくなった。

もう1つは、需要が潜在的な供給力を下回る需給ギャップの縮小だ。内閣府の推計では、日本経済が達成可能な「潜在GDP」に対する需要不足の比率は2002年に5%超に達していたが、1%近辺まで縮んだ。景気が内需の増加を伴って着実に回復する一方、供給面でも過剰設備の廃棄が進んだ成果が表れている。需要不足が解消に近づいたことで、「物価はまだまだ下がる」というデフレ期待も薄らいできた。ただ、内外に不安の芽も膨らんでいる。まず世界経済の減速懸念だ。中国は経済引き締め政策を採り始めた。工場の強制閉鎖など、投資過熱の抑制策の影響はすでに日本からの輸出に表れてきている。米国でも、4年ぶりに利上げを実施した2004年6月以降、景気減速を示唆する経済指標が続出した。懸念に輪をかけたのが原油高の進行だ。歴史的な世界の超低金利政策が終止符を打ったことで、世界中に行き渡っていたマネーが縮小に向かい、金融・資本市場が動揺するリスクもある。

2005年の日本経済は、こうした前向きの動きと不安定要因の綱引きが続く。世界経済の成長速度が鈍ることもあって、国内景気も年後半にかけて減速は避けられないだろう。ただ、長い間日本経済の重荷になってきたデフレ圧力の後退という追い風は簡単には止まらない。このため日本経済が再びマイナス成長に転じ、低迷の時代に逆戻りする公算は小さい。

2.「個人消費」 緩やかな回復基調、消費マインドも戻る

個人消費の回復基調が鮮明になってきた。消費回復の大きな要因は、企業業績の回復とともに、失業率が低下し、雇用不安が解消され始めたことだ。また、家計の所得環境が改善していることも背景にある。ただ米国・中国経済の減速など、景気への懸念材料も残り、一気に本格回復するまでの力強さはなさそうだ。

3.「物価」 デフレ脱却に向かうが、当面は緩やかな物価下落が続く

消費者物価指数は2004年に入って下落幅を縮めており、モノやサービスの値段が継続的に下がる「デフレ」は着実に後退しつつある。株価や地価など資産の価格も、景気回復を背景に一時の深刻な状況はひとまず脱したと言える。しかし、デフレは経済のグローバル化や技術革新に根ざした構造的な現象で、日用品や家電製品、パソコンなどの価格は今後も下がり続けるとの見方は多い。

4.「失業率」 4%台半ばで一進一退

景気に明るさが増し、長く悪化傾向だった失業率に改善の兆しがにじんできた。目下、企業の採用は増加傾向をたどる可能性が高い。ただ、現代社会ゆえの構造的な問題もあって、脱・高失業率への道のりはなお遠い。失業者の存在はこれからも重い懸案だ。

5.「株式相場」 景気の下降織り込み弱含み。ただ、底割れはなし

2005年の株式相場は景気下降局面入りを映して弱含む展開が予想される。外国人による株価を押し上げるような買いも期待できない。調整の深さは企業の減益の度合いに左右されるが、相場が底割れするような事態も考えにくい。

6.「企業業績」 2年連続の2ケタ増益を達成

上場企業の2004年3月期業績(金融を除く)は連結純利益が前の期を78%上回り、3年ぶりに過去最高となった。長年のリストラで経営効率が高まったところに、売上高の伸びという追い風が吹いた。トヨタ自動車は日本企業で初めて純利益が1兆円を突破した。2005年3月期も増益を見込む企業が多いが、原油価格の高騰、中国の金融引き締めなど、収益環境は必ずしもバラ色ではない。

7.「債券相場」 景気動向を反映して、長期金利は再び上昇基調に

長期金利が上昇(債券相場は下落)し、2004年6月には2%目前に迫った。景気回復を背景に、債券から株式などに資金がシフトしたためだ。その後、金利は低下したものの、順調な景気動向や国債の発行増などを反映し、再び上昇基調をたどるとの見方は多い。

8.「地価」 東京都心の地価の底入れ感、大都市圏に拡大

大都市圏の地価に底入れ感が広がっている。国税庁がまとめた路線価は、全国の標準宅地の平均価格が12年連続で値下がりしたものの、大都市圏で横ばいや上昇に転じた地点が目立ち始めている。

9.「円相場」 1ドル=105円目指し、緩やかな円高圧力

円相場を左右する最大の要因は、米経常赤字の動向だ。財政と経常収支という米国の双子の赤字が膨らむ中、投資家はドルを買い進められないのが実情である。ブッシュ政権が強硬な外交政策を維持すれば、ドル売り圧力になるとの見方が多い。1ドル=105円を目指し、緩やかな円高圧力が続く展開になろう。

10.「不良債権」 2005年3月までに、大手銀行の不良債権比率半減目標は達成

バブル崩壊以降、長い間日本経済の最大の課題とされてきた不良債権問題。金融再生プログラムによる厳しい資産査定によって不良債権処理が加速しているのに加え、景気回復を背景に、新たな不良債権の発生は抑えられている。金融庁が04年7月末にまとめた全国の金融機関の04年3月期の不良債権残高は34兆6千億円。前年同期比22%減だ。

11.「財政」 歳出抑制路線は継続するが、本格的な削減は困難

景気が回復し、税収増の兆しも見えてきたとは言え、過去に膨らんだ財政赤字は深刻だ。公債残高が483兆円に達し、先進国の中でも劣等生扱いの日本の財政赤字を削減しようという強固な意志は、現在の政権には感じられないのが実情だ。

12.「企業再編」 本業強化、勝ち残りを目指した経営統合や合併が続く

日本企業が関係する企業の合併・買収(M&A)が増えている。これまではリストラ目的の案件が多かったが、最近では企業業績の回復を受けて、本業の強化を目指した経営統合に加え、新たな成長や事業の拡大を狙った企業の買収や資本参加などが目立つようになってきた。今後は企業再編の成果をいかに上げるかが重要な経営課題となりそうだ。

13.「医療・バイオビジネス」 製薬企業は大再編の時代に。山之内・藤沢に続く合併も

2005年4月に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し、アステラス製薬が誕生する。シェア7.7%で武田薬品を抜き1位となる。競走が激化する製薬業界で生き残りをかけた両社の決断は、製薬再編の導火線となるのは確実。製薬大手の再編が進む一方、バイオベンチャーでは株式公開が活発化。資金力をつけ、再生医療や細胞医療といった先端医療、がん領域の新薬開発などを加速している。

14.「政局」 “小泉降ろし”強まり、任期半ばで退陣へ

小泉純一郎首相は2004年7月の参院選を乗り切り、2006年9月の自民党総裁任期切れまでの長期政権が視野に入ってきた。ただ、参院選では目標とした改選議席を確保できず、求心力の低下は否めない。頼みの綱である内閣支持率も低迷状態が続いており、政権の前途は視界不良だ。

15.「米国」 米景気は緩やかに減速し、安定成長軌道に軟着陸する

米国の景気は2005年にはゆっくりと減速していく可能性が大きい。雇用情勢や原油相場の動向によっては景気が急減速する公算も捨てきらない。2004年11月の大統領選に勝利したブッシュ政権が2期目に入るが、きめ細かい景気対策が必要になりそうだ。

16.「中国」 断続的に引き締めを実施、成長率7%台の巡航速度に

重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響を克服して高度成長路線をひた走る中国経済は、2003年後半あたりから投資過熱という問題に直面している。工場やビル建設ラッシュで電力不足などの問題が顕在化、不動産バブルの懸念も出ており、中国政府は銀行融資制限などの引き締め策に乗り出した。

17.「欧州」 米中景気減速につられるものの低位安定

欧州では過去例を見ない壮大な実験が続いている。単一通貨ユーロ、現状で25ヵ国にのぼる多くの国家で制定した共通の“憲法”――政治・経済の一体化に向けた歩みは予想以上のスピードで進んでいる。ただ、旧東側ブロックさえ取り込んだ大欧州は、その多様性ゆえに世界経済の激変に乗り遅れ気味だ。変化への機敏さと、より複雑になった調整をどう両立させていくかが注目点だ。

以上が本書の概要である。10月の街角景気は現状判断指数が46.4であり、前月を0.9ポイント下回り、3ヵ月連続低下している。“回復の動きに一服感が見られる”の表現に変わった。04年1月以降9月までの景気動向一致指数を見ると6月がピークの90.9%で、7月は80.0%、8月30.0%、9月22.2%と、悪化の方向にある。米国の大統領選ではブッシュが再選を果たしたが、大統領選の翌年は不景気になる確率が高いといわれている。米国が不況になれば、輸出の問題を含めて日本への影響は大きい。

一方1999年の小渕内閣の時に実施された恒久的減税が05年と06年で廃止の方向である。これが決まると3.3兆円が国民の増税になる。当然実質成長率の押し下げ効果としてでてくることになる。小泉降ろしの大合唱も出てきそうな状況にもある。2005年は不確か面が多くあり、難しい舵取りが迫られることになりそうだ。


北原 秀猛

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