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マーケティング10の大罪表紙写真

フィリップ・コトラー マーケティング10の大罪

著  者:フィリップ・コトラー
訳  者:大川 修二
監  修:恩藏 直人
出 版 社:東洋経済新報社
価  格:1,890円(税込)
ISBNコード:4−492−55529−3

あらゆる国のあらゆる企業が、多かれ少なかれマーケティング上の罪を犯している。すなわち、どの企業も何事かをなすことによって、あるいはなすべきことをなさないことによって、マーケティングの効果性を損ねているのである。

本来マーケティングは、戦略の推進役のはずである。マーケターはリサーチを通じて新たなビジネス・チャンスを見出し、精度の高いセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング――すなわちSTPを実施することによって、新たなビジネスの進むべき道筋を明らかにする。そして、4P――製品(product)、価格(price)、流通(place)、プロモーション(promotion)の細部を詰め、4つのPの各要素が互いに矛盾することなく、しかも4P全体として先のSTP戦略と整合するような戦術を練り上げていく。戦術が決まれば、いよいよマーケティング計画を実行に移す時だ。マーケターは、その後の経過をモニターし、プラン通りの実績が上がらない場合には、実施の仕方に問題があったのか、マーケティング・ミックスに矛盾があったのか、STP戦略そのものに誤りがあったのか、そもそも市場調査が役立たずだったのかなど、原因を特定していかなければならない。

私は、市場での成功を阻んでいる、最も重大なマーケティング上の欠陥を特定することにした。その結果、10の要因が明らかとなり、私はそれを「マーケティングの10の大罪」と呼ぶことにした。この10の大罪に関して企業が考慮すべき点は2つある。1つは、自分たちが罪を犯していることを示す兆候(signs)は何かということ。もう1つは、問題を解決するうえで最善の解決策(solutions)は何かということである。

<マーケティングの10の大罪>

  1. 市場の定義が不明確で顧客主導になっていない
  2. ターゲット顧客を十分理解していない
  3. 競合に対する認識が不足している
  4. 利害関係者との関係を適切に管理できていない
  5. 新たな機会を見出せない
  6. マーケティング計画およびその策定プロセスに問題がある
  7. 製品やサービスを十分に絞り込めない
  8. ブランド構築力やコミュニケーション能力が低い
  9. マーケティングを効果的・効率的に推進できる組織になっていない
  10. テクノロジーを活用しきれていない
  1. 市場の定義が不明確で顧客主導になっていない
    <兆候>
    ・市場セグメントを絞り込めていない
    ・市場セグメントの優先順位づけが不十分
    ・セグメント・マネジャーを任命していない
  2. ターゲット顧客を十分理解していない
    <兆候>
    ・顧客に関する調査は3年前に実施したきり
    ・顧客が予想よりも製品を購入してくれない。競合他社の製品の方が売れ行きが良い
    ・返品率や苦情率が高い
  3. 競合に対する認識が不足している
    <兆候>
    ・直接の競合相手のみに目を奪われ、間接的な競合相手やディスラプティブ・テクノロジー(破壊的技術)に注意を払っていない
    ・競合他社情報を収集、伝達するためのシステムを持っていない
  4. 利害関係者との関係を適切に管理できていない
    <兆候>
    ・従業員が満足していない
    ・最も優れたサプライヤーと取引きできていない
    ・最も優れた流通業者と取引きできておらず、ディラーも不満を抱いている
    ・投資家が不満を抱いている
  5. 新たな機会を見出せない
    <兆候>
    ・ここ数年、大きな成功をもたらすような新たな機会を見出せない
    ・新たなアイデアを製品化しても、大半が失敗してしまう
  6. マーケティング計画策定プロセスに問題がある
    <兆候>
    ・マーケティング計画の構成要素に不備がある。あるいは計画に論理性がない
    ・複数の戦略案を比較し、それぞれの財務的インパクトをシミュレーションする手段を持っていない
    ・コンティンジェンシー・プラン(不測事態対応計画)を立てていない
  7. 製品やサービスを十分に絞り込めていない
    <兆候>
    ・製品が多すぎ、しかも大半が赤字である
    ・無料提供のサービスが多すぎる
    ・製品やサービスのクロスセリングが不得意
  8. ブランド構築力やコミュニケーション能力が低い
    <兆候>
    ・ターゲット市場において、自社のことがほとんど認識されていない
    ・自社ブランドが特徴的なもの、あるいは他社ブランドよりも優れたものとして見られていない
    ・各マーケティング・ツールに割り当てる予算が毎年ほぼ同額である
    ・プロモーション・プログラムごとのRPI(投資収益率)への影響度をほとんど把握していない
  9. マーケティングを効果的・効率的に推進できる組織になっていない
    <兆候>
    ・マーケティングの責任者があまり優秀でない
    ・マーケティング担当者が、21世紀のマーケティングに求められるスキルを身につけていない
    ・マーケティング・営業部門と他部門との関係がよくない
  10. テクノロジーを活用しきれていない
    <兆候>
    ・インターネットを十分活用していない
    ・セールス・オートメーション・システムが時代遅れ
    ・マーケット・オートメーションを導入していない
    ・意思決定支援モデルがない
    ・マーケティング・ダッシュボードの開発がこれから

ここ数年、提案営業という言葉が産業界でよく用いられている。売り手が顧客にあれこれと提示し、顧客が気づかなかったニーズを探り出し、ビジネスを創造していこうとする新しい営業スタイルだ。話に出てきた表面的な取引をうまく成約に結びつけるだけでも、従来は高い成果を得ることができた。だが、競争の激しい今日では、一歩進んで表面化していないニーズへの対応が求められるようになっている。

本書は、「経営幹部が気づいていないだけで、実は、多くの企業にはマーケティング上の問題点が隠れているはずだ」という前提に立って書かれている。ここに、10の大罪の一つひとつに「兆候」を示した。これは自己診断してみてほしい。その兆候を確認したら本書では、解決策が示されているので、本書を購入して読んでいただきたい。大変に参考になる本書である。


北原 秀猛

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キーワード
•  マーケティング
•  兆候
•  解決策
•  提案営業


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